北風騎士

忠誠と信仰は同じ?いいや違うね。

北風騎士

忠誠と信仰は同じ?いいや違うね。

マガジン

  • そして英雄になる

    英雄を目指したラムとウィルの剣と魔法があるライトなファンタジー物語。

  • 魔王と勇者

    厨二病の発作

記事一覧

2章13話 其の英雄の名は。

 深呼吸をした、息を吸って吐いた。 そこに己が与えられた加護があることを確かめるように黄金の槍を強く握りしめた。 血液が煮えたぎっているかのように身体が熱く、神経…

北風騎士
2週間前
2

2章12話 其れは黄金の聖槍

 どうするべきか?  ウィルは二人を観察していた、オーフェンとメイファンは共に濁った瞳をしており、しかしそれ以外の振る舞いや言動に矛盾や違和感があるワケじゃない…

北風騎士
2か月前
1

2章11話 遺跡調査

特に道中で山賊に襲われたり、襲われている高貴な方を助けたりなどといったトラブルに遭遇することもなく、俺とバルドは無事にエスペンサの街にたどり着いた。 報酬はギル…

北風騎士
6か月前
1

2章10話 考古学者ウィリス

眩しい光に包まれていたのを今でも覚えている。 父のように力強く、母のように優しげな声を覚えている。 帝国魔術師の魔導老公と死霊魔術によって操られたアウリクスに殺さ…

北風騎士
6か月前
4

2章9話 この剣の征く道に終わりなんてない

騎士国家リーメルにおいて銀は特別な意味を持っている。 私の首から下がっているこの銀の首飾りには様々な意味があるのだ。 騎士とはただの戦士ではない、泥に濡れ、血を浴…

北風騎士
9か月前
1

2章8話 黄金の加護

 黄金の光が樹海を染め上げる。 大気がビリビリと震え、世界が、神が、その存在を祝福していた。 華奢な身体から放たれているとは思えぬ覇気を放つメイファンが拳を強く…

北風騎士
10か月前
2

2章 7話 幻獣種

黒い肌。黒い眼。額に生えた黒い角。背中から生えた蝙蝠のような4対の羽。 真っ赤な衣装の貴族のような出立ち。 人に似ているとはいえ、その禍々しい風貌は見るもの全てに…

北風騎士
10か月前
2

2章6話 ローフの樹海

辺境の街ローフの樹海にて。 04小隊の四名は早朝から樹海に入り魔種の捜索を始めて昼になったが、魔種の姿どころか生物の気配が全くしない樹海の状況に警戒を強めていた。…

北風騎士
11か月前
2

2章 5話 ウィリアム

「お母さん…お父さん…どこー!どこにいるの〜?」 あっ、これって夢だ。 私は唐突に気がついた。 村を歩く11歳の私の視点であの日が繰り返される。 村は至るところが燃…

北風騎士
11か月前
1

2章4話 でけえ蟹

 隊長から招集を掛けられた俺たちは、早朝に事務所に集まった。 「おはようございます隊長!」 「おはようオーフェン。」 事務室を見渡すと隊長の他にイレイナとメイフ…

北風騎士
11か月前
1

2章 3話 守りたいもの

 早朝、俺は04小隊の隊舎に集合していた。 「オーフェン、集まるのはまた貴方が最後ね。」 事務室に入るとソファーに座っていたイレイナが俺に噛み付いてきた。 「うる…

北風騎士
1年前
1

2章2話 魔女との邂逅

 オーフェン達の乗っていた馬車は街道を抜けて、穏やかな空気に包まれた農村に辿り着いた。 山々に囲まれたこの村は真ん中に線を引くように小河が流れていて自然豊かな場…

北風騎士
1年前
1

2章1話 オーフェン

 帝国が大陸全土に向けて宣戦布告を行ってから5年。 帝国は公国を侵略した後にいくつもの小国群を占領して更なる軍拡と戦争を行っていた。  これに対して5大国の内の、…

北風騎士
1年前
2

20話 闇への誘い

 僕はベッドの上で目を覚ました。 小窓からは日差しが降り注いでいる、すぐそばの通りは商店街に近いのだろうか、賑やかな歓声が聞こえてきていた。  身体を起こして部…

北風騎士
1年前

19話 紅蓮の勇者

 幼き日のことだ。私はただひたすらに剣の修行に打ち込み、教養を身につけ、礼儀作法を必死に学んだ。  それは国への忠誠心でもなんでもない。 ただ父に、母に、褒めて…

北風騎士
1年前
1

18話 銀装

 戦場の中心地にて、銀剣と拳が激しくぶつかり合う。  銀と黄金。 両者の力は完全に拮抗しており、一進一退の攻防を繰り広げていた。  加速していくラムとアウリクスの…

