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日記4(※でも両親は嫌いじゃない)
ECサイトで『crepuscule』のページを開いてからおそらく30分以上が経過していた。5時間前に食べた鮭のムニエルとその少し後に食べた水羊羹は十分に消化され、外も走りにいくのに丁度いいくらい薄暗く、涼しくなっている。今日は一度も外に出ていないし、まさに今が走りにいくべきタイミングだった。
昨年友達から『crepuscule』のニットをプレゼントされた。そのニットの鹿の子編みによる生地の繊細
日記3(心の中では世界の終わりを待望してる)
明日のために早く寝ようと9時過ぎに読みかけの本を持って布団に入った。僕は場所によって、それぞれ異なる本を読むが、寝る前に読むのは大抵長編小説だ。今抱えているのは『海辺のカフカ』で僕が中学生くらい(多分ちょうど15歳)の時に途中まで読んで投げ出した本だった。主人公は15歳で、その頃は親近感から手を出したのを覚えている。一度読んだ小説を読むことで、僕はもう一度その頃を体験する。関連して、実際どうなの
もっとみる日記2(姉は昔、多分別の何かと入れ替わった)
昼前に起きた僕は、LED照明のように部屋を照らす障子から目を逸らした。ゆっくりと体を起こし、電子ピアノ用のスツールに置かれているメガネをかけ、昨夜に小説を読み進め過ぎたことを反省した。布団を畳んだ後、寝巻きの上からセーターを被り、洗顔、歯磨きを行う。台所に行き、サラダ用のブロッコリーとアスパラガスを取り出しマヨネーズをつけて食べた。電気ケトルに水を入れた頃に時計は11時30分を指していた。少しす
もっとみる日記1(メスのシャチと女性)
電車の席は規模の大きい劇場のように、席によって音響がいい席だとか、劇が見やすいだとかそれぞれの良さがある訳でもない。猫も杓子も電車の端の席は他人との接触が少なく、追加の料金を払わないで座れる最高の席だと考えているだろう。僕もその一人であり、電車の扉が開くと間髪入れず、端の席を確保した。コートに皺がつかないように用心して座り、朝古本屋で買った文庫本をコートの深いポケットから取り出して、それを読むこ
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