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映画レビュー:RRR★★★★★

・観る栄養剤
・筋肉に次ぐ筋肉
・ナートゥをご存知か?


 ごきげんいかがでしょうか、お嬢様修行中のわたくしです。

 今回は地元のシアターで映画「RRR」を観ましたわ。



 結論から申し上げますと、5点満点中、5点。と申しますか、得点など測定不能のウルトラスーパーデラックスエンターテインメントです!


 もう、なんと申しますか……なぜもっと早くに観に行かなかったのだろうという後悔しかありませんわ。
 開始直後からジェットコースターのように引き込まれる展開。理不尽と非道に対して固く握りしめられる拳。ありえないことをありえないと感じさせない手腕。まるで兄弟のように、ティーンエイジャーのように育まれる友情。すれ違う運命、やがて明らかになる過酷な真実。目を覆う惨状、からの痛快な逆転劇。インド独立のために戦う二人の闘士を観ていたはずが、

いつのまにか壮大な叙事詩を観ていた


 そんな映画です。いつから歌って踊るただのインド映画だと錯覚していた?
 だいたい、こんな言葉をいくら連ねても、この映画の魅力を伝えることなどできませんわ……なぜって、言葉で伝えられるようなものではありませんもの。


■stoRy

 イギリスによる植民地支配を受けていた時代のインド。イギリス人総督は公然とインド人を“虫けらBugger”呼ばわりし、インドの人々はむごい仕打ちを受けていた。
 そんな中、イギリス軍に連れ去られた少女を救うため、ゴーンド族の“羊飼い”ビームは数人の仲間と共に大都市デリーへ潜入する。
 時を同じくして、総督暗殺を企むテロリストを捜索・逮捕するために、デリーの警察官ラーマは潜入捜査を開始。
 運命のいたずらか、正義感の強い二人は列車事故の現場に居合わせ、取り残された少年を阿吽の呼吸で救出。たちまち意気投合し、それぞれを兄弟と慕う親友になったのだった。
 しかし、互いに打ち明けられない秘密を抱えた二人に、運命の歯車は容赦なく迫ってゆく。友情か、使命か。物語はインド独立運動を巻き込み、激烈に転がり始める……

 
(※ここからはネタバレを含みます。ネタバレが嫌な方はブラウザバックでお戻りください。)














■良かった点

・平均すると2,3分に1回は山場(クライマックス)が来る

 本気で言っています。ほんとうに2,3分に1回は山場(クライマックス)が来ます。手に汗を握りっぱなしです。それでいてもうお腹いっぱい、とはならないのです。アクションがすごいとか、ツッコミどころ満載とか、そういうのではなく、情熱や熱量といったものが観客に直接伝わってくるのです。この監督のカロリーは尋常ではありません。エンターテインメントの何たるかを知り尽くし、なお進化させようとしている──そんな、前進、上昇のエネルギーを全身で感じることができます。そしてなんと、そのエネルギーは自分の体の中に残るのです!まさしく見る栄養剤ですわ!


・筋肉

「バーフバリ」で見せてくれた筋肉至上主義?は今作でも健在。泉で半裸のマッチョの後ろ姿には「神話画かな?」と目をこすり、憤怒の咆哮と共に盛り上がる胸板と二の腕に息を呑み、矢を引き絞る肩と背中の筋肉にはため息しか出ません。
 パワーこそ力!筋肉は裏切らない!
 インドのマッチョ……いいですわね……ただ体脂肪が少ないだけのエセマッチョとは一線を画します。ああ、神話画と申しましたけども、後半はほとんど神話ですわ。


理解ワカっているアクションシーン

 えらく遠くからのわずかなジェスチャーでかんぺきに意思疎通する→都合よくロープがある→おあつらえ向きにバイクがあり、馬がいる→当然のように落ちているインド独立旗をつかむ→ダイブ→救出成功!
 文字にするとナニソレな行動にも疑問を抱かせません!現実的なツッコミを力でねじ伏せるのは、想像の斜め上を行く創造力!この熱量あればこそ、壊れてビチビチ跳ね回っているだけの噴水のホースが怒り狂う多頭の蛇神ナーガのように見え、箱単位で引火して暴発しているだけの花火に全身を炎に包んだ火神アグニの姿を幻視する──そんなことすら可能になるのですわ!

 

・コテコテの切ない展開

 お互いに素性を隠したまま(しかも片方は軍にさらわれた少女を力づくで取り戻そうとする男、もう片方は治安を守る警察官)仲良くなっているので、見ている方がつらい、ハラハラする、という展開が続きます。特に“兄”ラーマが逡巡する場面でも“弟”ビームはほんとうに裏切られたと思って涙とともに激高するシーンはこちらも涙があふれますわ……
 この二人のステータスは、わたくしが見たところ

ラーマ……
パワー☆☆☆☆☆
スピード☆☆☆☆☆
テクニック☆☆☆☆☆

ビーム……
パワー☆☆☆☆☆
タフネス☆☆☆☆☆
スタミナ☆☆☆☆☆

 なので、ラーマの猛攻を耐え抜いたビームが強烈な一撃を返す、という戦闘スタイル。この結果……ああ、ダメ言えません!


