影山ナイト

小説が学生時代の頃から好きで、大学時代に病気になったのをきっかけに小説を書き始めました。

影山ナイト

小説が学生時代の頃から好きで、大学時代に病気になったのをきっかけに小説を書き始めました。

マガジン

  • 虹の音色

    架空の職業『ボイスカウンセラー』を目指す大学生の成長物語。

  • How much are you?

    株式会社の株のように個人の活動を株式として市場に出品される現代で、それらを管理、推進する業務を行う銀行員、『パーソナルバンカー』の奮闘記。

  • 赤い糸を盗る

    文武両道で周りから好意を寄せられる魚金虎太郎は運命の相手に再会した。そんな中、運命の相手と交換したネックレスが突然、なくなってしまう。周りの人間を疑いはじめ、深淵を覗いてゆく。

  • ろりーたふぁんたじー

    人類と魔族が共存した平和な世界で大魔王の娘、サティが学校に通い、個性的な面々と接し、成長してゆくハートフルコメディ。

  • 恋するキューピッド

    恋愛至上主義の主人公は振られた数知れず。それでも諦めず恋愛をし続ける主人公のもとにキューピッドが現れて、『キューピッド代行』をさせられる。

最近の記事

「How much are you?」 エピローグ

 夕日が照らす教室、桐生仁はひとりノートパソコンに向き合っていた。  相変わらず話しかけづらいと瑠美菜は思うものの、何とか口を開く。 「桐生くん」 「成海か。どうした」 「桐生くんのおかげで、お母さん手術受けられることになったんだ。海外のお医者さんが来てくれるって」 「そうか。それは良かったな」 「なんか、冷たくない?」 「人気アイドル様と話してると目立つんでな」 「もうっ、からかわないでよ!」 「本当に、よかったな」 「うん!」  瑠美菜は満面の笑みを見せる。 「

    • 「虹の音色」 エピローグ

       あれから一週間後。  神栖さんからの電話はなかった。  それどころか一件もコールフレンドからの連絡はなかった。  そして、僕はあの電話以降、人の声を聴いただけで、心の声も聴こえるように、なんてならなかった。  あの電話でだけだった。やっぱり、僕の思いを繋いでくれる人だけにしかできないことだったのだろう。  僕は大学の講義が終わり、帰宅する。  今日は雨が降っていた。  本館1階を出て、屋根がある場所で鞄から折り畳み傘をさして歩き始めた。  今日はゼミの講義があっ

      • 「How much are you?」 第27話:花火

         時は遡る。  花火がドーンと大きな音を立てた。ブラインドの隙間から色鮮やかな花火が見える。  ちらと音の鳴る方向へ視線が動いた。いやダメだ。今は仕事に集中しないと。 「おつかれさま、聖城くん」 「……あ、どうも」  桐生部長が僕に缶コーヒーを差し出す。僕は軽く会釈をして缶コーヒーを受け取る。 「まだ仕事終わらないの」 「……申し訳ありません。待たせてしまって。お子さんもいるのに」  丸壱銀行、営業第二部。広い営業室にいるのは僕と、部長のみ。 「いいのよ。ここはよ

        • 「虹の音色」 第29話:託され

           深夜1時。  結局僕は昨日から一睡もできなかった。しかし、頭の中は冴えていた。  僕にできることは、僕を信じてくれた人を信じること。僕を信じることだ。  大丈夫。きっと掛かってくる。  そうして、僕ならきっと救うことができる。  僕は携帯電話を持ち、ベランダに出た。  ちょうどそのタイミングで携帯電話が鳴った。  僕は1コール程して電話に出る。 「こちらコールフレンドの桜川です」 『龍神、やっほ』 「神栖さん」  浅い青紫色の声。間違いない。神栖さんの声だ。信じて

        「How much are you?」 エピローグ

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        • How much are you?
          28本
        • 虹の音色
          31本
        • 赤い糸を盗る
          24本
        • ろりーたふぁんたじー
          25本
        • 恋するキューピッド
          26本
        • オタク病
          21本

