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映画レビュー:トップガン マーヴェリック★★★★★

──酎愛零が映画「トップガン マーヴェリック」を観て感想を書く話──


 考えるな、行動しろ。


 どうも、ひさしぶりに映画館に行った私です。
 今回は映画「トップガン マーヴェリック」を観ました。



 結論から申し上げますと、5点満点中、5点。控えめに言っても極上のエンターテインメントです!

 前作から36年という歳月は、長いようで必要なものでした。ひさしぶりに映画館で号泣しました。ストーリーなんて添え物、そんな感じだった前作に比べると、明確なストーリーがあり、それが劇中のミッションと無理なく組み合わさっていて、なおかつエンターテインメントのツボをことごとく押さえています。前作のオマージュはもちろん、他の映画のネタもあり、良い意味で王道の、安心して観られる作品に仕上がっています。前作の鑑賞は必須と言っていいでしょう。今回もトムの讃歌には違いないのですけれども、前作が例えるなら若者が好きなもの全部盛りのアメリカンなハンバーガーだったのに対して、今作は老舗のフルコース料理というところでしょうか。



■あらすじ

 かつて比類なき艦載機乗りとして武勲を立て名を馳せたピート・”マーヴェリック“・ミッチェル大佐は、試験中の極超音速機のテストパイロットとして勤務していたが、トップガンに教官として呼び戻され、そこで核濃縮実験を目論むならず者国家を相手取る極秘任務を言い渡される。彼の仕事は、トップガン卒業生をさらに鍛え、生還率0%とも目される作戦を成功に導くこと。それぞれが実力者揃いのメンバーの中に、事故で殉職したかつての相棒グースの息子、ルースターの名前を見たマーヴェリックは動揺する。上官がマーヴェリックの型破りな訓練に厳しい目を向ける中、作戦目標の施設稼働が早まったという情報が入る。自ら編隊長となって作戦に臨むマーヴェリック。彼と新世代トップガンたちは、達成困難な作戦を成功させることができるのか……


(※ここからはネタバレを含みます。ネタバレが嫌な方はブラウザバックでお戻りください。)







■良かった点

・全編、作品愛に満ちあふれている

 これに尽きます。冒頭のオレンジ色の背景に浮かぶ空母の離発着シーン、忙しく走り回り、立ち働く甲板員。そこに流れるツクツクツクツクゴーン……ツクツクツクツクゴーン……というイントロ……ああ!ああ!アンセム!神曲!そしてデンジャーゾーンへとつなぐ!魅せ方をかんぺきに理解ワカっているッッッ!(板垣恵介ふう)そして相変わらずノーヘルでバイクをかっ飛ばすマーヴェリック。単なる機械としてではなく、猛獣が吠えるように魅せるエンジンノズルのふかし方。前作を観ていれば、これこれ!この味じゃよー!(≧▽≦)と言いたくなることうけあい。ぜひ1作目を観てください!


・前作のオマージュに満ちあふれている

 冒頭のシーンはもちろん、「酒場で知り合った人が実は教官」「背面飛行でキャノピーすれすれ接近」「わざと管制塔の近くをフライバイしておどかす」「ビーチで半裸の男たちが筋肉ショー」などのニヤリとするものから、「前作冒頭で名前だけ出てきた人が今作のヒロイン」というマニアックなもの、「前作でグースがピアノで弾いていた曲を今作では息子のルースターが弾く」という目頭が熱くなるものまでたくさん出てくるので、前作の予習・復習をしておいたほうが何倍も楽しめます。特にピアノを弾くシーンはお手元にハンカチをご用意しておいたほうがよいでしょう。また、オマージュではありませんけど、かつてライバルとしてしのぎを削ったアイスマンが、同じ俳優さん(ヴァル・キルマー)で再登場するのも熱いシーンです。(それも海軍大将として!出世頭!)ヴァル・キルマーは咽頭がんをわずらい、本来の声を出せなくなっていたそうですが、劇中のアイスマンも咽頭がんをわずらっているという設定にしてあり、なにがなんでもヴァルをアイスマンとして出演させるのだという強い意志を感じました。


