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悪いヤツほど出世する

リーダーシップの常識を覆す!

スタンフォード教授が明かす、真のリーダーの資質。

ジョブズ、ゲイツ、ウェルチ…彼らは「いい人」ではなかった!

謙虚さ、誠実さ、部下への思いやり…一般的には、優れたリーダーにはこのような資質が求められます。

しかし、データは語る。

多くの成功しているリーダーは、これらの資質を必ずしも備えていないのです。

スタンフォード大学ビジネススクールの教授が、巷に溢れる「リーダー論」のウソを暴き、組織の目標を達成し、職場環境を改善するために何が効果的かを、豊富なデータと実例から解き明かします。





はじめに

リーダーシップ開発やリーダー育成に尽力している人の中には、職業意識が高い人や信頼できる素晴らしい人たちも大勢いることは認めよう。
だがその効果のほどが検証されたことは一度もない。
こうした現状を見ると、誤ったリーダーシップ教育のあり方を何とかしたい、という思いが湧いてくるのを抑えきれなかったというのが正直な所である。
本書をきっかけに、いまのリーダーシップ教育を無条件に受け入れることに読者が疑問を感じていただければ、幸いである。


リーダー神話はなぜ信用できないのか

リーダーシップを科学するには、信頼できるデータが必要である。
だがリーダーシップ教育で次々に提供されるのは神話や寓話の類だと言わざるを得ない。
自伝や半ば自前の評伝や講演、ケーススタディの中では、素晴らしいリーダー像がこしらえ上げられる。

リーダー自身の語るストーリーが信用できない理由の一つは、人間はどうしても自分をひいき目で見がちだということになる。
だから、たいていのことに自分は平均以上だと考えたがるし、自分が秀でているものこそが重要な資質だと思い込む。
しかも人間は、上手くいったことだけを覚えていて、自分にとって都合の悪いことは忘れがちである。
たとえ自分は覚えていても、公表するはずもない。
こうした認知バイアスの存在が学問的にも確かめられているにもかかわらず、私たちはリーダーシップ神話を受け入れやすい。
というのもこの種の神話の筋書きは、「世の中はうまくできている」と考えたがる私たちの傾向にまさに応えてくれるものだからだ。
「世界は公正であり、善は報われ悪は罰せられる」という世界観のことを「公正世界仮説」という。
この誤謬に囚われると、「成功した人には成功するだけの理由があるのだ」ということになる。
だからサクセスストーリーは無条件に支持される。

では、言行不一致のリーダーにかかわり合って自分のキャリアを台無しにしないようにするためにはどうしたらいいだろうか。
ここでは注意すべき点を二つ挙げる。
①事前調査を怠らない
②「感動」を追いかけるのはやめよう


謙虚で控えめなリーダーはいるのか

あるCEOは「リーダーは和を重んじ、控えめで、寛容でなければならない」と語っている。
謙虚な人間は信頼され、部下は一丸となって目標達成に取り組むというのである。
謙虚な人間は自分の能力の限界をわきまえているし、自分の弱点も承知している。
高い地位にありながら謙虚にふるまい、他人の能力に敬意を払うことが良いリーダーの条件だという主張は、多くの本や論文に見受けられる。

ナルシシズム、自己宣伝、自己顕示欲、根拠のない自信といったものは謙虚とは正反対であるが、これから見ていくように、出世の階段を上がるときには役に立つ。
そしていったんトップの座についてしまったら、こんどはその座を維持するのにも、より多くのリソースを獲得するのにも、効力を発揮する。
実はなかなか、リーダーがよくやっているのか、明確には判断しかねる。
こうした状況では、いわゆる「確証バイアス」が効力を発揮する。
こうしたわけで、リーダーが強いオーラを発し、尊敬と信頼に値する人物だと印象づけてしまえば、周囲の人間は、その印象と一致する情報だけを探すようになる。
このとき、もう一つのプロセスも進行している。
あなたがリーダーに選ばれたいなら、最低でも、選ぶ側があなたの存在に気づいていなければならない。
ある調査では、自身があるどころか自信過剰な人物でさえ、高い社会的地位、尊敬、影響力を勝ち得ていることが判明した。

以上のように、さまざまな調査の結果ははっきりしている。

第一に、謙虚なリーダーというのはめったにいない。
一方、ナルシスト型のリーダーは、生産的か非生産的かを問わず、きわめて多い。

第二に、ナルシスト型の性格や自己宣伝、自己主張といった行動は、リーダーの選抜や面接評価などで一貫して有利に働く。

第三に、ナルシスト型のCEOは他の経営陣よりも報酬が高く、在任期間も長い。

リーダーとしては大いに有効なこうしたメリットがあるとすれば、リーダーシップがあるとなれば、リーダーシップ教育産業がいくら「謙虚であれ」と言っても、謙虚なリーダーが少ないのも無理はない。


自分らしさへの過信と誤解

リーダーというものは、常にエネルギーを発散し、他人のことに気を配らなければならない。
少なくとも、そう見せなければならない。
たとえ自分がそのときどんな気分であっても、である。
優秀なリーダーは、決定的瞬間にリーダーに求められるのが「自分らしさ」ではないことを重々承知しているのである。
自分の気持ちに忠実に振舞うことは、むしろリーダーが最もやってはならないことの一つである。
リーダーは、その状況で求められるとおりに、周囲の人が期待するとおりに、振舞わなければならない。
そして多くの場合、人々が求めるのは、大丈夫、きっとうまくいく、という安心感である。


リーダーは真実を語るべきか

リーダーであれ誰であれ、嘘をつくのは罪である。
その罪は自分に跳ね返ってくるのであり、権威は失われ、信頼は地に落ちることになる。
だが現実には、嘘は信じられないほど多い。
ありとあらゆる種類の組織で大勢のリーダーが嘘をついていると言っても、決して誇張にはなるまい。
尊敬され崇拝されるリーダーでも、である。
嘘が減らない理由の一つは、嘘が悪い結果を招いていないからだろう。

例えば、交渉で自分の感情をごまかす人も多い。
戦略的に怒ってみせたり、落胆してみせたり、驚いてみせたりするわけだ。
その他には、嘘はときに、人間関係を円滑にする潤滑油の役割を果たす。
まったくそう思ってなくても、相手の容姿や服装を褒めたり、意見に全然賛成できないのにうやむやにごまかすのも、珍しいことではあるまい。
だから「たいていの人は嘘をついたことをあまり認識していないか、重大なことことは考えていない。」

人々が嘘をつくのは、それが目先の利益あるいは将来的な利得をもたらすからである。
自分を演出し人を眩惑する能力は人間関係においてきわめて重要であり、巧みに嘘をつく能力は仕事で成功するうえで欠かせない。

要するに、出世には嘘はつきものだというのである。
権力と嘘は持ちつ持たれつの関係にある。
権力を持つ人ほど嘘が容易になるし、巧みに嘘で切り抜ける人ほど権力を持つようになる。


『まとめ』

根拠のないリーダーシップ神話に振り回されるのはやめよう。


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