伊藤 光星

初めまして。以前、他サイトで「幻狼」名義で執筆活動をしておりました。途中、紆余曲折あっ…

伊藤 光星

初めまして。以前、他サイトで「幻狼」名義で執筆活動をしておりました。途中、紆余曲折あって、「伊藤 光星」として再出発です。宜しくお願いします

マガジン

  • 伊藤 光星 短編集

    その他の短編を集めたマガジンです。不定期更新です

  • 子哭き寺

    2015年 某サイトで掲載されていた作品のリバイバル版です

  • 悪魔の・・シリーズ

    短編小説 悪魔の・・シリーズのまとめです

  • 怪異 排管の中

最近の記事

【短編小説】ある秋の日の恐怖体験 後編

高橋 真紀 「おおっ!あそこに見えるは、もしやっ!高橋真紀ちゃんではないかぁぁっ!まきちゃぁぁーんっ!」  高松が両手を振りながら、大声で叫ぶ先には、年の頃は二十代なのだろうか。栗色でショートカットの髪に愛くるしい整った笑顔。  背丈は俺らより低く160センチ前後だろう。体型は、痩せ型だが出るとこ出てる感じで、胸元だけが黒いベージュのワンピースに紺色のカーディガンを羽織り、白く光るパンプスを履いている。  清楚なお嬢様ように品よく、コケティッシュな感じがする女性が歩い

    • 【短編小説】ある秋の日の恐怖体験 前編

      秋の鶴舞公園  俺は、いつも秋になると決まって思い出すことがある。それは、今から三十年ほど前と、遠い昔の話になるのだが、ここに記しておこう。 あれは、清々しい秋晴れに恵まれた日の事であった。冷たく澄んだ空気が心地よい季節。街路樹の葉も紅葉の賑わいを見せて、色づき始めた十一月中旬。俺は半年ぶりに名古屋へと帰省した。  太陽が燦々と輝いて、涼しい風が銀杏並木を揺らし、黄色く色づいた葉が舞い落ちては、仄かな秋の香りを辺りに漂わせていく。  俺は地下鉄の出口を出ると、混雑した

      • 【短編小説】ある春の日の恐怖体験

        あれは、今から年ほど三十年ほど前の春の日の出来事だった。  俺の名前は加藤 浩史。愛知県の高校を卒業し、住み慣れた町を離れ、地方の大学へと進学した。都会の喧騒に慣れた俺は、田舎へ引っ越すということに、当初は不安でいっぱいだった。  しかし、大学生活が始まり、独り暮らしにも慣れていくに従い、待っていたのはサークル活動にバイト。合コン、飲み会、朝までカラオケの日々。そのループに陥って、大学では適当に出席して単位を取っておけば良かった。気づけば、四年間がアッという間に過ぎ去って

        • 子哭き寺⑤ FINAL

          真相  私は現実の世界へと引き戻された。やがて夏休みが終わり、新学期の始まりを迎えるだろう。  あの日の朝、周防山を下山した私は田辺が車で最寄りの駅まで送ってくれるというのでお願いすることになった。  白い軽貨物車の助手席に座り、頭から埃やら藁を被り、ボロ雑巾のような私はあまりの惨めさに心が折れかけていた。一日で色々なことに遭遇し、泣きそうになるのを堪えるのがいっぱいだった。  車中、私は両親に迎えに来てもらうように電話した。昨日の出来事をポツリポツリと話しながら、涙

        【短編小説】ある秋の日の恐怖体験 後編

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        • 伊藤 光星 短編集
          2本
        • 子哭き寺
          5本
        • 悪魔の・・シリーズ
          4本
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        記事

          子哭き寺④

          散歩者「痛いっ・・」  混沌とした意識の中に雀たちの甲高い声が鼓膜を揺らして、意識を覚まさせる。私は、うっすらと目を開けた。天には明るい朝日が見える。どうやら、あの青い目玉はいなくなったようだ。  私は安堵した。しかし、覚醒した私の後頭部に激痛が走る。 「痛っ!」 思わず、後頭部に手をやると、血は出ていないようだが二センチほどのコブが出来ているようだった。 「それにしても、ここ、何処だろう?」  私は辺りを見回した。ちょうど、昨日、畳が裂けた真下の地面を更に掘り下