        記事

          「How much are you?」 第26話:奇跡

           一週間後。  仁は自宅でパソコンと睨みあっていた。  その後、ふたりの個人株は900万まで上がっていた。  残りのタイムリミットは―――― 1分。 50秒。 40秒。 30秒。   「………………足りなかった。俺には、何もできなかった。救えなかった」  残り100万。あともう少しだったのに。  パソコンの画面を何度見ても900万という数字は変わらない。変わったとしても誤差だ。  変わらない。  結局、俺は人の夢を叶える手伝いができなかった。  あいつの夢は潰えてし

          「How much are you?」 第26話:奇跡

          「虹の音色」 第28話:思いを繋ぐ

           夜が明け、いつの間にか朝9時になっていた。 「……思い、つかない」  ベッドで横になっても頭が働かないため机に向かい、参考書やノートを見返しても答えはない。  カウンセリングに、人を救う方法に答えはないんだ。 「くそ……」  頭が働かなくなってきた。文字を見ても頭に入ってこない。  神栖さんの状況をノートに書きだし、何か解決策がないか考えても、どれも神栖さんを追い詰める方法しかない。ふらふらと立ち上がり、ベッドに倒れる。眠れる気配は一切しない。  いつでも電話

          「虹の音色」 第28話:思いを繋ぐ

          「How much are you?」 第25話:リミット

           ライブが始まり、仁は裏から見守っていた。  同時に、胡桃と瑠美菜の個人株を出品する。  どうにか、届いてくれ。  仁は願い、出品した。  ライブは順調だった。  ライブで歌う曲は3曲。  少ない練習時間で瑠美菜は精一杯頑張った。  しかし、どうにも胡桃には劣っていた。  それでも一所懸命に歌って踊る姿は輝いていた。    太陽と月。  ふたりが合わされば、きっと願いは叶えられる。  見ている観客には太陽のように輝く胡桃が眩しいだろう。しかしそれだけじゃない。月のよ

          「How much are you?」 第25話:リミット

          「虹の音色」 第27話:SOS

          『――もういいよ』 「え」  僕が少し考えているうちに神栖さんははっきりと言った。 『やっぱり話してもしょうがない。だって、どうしようもないもんね』 「何か解決策はあるはずだよ」 『今まで先生にも相談した。保健室の先生にも、スクールカウンセラーの人にも。でも全員、答えは教えてくれなかった。みんな、あまり気に病まないでとしか言ってくれなかった。そんなの無理だし、アタシに言ってほしいのはそんなことじゃない』  飽くまで神栖さんは今の状況をなんとかしたいと思っているんだ

          「虹の音色」 第27話:SOS

          「赤い糸を盗る」 エピローグ

          9月9日。朝7時20分。 今日は雲一つない晴天だった。 「ふぅ」  狐人はベッドで寝転がる。  狐人は昨日返ってきた直後、自室に付けられている盗撮、盗聴器をすべて外し壊した。  まったく、いつの間にこんなに付けたのだろうか。というか、どうやって付けたのだろうかと狐人は呆れる。  呆れたまま、芽衣に認識されないように虎太郎と竜美の運命のネックレスを捨てた。  狐人はメッセージアプリを開き、芽衣と竜美にメッセージを送る。 『絶対に許さない』  うん、上出来だ、と狐人

          「赤い糸を盗る」 エピローグ

          「How much are you?」 第24話:アイドル

          「なんだって!」  九条が驚きを隠せず、席から立つ。 「ですから、成海瑠美菜も一緒にステージに立たせると言っているのです」  仁は毅然とした態度で言い放つ。 「やはり貴様は成海瑠美菜の肩を持つのか。知っているだろう。今の成海瑠美菜じゃアイドルとしての価値がない」 「ええ、でもそれは単体での話です」 「なに?」  九条は席に座り、眉間に皺を寄せる。 「姉妹で売り出しましょう。社長」 「何を馬鹿なことを言っているんだ。成海瑠美菜は例の計画があってこその価値がある」  例