北風騎士
1年前
3

2章13話 其の英雄の名は。

 深呼吸をした、息を吸って吐いた。
そこに己が与えられた加護があることを確かめるように黄金の槍を強く握りしめた。
血液が煮えたぎっているかのように身体が熱く、神経は研ぎ澄まされ、思考は何処までも澄み渡っている。

 月の邪神の使徒である魑魅魍魎たちは世界中の隅から隅まで暴虐を尽くし、大地を黒く穢すことに余念がない。

今、世界は、人類は戦争をしていた。

ありとあらゆる人種が、国が、月から降り落ち

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2章12話 其れは黄金の聖槍

 どうするべきか?
 ウィルは二人を観察していた、オーフェンとメイファンは共に濁った瞳をしており、しかしそれ以外の振る舞いや言動に矛盾や違和感があるワケじゃない。     
 本当に彼らはウィルがイレイナを殺害した騎士殺しだと確信している様子で殺気立っていた。

「どうして俺が騎士殺しだと?ただの学者なんだがね」

 オーフェンが鼻で笑って背に担いだ特大剣を構えた。

「誤魔化せると思ってんのか?

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2章11話 遺跡調査

特に道中で山賊に襲われたり、襲われている高貴な方を助けたりなどといったトラブルに遭遇することもなく、俺とバルドは無事にエスペンサの街にたどり着いた。

報酬はギルドから渡されるためバルドはギルドに行き、俺は寄り道することなく遺跡に向かった。

 主神の時代の遺跡は突然現れることがままある、特に街からそう遠くない場所だったにも関わらずある日突然見つかるのだ。
これには理由がちゃんとある、簡単に言えば

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2章10話 考古学者ウィリス

眩しい光に包まれていたのを今でも覚えている。
父のように力強く、母のように優しげな声を覚えている。
帝国魔術師の魔導老公と死霊魔術によって操られたアウリクスに殺されたのを覚えている。

肉の一片も残らず消し飛んだはずの俺は森を彷徨っていた。
この森はアウリクスと戦った森じゃない、ラムと一緒に過ごした山の麓だった。
自分が何故この山にいるのか分からないが俺は秘密基地に行かなくちゃ行けないと感じていた

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2章9話 この剣の征く道に終わりなんてない

騎士国家リーメルにおいて銀は特別な意味を持っている。
私の首から下がっているこの銀の首飾りには様々な意味があるのだ。
騎士とはただの戦士ではない、泥に濡れ、血を浴びることを厭わない金銭に忠実な野蛮な傭兵とは違う。
騎士が銀の装いを好むのは金に欲深い者ではないとしつつ、しかし気品を併せ持つ者であると示すためである。
そう唱えたのはリーメルにおいて最初の銀騎士と称された銀装の騎士である。
現代のリーメ

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2章8話 黄金の加護

 黄金の光が樹海を染め上げる。

大気がビリビリと震え、世界が、神が、その存在を祝福していた。
華奢な身体から放たれているとは思えぬ覇気を放つメイファンが拳を強く握りしめて構え、ラム達を睨む黄金の双眸には決意の光が宿っていた。

「『チャージ』!!!!」

メイファンの両腕と両足を白い光が包み、光は輝きを増していく。

「『インパクト』!!!!!」

拳を地面に振り下ろし、白い光が爆発した。
衝撃

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2章 7話 幻獣種

黒い肌。黒い眼。額に生えた黒い角。背中から生えた蝙蝠のような4対の羽。
真っ赤な衣装の貴族のような出立ち。
人に似ているとはいえ、その禍々しい風貌は見るもの全てに根源的な恐怖を与えるだろう。
孤の字に開かれた口からは真っ赤な歯と舌が覗いて見えた。

