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蒲郡競艇場に初めて行った日

渥美半島で遊んだ帰りに

蒲郡市に立ち寄り

初めて蒲郡競艇場に

連れて行ってもらったのは

20代半ば頃

当時波乗りにハマっていて

知り合いに良く連れて行って

もらっていたのだが

知り合いは大の競艇好きで

新聞を手に入れては

好きな選手の動向を

チェックしたり

あちらこちらの競艇場での

具合を事細かに

チェックしていたくらいだ

僕は蒲郡競艇場は

外からでしか見た事はなかった

ドカンとおっきな建物の中から

モーター音が聞こえてきて

アナウンスの音が響き渡るのを

今日もやってるなあと言う

程度でしか思ってなかった

まさかそんな自分がなんの偶然か

蒲郡競艇場の中に

踏み込む日が来るだなんて

夢にも思わなかったが

社会勉強だと思って

連れて行ってもらった

イメージとしては

建物のあちこちには

空き缶や新聞舟券がちらばり

赤い鉛筆を耳にかけた

赤い目をしたおじさん達が

タバコを燻らせ

罵声を飛ばしてる姿を

想像していたのだが

現実は全く違った

全体的に綺麗で清潔

ゴミも落書きもない建物には

おじさんしかいないと

思っていたのに女性も多くて

なんだったら子どもの声も

聞こえてくる

舟券を買う方法も

モニターに映される

選手の名前や調子の有無を

観ても僕にはなんのこっちゃな話だったが

見る人によっては、

連れて行ってくれた知り合いの人にとっては

参考になるらしくて

目星をつけて舟券をかいに

券売機に向かっていった

僕は観ても聞いても

よくわからないから

名前や調子よりも

なんか◎とか⚪︎とか

書いてあるのを参考に

初めて舟券を買ってみた

100円を握りしめて

手に入れた舟券

この舟券にこの場所にいる人たちは

人生の全ての運を賭けていると思うと

不思議だった

時間が締め切られる

アナウンスが流れて

仰々しく入場曲が流れ

選手たちが水上に現れた

モーターボードが唸り

波の上を飛ぶ様に走る姿を

生で初めてみたのはその時だった

観覧席からの生の現実を

視覚から聴覚からドカンと

身体で受け止め

適当に選んだ舟券に

なんの根拠も無いのに

当たってほしいと

思ってしまった自分がいた

不思議なものだ

圧倒的なアドレナリンによる

興奮がいよいよ始まる

レースを前にして

気づいたら僕を競艇の世界感に

釘付けになっていたのだ

選手たちがゆっくり走り始め

加速していく

スタートラインを

飛び越えていった

エンジン音と水を切り裂く音

埋め尽くす人の声と声と声

僕にとっての初めての

競艇体験は凄まじい熱量の

真っ只中で訳もわからず

でも刺激的で楽しい

体験だった

ボートがコーナーを

ギリギリのところで曲がる際も

そこには駆け引きがあり

抜こうとする選手や塩梅を見て

攻めずに切り抜ける選手も

いたり技術面をみるのも

楽しかった

ゴールを決めた選手は

僕が適当にでも頑なに

根拠もないのに当たると

信じた選手ではなかったが

生まれて初めて味わった

ギャンブルの可能性を

教えてもらった貴重な経験を

得る事が出来た

何も知らぬままだったら

手に汗を握る経験は

出来なかったのだから

勇気ある社会勉強に

なったのではないのだろうか

若い頃の僕は未熟者なりに

好奇心は旺盛だったから

間違いなく楽しかったに

違いない

唸るエンジンと水を切り

飛ぶ様にはしるボートが

教えてくれた素晴らしい

体験が僕を大人に

近づけさせてくれたのだ

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