・キレッキレのダンス、魂をゆさぶる歌

 インド映画と言えば歌と踊り……そう考えて敬遠されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。もちろん、今作にもふんだんに歌と踊りが用意されています。が、脈絡もなくいきなり踊りだしたり歌いだしたりはしません。「この展開だったら踊るしかないでしょう」「ここで歌の出番じゃなかったら詐欺」という絶妙のタイミングで入ってきます。
 例えば前半の花形「ナートゥ」のダンスシーン。好意を持ってくれた白人女性に屋敷に招待されたビームはイギリス人青年に「サルサもフラメンコも知らない野蛮人が」と侮辱されます。すると意気消沈するビームの肩を抱き、ラーマが「サルサでもフラメンコでもない……ナートゥをご存知か?」と挑発するのです。

 踊らないほうがおかしいでしょう!


 歌に関してもやはり同じ。あのシーンで歌ではなく演説をぶっていたら、はたしてあの結果につながったでしょうか。あの場面の最適解は歌しかないのです。

 

・字幕がステキ

 ラーマは英語ができます。イギリス人と話しているときは、私も聞き取れます。先ほどのナートゥのシーンではイギリス人青年に『Do you know……Naatu?』と訊いていました。これを『ナートゥを知っているか』でも『ナートゥを知っていますか』でも『ナートゥって知ってっか?』でもなく『ナートゥをご存知か?』と訳すのはセンスが良いと思います。なぜならラーマは勉強家で面倒見の良い兄貴だから。無味乾燥でもなく、居丈高でもなく、へりくだるでもなく、対等の存在であることを示すために『ナートゥをご存知か?』にしたのでしょう。わたくしも言葉を扱う者のはしくれとして多いに勉強になりました。


・完全なる敵味方の関係ではない

 これはインド独立をテーマにした、ある意味では重い映画。下手をすると中国や韓国の反日プロバガンダ映画のようになるかも……という危惧はありました。その要素がどれだけあるのかわかりませんけども、インド人に友好的なイギリス人たちも描かれ、さきのナートゥダンスシーンでビームを侮辱したイギリス人青年たちもやがて『どけっ!俺だってできらぁ!』『オレも!』『おれだって!』とばかりに正々堂々、ナートゥでダンスバトルに加わるのです。
 このあたりに、単なるポリティカル・コレクトネスに従ったわけではない、監督自身の考えが反映されていると思いますの。



■気になった点

・長い

 3時間あります。
 体感的にはあっという間に過ぎ去るので、のうみそはあまり感じないかもしれませんけども、体はこたえます。
 そう、尿意です。
 途中で「INTERRRVAL」という文字が出てくるのでほっとして(ああ、幕間がありますのね……ありがたいですわ)と思っていたら普通に続きが始まり(ちょっ!ないんですの!?さっきのは何?!)とツッコミましたので、これから観に行かれる方は、必ず直前にご用を足しておいたほうがよろしいと思いますわ。


・やや余韻に欠ける

「バーフバリ」でもそうでしたね。シーンの終わりとか、ラストシーンとか、もうちょっと余韻に浸っていたいところでもさっさと進んでしまうのが個人的にはいまいち。それでもテンポが悪いよりははるかによいのですが。
 それを補うかのように、今作ではエンドロールでも歌い、踊りまくっています!


■総評

 観る栄養剤。これを観ると多少の無理が平気になり、わりと簡単に自分の限界を超えてしまうので、調子に乗るとわたくしのように闇雲に筋トレをして筋肉痛と眠気に悩まされることになります。「トップガン マーヴェリック」と同じく、明らかに映画館で観ることを前提にして作られた作品ですわね。

 植民地時代から独立運動と、激動の時代を背景にした映画。あくまでもフィクションであり、モデルとなった二人の闘士がどんな末路をたどったか、調べてみると胸が痛みました。そんな、決してお気楽な気持ちで観てはいけないような重いテーマを内包しているのに、歴史のifとして極上のエンターテインメント作品に仕上げたラージャマウリ監督の手腕はさすがですわ。

 あと、おそらく──というか明らかに──インドの二大叙事詩のひとつ「ラーマーヤナ」も入っています。「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」のうち後者はかじったことがあるので、ラーマという名前、その恋人がシータという名前だということを知ったとき、(あっ、これは……)と思いました。これは、と思って「マハーバーラタ」の方も読んでみると……いました!大力無双の「ビーマ」王子!そういえば、わたくしの聞き間違いかもしれませんけども、ラストでラーマがビームのことを「ビーマ」と呼んでいたような……これは再度鑑賞して確かめなければ、ですわね!

 あと、エンドロールで次々に紹介されるインド独立の英雄たちを誰ひとり知らなかったのがちょっと口惜しいところでしたわね。次に観るときは、インド独立の歴史と、「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」を読み込んでから臨みますわ!『行為の結果を動機としてはいけない』というセリフもなにやら文献からの引用ぽいですからね!




 というわけで星五つ!ですわ!✧◝(⁰▿⁰)◜✧
 パワーこそ力!筋肉に次ぐ筋肉!熱い友情と大義のはざまで揺れる思い!虐げられた祖国を救うために我と我が身をなげうつ国士たちの生き様をとくとご覧なさいませ!
 決してコーラなどを持って入ってはいけませんわよ!



映画評価基準……

★★★★★:何度でも観たい
★★★★☆:ぜひ観たい
★★★☆☆:観ても損なし
★★☆☆☆:一度観ればいい
★☆☆☆☆:観なくてもいい
☆☆☆☆☆:お金を捨てたいなら




前回のレビュー


これまでのレビュー



 今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 それでは、ごきげんよう。







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