誰もが御伽話で知っている。恐怖と厄災の象徴。
幻獣種『悪魔』

悪魔がオーフェンとディアモンテの前に現れていた。

「本当に向こうから来るんだ、行儀良

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2章6話 ローフの樹海

辺境の街ローフの樹海にて。

04小隊の四名は早朝から樹海に入り魔種の捜索を始めて昼になったが、魔種の姿どころか生物の気配が全くしない樹海の状況に警戒を強めていた。

「あ、あまりに静かすぎます、鳥の鳴き声すらも…聞こえないなんて…。」

「…本当に、虫の1匹すらいませんね…。」

イレイナは足元の腐葉土を足先で掘り返してみるも蟻の1匹すらもいない現状にどこか不気味さを感じていた。

「全員、周囲

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2章 5話 ウィリアム

「お母さん…お父さん…どこー!どこにいるの〜?」

あっ、これって夢だ。
私は唐突に気がついた。

村を歩く11歳の私の視点であの日が繰り返される。
村は至るところが燃えていて、村のみんなが倒れている。

この後で私は彼と出会ったんだ。

「だれか〜!ぐずっ…みんなどうしちゃったの?あ……」

村の中を裸足で彷徨う私の目の前に『鬼』が現れた。
一体じゃない、10、20、もっと沢山いて、『鬼』達が私

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2章4話 でけえ蟹

 隊長から招集を掛けられた俺たちは、早朝に事務所に集まった。

「おはようございます隊長!」

「おはようオーフェン。」

事務室を見渡すと隊長の他にイレイナとメイファンも既に集まっていて、俺含め全員が完全武装の状態だった。

「そんで……どこスか?」

「うむ、魔種が発生したと報告を受けた場所は港町シールの町外れの海沿いで、姿は蟹が巨大化した物、数は三体だと聞いている。」

「蟹?なんか想像つか

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2章 3話 守りたいもの

 早朝、俺は04小隊の隊舎に集合していた。

「オーフェン、集まるのはまた貴方が最後ね。」

事務室に入るとソファーに座っていたイレイナが俺に噛み付いてきた。

「うるせえよ!別にいいだろ、集合の5分前に来てるんだぜ?
あ、隊長、それとメイファンも!おはようございます!」

「おはようオーフェン、朝から賑やかになっていいね」

「お、おはようございます……」

俺はイレイナを一睨みしてからソファー

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2章2話 魔女との邂逅

 オーフェン達の乗っていた馬車は街道を抜けて、穏やかな空気に包まれた農村に辿り着いた。
山々に囲まれたこの村は真ん中に線を引くように小河が流れていて自然豊かな場所だった。
稲穂が陽の光に当たって黄金に輝いている。
 馬車が止まり、御者席のディアモンテが後ろの3人に向かって顔を出した。

「道中で説明したと思うが、改めて任務内容を確認するぞ。
この村の農作物が獣によって荒らされているらしく、我々はこ

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2章1話 オーフェン

 帝国が大陸全土に向けて宣戦布告を行ってから5年。
帝国は公国を侵略した後にいくつもの小国群を占領して更なる軍拡と戦争を行っていた。
 これに対して5大国の内の、北国アインドラ、共和国エスペンサ、南国グリムは同盟を結んで連合軍を作り帝国に対する共同戦線を張ることによって強大な帝国に対して攻勢を試みていた。

 そんな世界情勢の中で1人の少年の物語が運命と交わろうとしていた。
ここは沈黙を貫き続ける

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20話 闇への誘い

 僕はベッドの上で目を覚ました。
小窓からは日差しが降り注いでいる、すぐそばの通りは商店街に近いのだろうか、賑やかな歓声が聞こえてきていた。

 身体を起こして部屋を観察する。
知らない天井、知らないベッド、知らない部屋。自分が今着ている服すらも知らない服だった。
いつもなら寝る時はベッドの側に置いてある筈の剣が無い。
ベッドの側の机には花瓶が置いてあった。
今までに見たことのない花が挿されていて

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19話 紅蓮の勇者

 幼き日のことだ。私はただひたすらに剣の修行に打ち込み、教養を身につけ、礼儀作法を必死に学んだ。

 それは国への忠誠心でもなんでもない。
ただ父に、母に、褒めてほしかった。認めてほしかった。
ちゃんと愛されているのだと知りたかった。
 私は17の時に王の御前試合でもある皇族護衛役を選定する試合に出場した。
教養と家柄、礼儀作法は全て合格し、後は剣術の腕を皇族の方々にお見せする試合に優勝するだけだ

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18話 銀装

 戦場の中心地にて、銀剣と拳が激しくぶつかり合う。

 銀と黄金。
両者の力は完全に拮抗しており、一進一退の攻防を繰り広げていた。
 加速していくラムとアウリクスの攻撃は激しさを増し、それによって生まれた余波が帝国兵と辺境伯兵を纏めて吹き飛ばし、2人の元に寄せ付けない。
 魔導老公は何らかの魔術を用いて戦闘の余波を無効化し、2人の闘いを観察していた。

「全くもって計画が台無しじゃ。
よもや、公国

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