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「How much are you?」 第25話:リミット
ライブが始まり、仁は裏から見守っていた。
同時に、胡桃と瑠美菜の個人株を出品する。
どうにか、届いてくれ。
仁は願い、出品した。
ライブは順調だった。
ライブで歌う曲は3曲。
少ない練習時間で瑠美菜は精一杯頑張った。
しかし、どうにも胡桃には劣っていた。
それでも一所懸命に歌って踊る姿は輝いていた。
太陽と月。
ふたりが合わされば、きっと願いは叶えられる。
見ている観客には太陽のように輝く胡桃が眩しいだろう。しかしそれだけじゃない。月のように美しく舞う瑠美菜を見て希望を抱く人もいるはずだ。
少なくとも仁はそう思っていた。
太陽と月があってこそ、初めて両方の輝きの美しさを実感できるのだ。
太陽を見て、笑顔になる人もいれば、
月を見て笑顔になる人もいる。
胡桃と瑠美菜はふたりでひとつだ。
歌は3曲目に入った。
疲れが見え、汗が滴る中、ふたりは精一杯歌って、踊った。
しかし、それは突然起こった。
「っ」
「お姉ちゃん!」
瑠美菜が躓き、転ぶ。そしてそれに反応し、胡桃は瑠美菜に駆け寄る。
観衆がどよめく中、曲は流れ続ける。
ふたりの時間は止まっているかのように、動かない。
仁は駆け出しそうになったが、ぐっと堪えた。
立ち上がれ。
お前ならできる。
諦めるな!
仁の願いが伝わったのか、なんとか瑠美菜は立ち上がる。
曲に合わせて再び、歌い、踊る。
そしてライブは終わった。
ライブが終わった後、瑠美菜は泣いていた。
× ×
「見込みはあるの?」
「どうでしょう」
ライブから数日後、仁は霞の家に来ていた。
ライブは無事といっていいかわからないが終えた。
泣いている瑠美菜の顔を思い出す。
「私もSNSで見たけど、瑠美菜ちゃん災難だったね」
「俺がもっと成海に練習する時間を与えられたら……」
「何を言っても後の祭り。見守ろう。それに――」
そう言って、霞はソファから立ち上がり、パソコンを開く。
「反響はだいぶあったみたいだよ」
霞はSNSのページを仁に見せる。
そこには多くのコメントがなされていた。
『ルミナス最高に可愛い!』
『くるみちゃんマジ天使!』
『お姉ちゃんも頑張ってた』
『完璧JSにドジっ子JKとか俺得』
中には意味のわからないコメントもあったが、なんとなく喜ばれているのはわかった。
仁もパソコンを開く。
個人株の出品ページだ。
そこには瑠美菜と胡桃の情報が載ってある。
瑠美菜の事情もそこに記載されていた。
『病の母に届くように、頑張ります!』と瑠美菜のコメントと共に。
「今、実際いくらまでいってるの?」
霞は仁のパソコンを覗き見る。
「ふたり合わせて700万かぁ。すごいっちゃすごいんだけどね……」
「1000万にたどり着くか……」
仁は呟く。
事務所には無理やり、ルミナスを押し出すよう脅している。
巨額の広告費に、ライブの連続。
ライブはあれ以降も何日も行われている。
厳しいスケジュールの中、ふたりは頑張っている。
後、仁にできることは見守ることだけだった。
霞が口を開く。
「リミットは来週までと思って」
「そこが、治療できるリミットってことですね」
どこで得た情報だかわからないが霞の情報は信頼できる。
あと一週間で300万。
厳しいか――。
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