岸辺

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岸辺

「プロフィール」欄に作品リストまとめています。沖縄をモチーフにした作品を中心に書いてます。ゲンロンSF創作講座。

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    沖縄を題材にした作品たちです。

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梗概の基本的な書き方

1.梗概について梗概とは? 辞書で「梗概」を引くと、このように記載されています。 ――物語などのあらすじ。あらまし。大略。 本記事では、この梗概について書いていきたいと思います。 梗概の役割 梗概の一番の役割は「相手に物語を理解してもらうこと」です! この考え方を軸に、次章で梗概を書くときのポイントを記載していきます。 2.書くときのポイント1.結末やオチまで書く! これに尽きます。 よく梗概と混同されるのが、帯や文庫本の裏などに書かれている内容紹介の文だと思います。 内

    • 終迎(4837字)

      終迎権 一 本人の意志が最期まで明確であること。 二 計画性があること。 三 刑に服していないこと。  終迎権は私たちが獲得した新たな権利だった。積極的安楽死が認められ自分で死ぬ時期を選べるようになった。それは数十年前まではありえなかったことだ。終迎権は十六歳になると誰でも申請できるようになる。しかし、実際に権利を行使するためには法律で定められたいくつかの条件を段階的に踏まなければならない。まず、終迎を希望する者は自治体に終迎権行使へ向けた申請を行う。尚、この申請はいつでも

      • 雪吸い(3302字)

        「知ってるか? サンタの正体って親なんだぜ!」  クラスメイトの突然の告白にパオロは衝撃を受けた。 「そんなことないよ」 「じゃあ、どうやって子どもの欲しがるプレゼントがわかるんだよ?」 「毎年メッセージを送って……」 「俺は送ったことなんか一回もないぜ! いいか、おもちゃにはバーコードってのがついているんだ。それを調べればどこの店で買ったかなんてすぐにわかる。だいたい隣町のショッピングモールに決まっているさ」  十二月に入るとサンタへの感謝と欲しいプレゼントを打ち込んだメッ

        • 銀源郷(9360字)

           みなさま、銀源郷へようこそ!  広報のコルネットです。本ガイダンス終了後にみなさまをゲスト用マンションへとご案内いたします。銀源郷はシルバー世代のユートピアとして造られた新興老人ホーム型コロニーです。元々は大規模イベント時の宿泊施設不足解消用に建設された水上宿舎でしたが、イベント自体の無期限延期やその後に予定されていた商業施設が誘致もなくなり、高齢者をターゲットとした共生型都市として再開発されることになりました。そして様々な企業様にご出資いただき、次世代型のスマートシティへ

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          落塩(3544字)

          ――今夜遅くから翌朝にかけて、都心では〝落塩〟の可能性があります。帰りが遅くなる方は、防塩コートや傘を持ってお出かけください。  雷が人間に落ちる確率は、一説によると百万分の一らしい。落塩の可能性はそれよりもずっと低いと言われていた。ところが十年ほど前から落塩は珍しい現象ではなくなった。最近では研究も進んで台風や土砂災害のように天気予報で流れるようになってきた。いつからか塩の結晶の絵文字もできた。それでも空から降ってくる塩そのものについてはわかっていないことのほうがまだまだ多

          落塩(3544字)

          とりま、ビール(3659字)

          「あんた、スーツしわくちゃじゃないの! クリーニング出しておいで。急ぎで出せば成人式に間に合うから」 「式は行かないよ」 「えっ、そうなの?」 「帰ってくる前に電話でも言っただろ。ばぁちゃんにスーツ姿を見せるっていうから持ってきただけ。でも意味あるの? もう誰が誰かわかってないんだろ?」 「認知症の発見が遅れたせいで進行も早かったからね。この前なんか隣のベッドの人をお母さんだと思ってたくらいだし」 「そこはナノマシンが普及する前の時代の人だから仕方ないけど……やっぱ持ってくる

          とりま、ビール(3659字)

          地球絵画(4786字)

           〝地球絵画〟プロジェクトは人類が地球から脱出する数年前、ピピ・エルダーがバスルームでシャワーを浴びているときに誕生した。エルダー家は祖父の代から宇宙空間での建設を行う工務店を営んでいた。父親の代まではあくまで下請け会社の域を出なかったが、ピピの代になると宇宙建設ビジネスのブームもあり会社は拡大していった。エルダー・エンジニアリングとして上場すると名の知れた総合建設会社へと成長し、ピピ自身もそこの役員として働くようになった。  人類が地球からテラフォーミングされた惑星へ移住す

          地球絵画(4786字)

          エミリアーノに静寂はいらない(4890字)

          「僕らはみんな髪を伸ばしているんだ。こんな風にね!」  チームから支給されたスポンサー企業のロゴ入りヘアバンドを取ると、日差しを浴びたモカブラウンの長髪から生命力に溢れた若者特有の爽やかな汗が香った。練習場を出たエミリアーノはトレーニング室までの僅かな距離の間で記者たちに囲まれると、質問攻めにあった。  赤煉瓦の屋根が並ぶ街並みを中心地に向けて進んでいくと、市庁舎の東の丘に収容人数五千人のスタジアムを備えた総合運動公園がみえてくる。イタリアのプロ二部リーグに所属するサッカーク

          エミリアーノに静寂はいらない(4890字)

          ドメニコ・カッタネオ監督への取材(3687字)