          子哭き寺③

            寺務所  私は飛び込むように転がり込み、引き戸を思い切り閉めた。間一髪、青い目玉が激しくその戸を叩いてくる。 ”ドンドンドンッ!” 「なんなのよっ!!」  私は戸を必死で押さえて、目玉の侵入を阻止する。だが、ガラスの割れた格子の隙間から目玉がぎょろりと私を見ながら、今にも戸を破壊する勢いで叩いてくる。木の格子がヒビ割れ ”ドンドンドンッ!バリッバリ!”  と、今にも壊れそうになっていた。私は辺りを見渡し、長く太い木の棒を見つけた。 「あっ!これで、こうして

          子哭き寺②

          青い目玉 私の鼓動が急速に大きくなり、全身を小刻みな振動が襲った。私は震える唇を何とか噛みしめながら、躊躇した。いくら、肝試しと言っても、これ以上進むのは危険だろう。   親友の唐田 景子は高校三年になり、いち早く車の免許を取ったため、私と他の友人二名を連れだって、高校生最後の夏休みの思い出にとやってきたのは、何でも十五年前に一人の若い女性が惨殺されたという、いわくつきの廃寺なのだ。  景子は当初、ドライブに誘ってきたのだが、途中から肝試しをしたい言い出した。私は、夏の

          子哭き寺①

          白い女  蒸し暑い八月下旬の夜の事だった。既に、時計は深夜二時を廻っている。ひと気のない細い山道を私はLEDライト片手に一人で歩いていた。  辺りには放逐された竹林で覆い尽くされており、天高く伸びた竹たちが時折、生暖かい風を受けて笑っている。私はサラサラとした笹の葉の調に不意に空を見上げた。  空には厚い雲が覆いかぶさり、薄い月の光を遮っている。そのお蔭で辺りは真っ暗闇と化している。そこへ湿ったような葉の香りが漂う。おそらく、それは笹の葉と野草たちの匂いなのだろうか。

          【短編小説】悪魔の水遊び-file4-

           真っ暗な空がゆっくりと朝日に彩られて、夜明けを迎える。森に棲む小鳥たちの甲高いさえずりが鼓膜を揺らす。近くに流れる大きな川のせせらぎが緩やかで雄大に流れていた。  夏の朝なのに、辺りには冷たい空気が包み込んでいる。やがて、森の木と木の間を縫って夏のお日様が顔を覗かせて、赤い光をゆっくりと差し込んでいくのである。 「うっ・・・う~ん。もう夜明けか・・・」  イケメン夫が、うっすらと目を開けて、深緑色のコールマンテントの天井をぼんやりと見つめた。と、突然の事だった。  

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          【短編小説】悪魔の水遊び-file4-

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          【短編小説】悪魔と泥仕合 -file3-

           ここは真昼の夏の日差しが照りつける大自然の森の中だ。青々とした木々が暑い風に揺られて、葉を鳴らしている。木々に留った鳥たちが甲高いハーモニーをさえずっている。  その合間を縫って蝉が強く鳴いて、夏の風物詩を醸し出している。そんな中を流れる大きな川で弾けるような水の音だけが、唯一、涼しげな揺らぎを与えていた。この炎天下の中、森の木々の影を利用して、獣道を歩く四つの人影があった。  額に汗をかきながら、青いリボンが付いた麦わら帽子を被り、背中と両手に大きな荷物を背負ったイケ

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          【短編小説】悪魔と泥仕合 -file3-

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          【短編小説】悪魔と泥試合-file2-

