とまりぎセキュアベース・天の川進

大阪府在住。日々悪戦苦闘しているケアマネジャーやケア実践者を応援する小説を主体に、時折…

とまりぎセキュアベース・天の川進

大阪府在住。日々悪戦苦闘しているケアマネジャーやケア実践者を応援する小説を主体に、時折、認知症やケアに関するコラムもはさみながら、読まれる方の「心の安全基地」となるようなブログにしていきたいと思っています。

マガジン

最近の記事

18.相手を理解するということ

「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里  白駒池居宅の管理者   想井遣造  居酒屋とまりぎの客   山のおばば 山小屋のおばば   滝谷七海  白駒地区地域包括支援センターの管理者   石田信一  居酒屋とまりぎの客 想井の友人 相手の大変さを思っていたつもりが、 自分の大変さばかりを思っていたのかもしれない 18.相手を理解するということ    想井は山のおばばの話を続けた。  「目の表情に、そ

    • 17.おばばの眼力

      「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里  白駒池居宅の管理者   想井遣造  居酒屋とまりぎの客   山のおばば 山小屋のおばば 幾星霜の人に学ぶことは一杯ある。何故ならば幾星霜の人だから。 17.おばばの眼力  居酒屋「とまりぎ」のカウンター席で立山麻里と想井遣造は語りあっていた。  「相手の視点で考える… う~ん、まぁ言ってすぐにできるものではないけれど… そうやな~ 」   想井は少し考えた。

      • 16.話を聴いてくれる人(アタッチメント)

        「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里 白駒池居宅の管理者   正木正雄 居酒屋とまりぎのマスター  迷った時、困った時、その迷ったや困ったや辛いを  聴いてくれる存在の人がいれば 16.話を聴いてくれる人(アタッチメント)  独身生活を送る立山麻里は、ストレスが生じることがあったり、自炊がめんどくさいと思ったときは、つい「とまりぎ」に寄ってしまう。  麻里にも浮いた話はあるにはあったが、それは実

        • 15.わからないは、わかることの始まり

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」   【今回の登場人物】   立山麻里 白駒池居宅の管理者   徳沢明香 白駒池居宅の新人ケアマネジャー   横尾秀子 白駒池居宅のベテランケアマネジャー    鬱憤は「吐き出す」のか「掃き出す」のか 15.わからないは、わかることの始まり  会議後、立山麻里と徳沢明香は、薬師太郎とのこれまでの関りをフィードバックすることにした。  しかし麻里はその前に行うこととして、明香の思いを受け止めてあげ

        18.相手を理解するということ

        マガジン

        • 小説から読み取る認知症ケアのコラム
          0本

        記事

          14.提案

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】    立山麻里 白駒池居宅の管理者    滝谷七海 地域包括支援センター管理者    徳沢明香 白駒池居宅のケアマネジャー 薬師太郎の担当    松本深也 白駒デイサービスの管理者    薬師淳子 太郎の娘 旅行会社勤務 なにが正解かを考えるのは難しい でもやってみなければ何も始まらない 14.提案  立山麻里は薬師淳子から目をさらさずに、話を続けた。  「何をするに

          13.サービス担当者会議

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】    立山麻里 白駒池居宅の管理者    滝谷七海 地域包括支援センター管理者    徳沢明香 白駒池居宅のケアマネジャー 薬師太郎の担当    松本深也 白駒デイサービスの管理者    薬師淳子 太郎の娘 旅行会社勤務 13.サービス担当者会議 つらい時間があったとしても、話しあうことは大切なのです  翌朝一番に、立山麻里は会議の主催をする地域包括支援センターの滝

          コラム3 「その人のいないところでその人の話をしない」

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 コラム(3)「その人のいないところでその人の話をしない」  これは私の言葉ではなく、森川すいめいさんの「感じるオープンダイアローグ」(講談社現代新書)と、「オープンダイアローグ私たちはこうしている」(医学書院)から引用したものです。  この言葉は私の心に大きく響きました。  私たちはどれだけ「その人のいないところで、その人の話をしているか」ということですね。  主なものとして、うわさ話や陰口など。ある意味大好きな分野と

          コラム3 「その人のいないところでその人の話をしない」

          12.知らない者の視点

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】    立山麻里 白駒池居宅の管理者   正木正雄 居酒屋とまりぎのマスター    想井   居酒屋とまりぎの客 12.知らない者の視点 専門職が当たり前と思っていることも、違う世界の人が見るとおかしいと思うかもしれません  心が晴れない立山麻里は、家までの帰り道に必ず前を通る居酒屋「とまりぎ」の前で、まるで引き寄せられるかのようにその暖簾をくぐっていた。  「いら

