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フランス詩を訳してみる

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2019年9月の記事一覧

幸福でいることを誓い合おう(訳者あとがき)

幸福でいることを誓い合おう(訳者あとがき)

いつも運任せで翻訳している。
気になった詩に体当たりしてみて、日本語が浮かんでくるのを待つ。
それらしい形になったら出来上がり。ならなければお蔵入りになる。
一編仕上げるたびに、ぼくに訳せる作品はもう全部訳してしまったという感覚に陥る。
感性のどこかに引っかかる作品が見つかるまでこの無力感は続く。

 *

かつて学生合唱団に所属していたとき、ぼくは演奏会が面白くなかった。
演奏後にはたくさん拍手

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ラマルティーヌ「秋」(フランス詩を訳してみる 13)

Alphonse de Lamartine, L'Autmmne (1819)

ごきげんよう! わずかに緑の残る林よ、
まばらに黄色くなっていく芝生よ、
最後の美しい日々よ! 喪に服する自然は
傷ついた心に似つかわしく 僕の目を和ませる。

誰もいない小道を 僕は夢見心地で辿っていく、
暗い林の足元を淡い光で照らす
衰えつつあるあの太陽を
最後にもう一度見たくて。

そう、朽ち果てようとしている

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ユゴー「こうして季節が暮れて……」(フランス詩を訳してみる 12)

Victor Hugo (1861)

先日のランキングで35位になっていたヴィクトル・ユゴー(1802-1885)の秋の詩を訳してみました。1902年になって出版された遺作です。

フランス詩人気ランキング

poetica.fr という、フランス詩を読んでコメントを投稿できるサイトを見つけました。「いいね」の数とコメントの数が表示されているので、「いいね」の多い順(同じならコメントの多い順)にソートして、上位300編を並べています。タイトルの右が「いいね」の数、括弧の中がコメントの数です。ぼくがこれまでに訳したものには★をつけています。

1. Paul Eluard : Liberté 24000

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ボードレール「旅への誘い」(フランス詩を訳してみる 11)

Charles Baudelaire, L'invitation au voyage (1857)

『悪の華』より。

  わが子よ わが妹よ、
  思い描いてごらん、
遠い地へ行って 二人で送る甘い生活を!
  思いのまま愛し
  愛して死ぬのだ、
きみにそっくりなあの国で。
  あの曇り空にうかぶ
  潤んだ太陽が
不思議な魅力を放って
  ぼくの心を奪う、
  きみの涙の向こうで
きらめく

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