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「君に届かない」詩―青ブラ文学部企画参加作品

おばあちゃんは 
口数 少なく
常に 手を動かして
仕事をしていた

ボクを とても可愛がってくれ
お腹が減ったというと
シワシワの手で 
塩むすびを 作ってくれる

友達に いじめられて
泣いて 帰ってくると
「いっぱい 泣きんさい
敗けるが 勝ちだわな」と
ザラザラした手で
涙を 拭ってくれた

「坊やはxx家の総領じゃけん
立派な人に おなりんさいよ」と
口癖のように 言い続けた

裏山の みかん畑で
海を行く 船を見下ろしながら
沢山の 昔話をしてくれた
その話の 世界では
妖怪が 本当に 生きていて
目の前に 現れそうだった

ボクが 東京の大学に入学すると
おばあちゃんに 会う機会も
すっかり 減ってしまった

おばあちゃんからは
たどたどしい字面の手紙が
時折 届いた
ボクは 遊びに忙しくて
三度に 一度くらいしか
返信しなかった

ある春の 新学期のころ
電報が 届いた
「ソボ タオレル。 スグ カエレ」

実家に 帰ると
おばあちゃんは 白い顔をして
肩で 息をしながら
ボクの手を 何度も 強く握り
涙を 浮かべた

「バアチャン 死んだらイケン
しっかりして!!・・・」

ボクは おばあちゃんに
万分の一の 恩返しも
出来なかった

東京に 呼び寄せて
東京見物を させて
やれば よかった

大好きだった
「ぼたもち」を
もっと 食べさせたかった

何を どれだけ 悔やんでも もう
天に昇った おばあちゃんには 届かない

店先で みかんを見るたびに
おばあちゃんの みかん畑を
思いだし 心の窓が曇る

山根あきら様の青プラ文学部企画「君にとどかない」
に応募させていただきました。 山根様 お世話になります

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