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2章13話 其の英雄の名は。
深呼吸をした、息を吸って吐いた。
そこに己が与えられた加護があることを確かめるように黄金の槍を強く握りしめた。
血液が煮えたぎっているかのように身体が熱く、神経は研ぎ澄まされ、思考は何処までも澄み渡っている。
月の邪神の使徒である魑魅魍魎たちは世界中の隅から隅まで暴虐を尽くし、大地を黒く穢すことに余念がない。
今、世界は、人類は戦争をしていた。
ありとあらゆる人種が、国が、月から降り落ち
2章12話 其れは黄金の聖槍
どうするべきか?
ウィルは二人を観察していた、オーフェンとメイファンは共に濁った瞳をしており、しかしそれ以外の振る舞いや言動に矛盾や違和感があるワケじゃない。
本当に彼らはウィルがイレイナを殺害した騎士殺しだと確信している様子で殺気立っていた。
「どうして俺が騎士殺しだと?ただの学者なんだがね」
オーフェンが鼻で笑って背に担いだ特大剣を構えた。
「誤魔化せると思ってんのか?
2章11話 遺跡調査
特に道中で山賊に襲われたり、襲われている高貴な方を助けたりなどといったトラブルに遭遇することもなく、俺とバルドは無事にエスペンサの街にたどり着いた。
報酬はギルドから渡されるためバルドはギルドに行き、俺は寄り道することなく遺跡に向かった。
主神の時代の遺跡は突然現れることがままある、特に街からそう遠くない場所だったにも関わらずある日突然見つかるのだ。
これには理由がちゃんとある、簡単に言えば
2章9話 この剣の征く道に終わりなんてない
騎士国家リーメルにおいて銀は特別な意味を持っている。
私の首から下がっているこの銀の首飾りには様々な意味があるのだ。
騎士とはただの戦士ではない、泥に濡れ、血を浴びることを厭わない金銭に忠実な野蛮な傭兵とは違う。
騎士が銀の装いを好むのは金に欲深い者ではないとしつつ、しかし気品を併せ持つ者であると示すためである。
そう唱えたのはリーメルにおいて最初の銀騎士と称された銀装の騎士である。
現代のリーメ
2章8話 黄金の加護
黄金の光が樹海を染め上げる。
大気がビリビリと震え、世界が、神が、その存在を祝福していた。
華奢な身体から放たれているとは思えぬ覇気を放つメイファンが拳を強く握りしめて構え、ラム達を睨む黄金の双眸には決意の光が宿っていた。
「『チャージ』!!!!」
メイファンの両腕と両足を白い光が包み、光は輝きを増していく。
「『インパクト』!!!!!」
拳を地面に振り下ろし、白い光が爆発した。
衝撃
2章6話 ローフの樹海
辺境の街ローフの樹海にて。
04小隊の四名は早朝から樹海に入り魔種の捜索を始めて昼になったが、魔種の姿どころか生物の気配が全くしない樹海の状況に警戒を強めていた。
「あ、あまりに静かすぎます、鳥の鳴き声すらも…聞こえないなんて…。」
「…本当に、虫の1匹すらいませんね…。」
イレイナは足元の腐葉土を足先で掘り返してみるも蟻の1匹すらもいない現状にどこか不気味さを感じていた。
「全員、周囲
2章 5話 ウィリアム
「お母さん…お父さん…どこー!どこにいるの〜?」
あっ、これって夢だ。
私は唐突に気がついた。
村を歩く11歳の私の視点であの日が繰り返される。
村は至るところが燃えていて、村のみんなが倒れている。
この後で私は彼と出会ったんだ。
「だれか〜!ぐずっ…みんなどうしちゃったの?あ……」
村の中を裸足で彷徨う私の目の前に『鬼』が現れた。
一体じゃない、10、20、もっと沢山いて、『鬼』達が私
2章 3話 守りたいもの
早朝、俺は04小隊の隊舎に集合していた。
「オーフェン、集まるのはまた貴方が最後ね。」
事務室に入るとソファーに座っていたイレイナが俺に噛み付いてきた。
「うるせえよ!別にいいだろ、集合の5分前に来てるんだぜ?
あ、隊長、それとメイファンも!おはようございます!」
「おはようオーフェン、朝から賑やかになっていいね」
「お、おはようございます……」
俺はイレイナを一睨みしてからソファー
2章2話 魔女との邂逅
オーフェン達の乗っていた馬車は街道を抜けて、穏やかな空気に包まれた農村に辿り着いた。
山々に囲まれたこの村は真ん中に線を引くように小河が流れていて自然豊かな場所だった。
稲穂が陽の光に当たって黄金に輝いている。
馬車が止まり、御者席のディアモンテが後ろの3人に向かって顔を出した。
「道中で説明したと思うが、改めて任務内容を確認するぞ。
この村の農作物が獣によって荒らされているらしく、我々はこ