・ウルトラスーパーど迫力の飛行シーン

 前回では肩すかしぎみだった飛行シーンがたっぷり出てきます。訓練+実戦で、F/A-18スーパーホーネットの勇姿をたんまり拝むことができます。そしてただ敵とドンパチやるだけではなく、とてつもない難易度のミッションを変態的な機動(褒め言葉)で行うので、実際に戦闘機内に持ち込んだカメラや、俳優たちの熱演もあいまって、観ているこちらが思わずシートの肘掛けを握りしめ、息を呑んで身を固くしてしまうこともしばしば。そして終盤、撃墜されたマーヴェリックが敵基地から盗み出して搭乗する機体がね……もう胸熱なんですね……


・キャラクターがわかりやすい

 年相応に落ち着いたかと思えば今でも若かりし頃の無茶をやらかすマーヴェリックはもちろん、マーヴェリックに屈折した思いを抱くルースターは、父親のグース役の人に顔がかなり似ていますし(ちょびひげのせいかもしれませんけど)、今作のライバルキャラにしてエースパイロットのハングマンは自信に満ちて天才的だけど協調性がない皮肉屋というかつてのマーヴェリックとアイスマンを彷彿とさせるキャラ、トップガン卒業生の中の紅一点で強気な女性キャラのフェニックス、地味で実直なメガネ君のボブなどと、キャラ設定がうまく機能しています。ヘルメットとマスクで顔が隠れていても女性の声がしたらそれはフェニックス、マスクでもヘルメットでも隠れない部分にメガネが見えたらボブ、という風に機能しているのです。これは前作の欠点を解消したものであると言えるでしょう。


・ベタでコテコテなストーリー展開

 父の死の原因がマーヴェリックにあると思うルースター、親子ほど歳の離れた二人がことごとくすれ違うシーンは胸につまされます。親友の息子を死地に送りたくないマーヴェリックと、自分を認めてくれないマーヴェリックに憤るルースター。事実、ルースターは基本に則りすぎていて、慎重になりすぎるきらいがあり、メンバーの中では実力はそれほどでもありません。そんな彼にマーヴェリックは「考えるな、行動しろ」という自らの考えを伝授します。その後の、救い救われのやりとりを経て、最後にルースターがマーヴェリックにかけた言葉を聞くと……ここで私の涙腺は決壊、号泣。擬似的な親子の、男の成長物語でもあるのです。あと、ふだんは鼻持ちならない自信家で皮肉屋なハングマンが、窮地に陥った味方を救出するために必死の表情で発艦許可を求めるシーンには熱くさせられますし、終盤、旧式機で最新鋭機と渡り合うシーンは胸熱以外のなにものでもありません。


・敵がちゃんと強い

 安易に主人公無双をさせない作品には好感が持てると前作のレビューでも書きましたけれども、今作でもそれはばっちり受け継がれています。マーヴェリックたちが搭乗して出撃するのは、現在から見ればやや旧式のF/A-18。対して敵の迎撃機は(明言されていませんけども)、F-22ラプターに似たあの形状からしておそらくSu-57。ロシア製戦闘機スホーイの最新型、第5世代モデルでしょう。それがフレア(熱源探知ミサイルをかわすためにばらまく防御兵装。小さな熱源体)を打ち尽くした後に現れて猛然と襲いかかってくるのです。その直前のミサイルの雨でも(全滅する……!)という絶望感に襲われたのに、さらにラプターぽいのが襲ってきた!となるところは無理ゲー感ありありすぎてつらい。だけどそれがいい。