          「How much are you?」 第24話:アイドル

          「ろりーたふぁんたじー」 エピローグ

          「お邪魔しまーす!」 「オジャマするぜ!」 「お邪魔するわ」 「おじゃましまぁす」 「お、お邪魔します……」  ヒイラ、カエン、フウラ、サンネ、リンコが家に遊びに来た。 「みんな、よく来てくれたね」  お祭りに行って数日、どうせならみんなに来てほしいと思って、私はみんなに声を掛けた。  私の家は風林火山のような大した特徴もないから、来てもらうには少し説得材料が少ないと思ったが、みんな興味を持ってくれた。  特にカエンとフウラは大魔王サタンに会ってみたいと興奮気味に言

          「ろりーたふぁんたじー」 エピローグ

          「恋するキューピッド」 エピローグ

           家に帰ってきて、僕は自室のベッドに腰を掛けた。  涙は枯れた。ハンバーガー屋でも僕は泣き続けたが、大地と一緒に美味しいハンバーガーを食べながらバカ騒ぎしていたら、いつの間にか涙は止まっていた。大地との別れ際、僕は笑顔で手を振ることができた。  でも、まだ前には進める気がしない。  僕は鞄から花を取り出し、見つめる。 「……またひとつ、花が増えちゃったな」  花瓶を用意し、部屋に飾る。僕はそれをベッドから見つめる。綺麗だな。綺麗な花を手にすることはできるのに、本当に欲

          「恋するキューピッド」 エピローグ

          「虹の音色」 第26話:コンプレックス

           深夜1時半。僕は眠れないでいた。昼間の霞ヶ浦さんとの会話を思い出し、自分の不甲斐なさ思い出すたびに眠気が取れてしまうのだ。 「お」  ベッドで布団をかぶり、適当にネットサーフィンをしていると僕が登録しているボイスアプリから通知が来た。  お気に入りにしている配信者の新着配信が通知するように設定されているのだ。当然、僕のお気に入りの配信者はうらりんさんだ。  ベッドの物置場に置いてあるヘッドフォンを被り、配信台詞を聴く。  内容は、悩んでいる人々に応援メッセージを送る

          「虹の音色」 第26話:コンプレックス

          「赤い糸を盗る」 第23話:黒雨の中の手

           狐人と芽衣は別れ、狐人は校舎裏から去り、駐輪場へと向かう。 「狐人」  狐人の自転車の前には虎太郎がいた。 「あ、虎太郎。部活は?」 「今は抜けてきてる」 「何か僕に用事?」 「ちゃんと断ったか」 「なにが」 「桜の告白だよ」  虎太郎は真剣な目を狐人に向ける。狐人は笑う。 「どうして断る必要があるんだよ」 「オレは桜の本性を知ってる。つい最近知ったんだけどな。あいつは歪んだ愛情をお前に抱いている」  9月6日。虎太郎、狐人、芽衣、竜美の4人で遊びに行った帰り際

          「赤い糸を盗る」 第23話:黒雨の中の手

          「How much are you?」 第23話:ルミナス

          「社長、成海胡桃の初ライブはいつにしましょうか」 「いつがいいだろうな」  3人がショッピングモールに行って数日後、仁は胡桃の所属事務所になったアイドル事務所で社長の九条と話していた。 「それにしても、桐生くんが我々の考えに賛同してくれて本当に嬉しいよ。盃でも交わそうか。いや、キミはまだ未成年だったね。ハハハッ」 「勘弁してくださいよ社長」  前にも聞いた皮肉に仁は九条を殴り倒したくなったが、冷静を装い、愛想笑いをする。 「胡桃のライブは盛大に行いたい。どこか良いとこ

          「How much are you?」 第23話:ルミナス

          「ろりーたふぁんたじー」 第23話:飲み会③

          「もうすぐ定例会だね」 「そうだなー。定例会っつっても何話しゃいいんだよ。べつに話すことなんてねえよ」  人類の地で祭りが行われている中、平和の地のとある酒場。今日もサタンとヒーロは酒を飲み交わしていた。 「キミはとにかく会議中寝ないでくれよ。キミの奥さんのオーラ怖いんだよ。キミと戦う前に立ち塞がる女帝のオーラ現役さながらなんだから。こっちもつい構えてしまうよ」  ヒーロはそのときを思い出すように背筋を凍らせる。 「お前に言われたくないわ。話聞かないでペン回ししてんじ

          「ろりーたふぁんたじー」 第23話:飲み会③