           夏の強い日差しが地平線を沿いながら、赤色に染めあげて大空へと立ち昇っていく。藍色の空に、ゆっくりと流れる雲が朱く染まり、森に寝静まっていた鳥たちのさえずりが朝の訪れを告げている。凛とした澄んだ空気の中、川のせせらぎが揺らぎのメロディを奏でている。  時折、森の木々の合間を縫って蝉の鳴き声が聞こえている。夜中の寝苦しく蒸し暑さが一転して、深い山奥にある森の明け方の空気は川の水の冷たさも相まって、ひんやりと冷たいのである。  その川は、川幅が広い割に川底も比較的に深くないた

          【短編小説】悪魔と泥試合-file2-

          【短編小説】悪魔の晩餐会-file1-

           それは蒸し暑い真夏の夜の出来事だった。雲一つ無い澄んだ空には真ん丸な月がぽっかりと浮かび、辺りを煌々と照らしている。ここは静かな森の奥深く。  仄かに暖かい風が吹いて、木々の葉を揺らしている。この森には大きな川が流れており、淡々としたリズミカルな川のせせらぎが聞こえている。  生い茂った木々の間から長く伸びた草たちが生えており、その合間から数々の夏の虫が合唱を響き渡らせている。それは森の木々たちが寝静まった深夜一時を過ぎたぐらいのことだった。  森の奥から草を掻き分け、折

          【短編小説】悪魔の晩餐会-file1-

          怪異 排管の中(6) 真相篇

          真相  五月の後半。空は今日も黒く厚い雲に覆われて、今にも雨を降らさんとする様相を呈していた。湿り気を帯びた暑い空気が、昼過ぎの町に漂っている。メガネをかけた背の低い男が、一人、空を恨めしそうに見上げて立っていた。と、そこへ白塗りの病院らしき建物から出てきたグレーの背広を着た大柄な男が駆け寄ってくる。 「貞平さん、お待たせしました」 「おおっ、宅間、遅いじゃねぇか!」  宅間と呼ばれた大柄な男は黒塗りの手帳を取り出すと、貞平と呼ばれた頭の薄いメガネをかけた小柄な男に見

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          怪異 排管の中(6) 真相篇

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          怪異 排管の中(5) 真相篇

          長屋 治夫の独白  俺の神経は活動を停止し、やがて、全ての細胞が活動を停止するだろう。その間に、一片の記憶だけが蘇ってきた。あの一月に失踪したという広岡 百合香という若い女についてだ。  それは、心底、身も心も凍るような一月の寒い夜だった。煌々と満月の照る晩に、このアパート付近を彷徨っていたのが、この女だった。この周辺の複雑に入り組んだ迷路のように、同じような形状の建物が立ち並ぶ住宅街は、時に、排他的に、よそ者の方向感覚を狂わせ、惑わせるのだ。  だが、そもそも、これが

          怪異 排管の中(5) 真相篇

          怪異 排管の中(4)

          怪異  静寂・・・。潜在意識の裏側から、徐々にぼんやりとした顕在意識へと意識が戻ってくる。雀の甲高い鳴き声が、だんだんと耳の奥を刺激する。まだ、肌寒い外の風が、窓の隙間から俺の肌を刺してくる。  まぶたの裏側を通して見えるのは、薄いオレンジ色の光が揺らめく姿だ。また、裸電球が点けっぱなしなのだろう。俺は、反射的に目覚まし時計の方を向いて、うっすらと、まぶたを開けた。長針が八と九の間を指し、短針が四と五の間を指している。 (まだ、四時四十三分か・・・。寒い・・・。もう少し

          怪異 排管の中(4)

          怪異 排管の中(3)

          夢魔の刻  混沌とした浅い眠り。食欲を満たし、酒の力を借りて、ゆっくりと潜在意識を通り越した未覚醒意識への探求だ。ぼんやりとした頭の中に、二か月前の事件が脳裏に浮かび上がってきた。  あれは三月下旬の晴れた日の事だ。強く玄関のドアをノックする音で目が覚めた。誰が叩いているのか、オンボロな木製のドアがきしんで音を立てる。 「は~い・・・」  俺が寝ぼけた調子で返事をすると、野太い声で”警察です”との回答。俺は内心、舌打ちをしながら、ショボショボとした目を擦り、ドアを開け

          怪異 排管の中(3)