          11.苦情

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】    立山麻里 白駒池居宅の管理者    滝谷七海 白駒地区地域包括支援センターの相談員    薬師太郎 要介護1 デイサービス行きを拒否    薬師通子 太郎の妻     薬師淳子 二人の長女 旅行会社勤務 介護者の時間の感覚と、ケア側の時間の感覚とは違うのです。 11.苦情  立山麻里はフェイスシートの続きを読んだ。  薬師太郎の家族のことが書かれていた。  妻の通子

          10.人生の概要  

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】    立山麻里 白駒池居宅の管理者    滝谷七海 白駒地区地域包括支援センターの相談員    薬師太郎 要介護1 デイサービス行きを拒否    薬師通子 太郎の妻    一人の人の人生に関わる仕事   その人生の最終章に関わる重く深い仕事だということを誇りに思ってい    るだろうか・・・ 10.人生の概要  立山麻里は、薬師太郎のフェイスシートをじっくりと読み返してい

          9.夜が明けても暗い日々

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   薬師太郎 元旅行会社の社長 アルツハイマー病と診断される   薬師通子 太郎の妻 太郎の認知症状に疲労困憊している   薬師淳子 二人の娘 旅行会社に勤務 9.夜が明けても暗い日々  立山麻里と滝谷七海が「とまりぎ」で飲んでいた頃、途方に暮れた薬師通子は、娘の淳子に連絡をとった。  淳子は急ぎ退社し、母通子と共に警察に捜索願を提出した。  警察への届け出は二度目だった。

          8.初回面接を振り返る

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里 白駒池居宅の管理者 主任介護支援専門員   滝谷七海 白駒地区地域包括支援センター管理者 社会福祉士   徳沢明香 白駒池居宅の新人ケアマネジャー 8.初回面接を振り返る  薬師通子が血相を変えて薬師太郎を探している頃、日中なかなか予定の合わなかった立山麻里と滝谷七海は、業務終了後、ようやく包括支援センターの事務室で話しあう時間を持った。既に他の職員は退

          コラム(2) 認知症の人のアタッチメントについて

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 コラム(2) 認知症の人のアタッチメントについて  この小説の基盤は、「セキュアベース 心の安全基地」なのですが、今回の薬師太郎さんにとっては、妻の通子さんがそのセキュアベースなのです。  太郎さんに限らず、認知症の人は認知機能の低下により、不安感が増幅します。それが心の混乱となり、様々な行動へと繋がっていきます。  その不安感を、太郎さんは通子さんにくっつくことで安心感を得て、ネガティブな感情を落ち着かせようとする、つ

          コラム(2) 認知症の人のアタッチメントについて

          7.登山靴のひもを締める

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里 白駒池居宅の管理者   徳沢明香 白駒池居宅のケアマネジャー 薬師太郎の担当   薬師太郎 元旅行会社の社長 デイサービスを拒否   薬師通子 太郎の妻 太郎の認知症による行動に疲労している    7.登山靴のひもを締める  数日後、薬師通子から白駒池居宅に電話が入った。  担当の徳沢明香が不在だったため、立山麻里が話を聴いた。  主訴は前回と同じだが、夫がずっ

          6.今後に繋がる出会い

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里 白駒池居宅の管理者   滝谷七海 白駒地区地域包括支援センター 社会福祉士   甲斐修代 白駒池特別養護老人ホーム ケアマネジャー   想井と石田 居酒屋とまりぎの客 6.今後に繋がる出会い  先客の男性客のうちの一人は、確かに石の地蔵のようにがっしりとした体格だった。  もう一人は一見学校の先生という風貌のメガネをかけた中年男だった。  「いらっしゃい

          5.居酒屋とまりぎ

          「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」 第1話「彼方の記憶」 【今回の登場人物】   立山麻里 34歳 白駒池居宅 管理者   滝谷七海 34歳 白駒地区地域包括支援センター管理者 社会福祉士   甲斐修代 36歳 白駒池特別養護老人ホーム ケアマネジャー   正木正雄 50歳代 「居酒屋とまりぎ」の店主 5.居酒屋とまりぎ  「白駒池居宅介護支援事業所」、通称「白駒池居宅」は、渋谷の中心街から少し離れた奥渋白駒池地区にあった。  昔からある閑静な住宅街