          ――本日はお時間いただきありがとうございます。手に持っているのはぬいぐるみですか。  新スポンサーになった映画会社の作品のキャラクターだよ。うちの子どもたちがファンだという話をしたらグッズをくれたんだ。今日は試合の結果以上に子どもたちから褒めてもらえるかもしれないね。 ――それでは子どもたちのためにも早く終わらせましょう。今日の勝利で優勝にまた一歩近づきました。試合を振り返ってください。  非常に良い内容だったと思う。前半から我々のフットボールを披露でき、相手の狙いに対し

          ドメニコ・カッタネオ監督への取材(3687字)

          焚き銭(8020字)

              1. 「なんだ、これは!」  大場龍三は自分の庭ともいえる飲み屋街の衰退ぶりに驚いた。週末の夜だというのに人の姿はまばらで、多くのネオン看板が切れかかっていた。通りの電灯は何本もチカチカと救難信号のように点滅し、夜道をわずかに照らすのみ。数少ない客待ちのタクシーもほとんどエンジンが切られ、運転手は車内で眠っているか時間つぶしにカーラジオを流しているだけだった。  若いころに輸入業者の船倉庫で貨物整理の仕事をしていた龍三は、磯と油の混じった臭いの四角いプレハブのなかで

          焚き銭(8020字)

          勿忘熊(3746字)

           エネルギー資源探査のために衛星UM93を訪れた調査隊は、島の頂上を目指し丘を登っていた。白濁の海と恒常化した靄に覆われたこの星にどれだけの陸地が存在しているのか正確にはわかっていない。現時点で判明しているのは不定期に発生する津波が陸地を浸食し、群島化が進んでいるということだった。丘の中腹あたりに白い澱みが点在している。余程大きな波が来た証拠だろうと調査隊の隊長を務める男は思った。 「隊長。ここの海中には浮遊物質があり、バーミキュライトやカオリンなどの粘土鉱物が主なようです。

          勿忘熊(3746字)

          キリバ(5840字)

          ――キリバは沖縄地方で遊ばれていたとされるトランプゲームの一種である。しかし、どれだけ調べても明確なルールや起源などは出てこない。トランプの起源は唐のころの葉子戯に由来する説が有力であることから、キリバとは実態のみえない霧のなかにある葉子戯〝霧葉〟が語源ではないかと推察する。沖縄は古くから中国との交易も盛んで、葉子戯が早くから伝わったのでは…… 「マサオさん残業っすか?」  ネット上のキリバに関するブログを眺めていると、帰り支度をする若い職員が話しかけてきた。 「ちょっとだ

          キリバ(5840字)

          ユタのメイコちゃん(4078字)

           幽霊とは人間の可視光線範囲外で確認できる、あるいは生息している暫定の生き物である。生物たちは死を迎えると可視光線の範囲外に生前と同じ姿で現れる。それがどれくらいの期間そういう状態なのか、生きてる時とどう違うのかなどは何もわかっていない。観測しようにも、それらはただ空間を回遊魚のように浮遊しているだけで静止しなければセンサーにも映らない。捕獲しようにも物質的接触はできない。そもそも、幽霊が生物なのかどうかは研究者たちの間で議論の真っ最中で、今のところ暫定生物という便利な言葉で

          ユタのメイコちゃん(4078字)

          鳳凰梨園(4886字)

          「とうとうお呼ばれしちまった。いよいよ最期だな」  宿舎へと戻る貨物車の荷台で師匠はそうつぶやいた。亡くなる前日のことだった。翌朝、普段なら一番に起きているはずの師匠の姿が見えず、私が部屋を訪ねると布団の上で既に息を引き取っていた。師匠は私たち〝栽培者〟の中で一番の年長者で、若い頃に果樹から転落したことが原因で片足を悪くしていた。本来そうなると栽培者としてはお払い箱なのだが、幸運なことに師匠には果樹栽培や農業機器に対する知識が豊富だった。その為に果樹園の〝管理者〟たちは栽培者

          鳳凰梨園(4886字)

          梗概練習

          読んだ作品の梗概を数百字程度で書く練習。短編10作を目標📚 No.01『マクスウェルの悪魔』ケン・リュウ 日系アメリカ人のタカコは家族を守る為に市民権を放棄し、日本軍に捕らえられたアメリカ人捕虜との交換で日本に渡った。物理学を専攻していた彼女は大日本帝国陸軍士官である秋葉の目に留まり、母の故郷である沖縄の研究所に帯同することになった。  在野の霊媒師であるユタの血を引き継ぐタカコは霊との交信が可能で、秋葉の狙いは〝マクスウェルの悪魔〟の役割を霊に担わすことで軍のエネルギー源

          梗概練習

          寒気(3280字)

           毎日、仕事は五時に終わる。そこから二十分程歩いて季節労働者たちにあてがわれた寄宿舎へと戻る。蒸し暑い夏の夕暮れは、規則的で退屈な日々に対して余計なことを考えさせる。だが工場で働くことで俺は金を稼いでいるのであり、生きるということはそういうものであることはわかっていた。この数か月を終えて故郷に戻れば恋人にプロポーズする予定だ。指輪を買うのにも式を挙げるにも、とにかく生きるのには金がいる。それを稼ぐことは最低限の役目だ。  工場で何を作っているかはわからない。どの製造ラインに入

          寒気(3280字)