「卒業はメリーゴーランド」詩

これまで　どれだけの卒業と
顔を見合わせてきたろう。
どの卒業も　北風のように
体のそばを　無愛想に　吹き抜けていった。

いくつもの卒業を 迎える度に
後ろ手に　心の扉に　鍵をかけ､
新しい世界の声を　聞こうとし
古いジャケットを　脱ぎ捨てて来た。。

どの卒業も　心のスクリーンに
しっかりと　メモリーされた。

黒紋付姿で　涙の頬に　笑顔を溜め
校門の［祝ご卒業］立て札の前で
一緒に　写真に収まった母。
胸に　卒業証書の丸筒を　
しっかりと抱いていた。

制服姿の　ボクを見て
やせた両手を　仏壇で　合わせ　
岡山弁で　祖父に報告した祖母。

新社会人として　船出の朝
ボクのブルーストライプ・ネクタイを
何度も　結びなおしてくれた父。
普段は見せない　笑顔が　眩しかった。

［さよなら　またいつか］
［元気でね］
［お互い　頑張ろうぜ］
別れ言葉が　コレクションされた
心のレコードブック。

今　足踏みをして　立ち止まっていると
人混みが　背中をおす。

ふと目を上げれば　新しい卒業が
タキシードに　身を包んで
ボクの名前を　呼んでいる。

卒業は　メリーゴーランドのよう。　
一回りすると
新しい馬に　乗り換えて
未来の声に
耳を傾ける。　

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