■気になった点

・ミッションがインポッシブル

「峡谷の奥にある山に囲まれた核実験施設を爆撃するため、電撃作戦で侵攻」「山盛りの地対空ミサイルに狙われないようにするため、超低空飛行で峡谷の中を曲芸飛行のように飛んで敵レーダーをかわす」「性能がこちらより上の敵戦闘機が迎撃に来るまでの2分30秒以内に遂行する」「目標から離脱後は山を越えなければならないため敵レーダーにひっかかり、地対空ミサイルの雨をかわさなければならない、グッドラック」というもの。死ぬやん。そりゃ生還率0%やろ。ほぼゲームや漫画の世界ですよ。そしてこれ、「スター・ウォーズ」のデス・スター攻略戦のオマージュですよね?でもまあ、遂行不可能な作戦を遂行するのはトムの十八番おはこですから。


・字幕が残念

 これはもうちょっとどうにかならなかったんですかね……私は字幕をあまり見ずに英語音声で観る派なんですけれども、ちらちらと視界に入ってくる字幕が(ええ〜そんなふうに訳しちゃう?)というものがけっこうありました。決められた時間内に俳優の口の動きに合わせた言葉をあてはめなければならないという制約はわかりますが、前作とのつながりがある言葉はもう少し大事にしてほしかったです。なので、できれば英語音声をそのまま楽しむことがおすすめですよ!『The sky is your's』とか『Bull's eye!Holy shit!』とか『My wingman……』とか『It's Supersonic!』とか、原語で聞けば熱くなることうけあいです!



■総評

 これぞ映画、これぞエンターテインメント。配信で観る用の作品ではなく、明らかに映画館で観ることを前提にして作られた作品です。
 たしかに冷静になってみれば、相変わらず他のキャラクターが空気だったり、現実にはありえない作戦を立てたり、地表から核実験施設までまっすぐ通るダクトがあったり、爆炎の中から味方戦闘機が飛び出したりとかツッコミどころはいろいろあります。しかし、そんなものをすべてふっとばすほどのエンターテインメント力。敵機を破壊した爆炎の中を通ればエアインテークから破片を吸い込んでジェットエンジンが大変なことになる、というのはあくまでもリアルな正しい話であって、映画的には主人公機が絶体絶命の窮地に陥ったとき、助けに来るのは敵機を破壊した爆炎の中から颯爽と飛び出してくるライバル機以外にはありえないのです。それがエンターテインメント的正しさなのです。これを認められないということは、超絶おいしい極上のラーメンを前にして、やれこれは無農薬野菜じゃないだの、このスープには化学調味料が使われているだのと文句をたれることに等しいでしょう。現実にはありえないことがお嫌いなら、この作品はおすすめしません。
 また、随所にマーヴェリックの──トム・クルーズの顔を大写しにしてしばらく止め絵にするカットがあります。私はこれは、歌舞伎で言うところの「見得」のようなものだと思いました。それこそ上の方の客席から『いよッッッ』『クルーズ屋!』と野太い掛け声が聞こえてきそうな。そう考えると、ケレンとハッタリの効いた今作は歌舞伎的な作品と評することもできるかもしれませんね。
 最後に、これは映画館で見るべき作品であると申し上げましたけれども、その際は私のようなにわかファンよりも、前作の熱烈なファンで埋まった映画館で鑑賞することをおすすめします。それも、できれば前作をリアルタイムで観たことのある世代のファンで埋まった所で。きっと熱量が違うと思いますよ!


 というわけで星五つ!手に汗握るど迫力の飛行シーンと、すれ違う(擬似的な)父子の成長ドラマ、映画というエンターテインメントをすみずみまで知り尽くした作り、そして神曲の正しい使用法!歳を重ねたトム・クルーズのカッコよさを再認識できる傑作です!私も今度は吹替版を観に行きます!✧◝(⁰▿⁰)◜✧ 




映画評価基準……

★★★★★:何度でも観たい
★★★★☆:ぜひ観たい
★★★☆☆:観ても損なし
★★☆☆☆:一度観ればいい
★☆☆☆☆:観なくてもいい
☆☆☆☆☆:お金を捨てたいなら


前作のレビューはこちら↓




今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それでは、ごきげんよう。



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