これがライトノベル風「走れメロス」……!『蒼穹のカルマ』感想
走れメロス。名作ですよね。
暴君の王様に楯突いた罪で処刑されることとなったメロス。受け入れるメロスであったが、彼には妹がいた。親友のセリヌンティウスを人質にすることを条件に、彼は3日で戻ってくることを王に伝え、妹の結婚式に出る。
結婚式が終わると同時に、彼は親友が待つ城へと走り続ける。すべては親友の代わりに殺されるために……。
といった内容なんですが。
これをライトノベル風にアレンジしたのが、本日紹介する橘公司先生のライトノベル『蒼穹のカルマ』(2009年1月刊行)な訳なんです。
ちなみに橘公司先生は、アニメにもなった作品『デート・ア・ライブ』の作者様でもあります。
これって、どんな話なの?
電子書籍サイト『BOOK☆WALKER』さんから、あらすじを引用します。
舞台は、空獣と呼ばれる怪物が支配している近未来的な世界です。彼らを資源として利用するため、「蒼穹圏騎士団」と呼ばれる団体が空獣を倒していきます。
その中でも、17歳でありながら圧倒的な実力を誇るのが、主人公である「鷹崎駆真」。どこかクールな彼女を中心に、物語は展開していくんですが。
まあ、そんな情報。序盤でぶっ飛びます。
ごった煮的な超展開の連続。
『走れメロス』では、山賊や濁流といった障害がメロスの前に現れます。それを乗り越え、メロスは走る訳なんですが。
この『蒼穹のカルマ』でも、障害というものはあります。
しかし、超展開的です。
いやいや待ってよ!? そんなことってアリなの!?
という展開が、このライトノベルには待っています。
「そんなの受け入れることができるの?」
「大丈夫なの!?」
大丈夫です。面白おかしく話を進めることができます。
だって、この作品。
ギャグであり、カオスなんだよね。
作者様が後書きで、この作品を「ごった煮」と表現している訳なのですが。
まったくもってその通りだと思います。
言ってしまえば、カオス(混沌)であり、まさしく何でもありなライトノベルとなっています。
混沌を引き受け、巷でよく言われるライトノベルらしさを見てみたいのなら、この作品はうってつけです。
ちなみに。
走れメロス的な展開になっていく、この作品。
セリヌンティウス的なポジションとして、彼女の姪っ子が出てくるんですが。
ぶっ飛んでるんです。
え、姪っ子が? 違う違う。
主人公が。
クールという設定の彼女なのに。まさか姪っ子のある行動に対して。
ジェノサイド
なんていう言葉を発するだなんて、思いもしませんでしたから。
そういった意味でも、主人公のキャラクターは、バッチリと立っていると思えます。
悪い意味でなく良い意味でね。
葛藤なんてしない! 前進あるのみ!!
そもそもメロスは、走っていて「ちゃんと」葛藤します。
私は、努力した。だから友人のことは諦めよう。
そんな感じで、途中で走ることをやめようとするのです。
それに比べ『蒼穹のカルマ』の主人公、駆真は葛藤なんてしません。
ある目的のために、ブレない。
そしてどこまでも、その目的のための行動に打って出る。
その行動がギャグ的に面白く、たまらないライトノベルとなっています。
ちなみに、私のお願いとしては。
この作品に至っては、軽い気持ちで読んでいただけると幸いだということを伝えておきます。
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