神田久幸/講師

講師。人間力育成、中国古典と組織の盛衰などをテーマに、企業・飲食店などを対象に研修を行…

神田久幸/講師

講師。人間力育成、中国古典と組織の盛衰などをテーマに、企業・飲食店などを対象に研修を行う。古典を題材にした著述活動も本格的に開始。 雑誌PRESIDENTおよびdancyuの元編集長。現在はメディアと関係なく、食事を楽しむ生活。

最近の記事

「切磋琢磨」。スキルや知識だけなく、「心を磨く」ことに真意あり―『論語』

「継続は力なり」につながる言葉  新人が職場に配属されるこの時期に、「継続は力なり」ということをスタッフに訴えたい。それにふさわしい『論語』の言葉を、研修でとりあげてもらえませんか。  企業のオーナーからのそんなリクエストに応じて、候補の言葉をいくつか挙げたところ、オーナーが選んできたのは、「切磋琢磨(せっさたくま)」でした。  現在では、互いに競い合って、技能やスキルなど高める意味で使われていますが、もともとは、学問や道徳、技芸などを磨き上げる「自己研鑽」を意味していま

    • お金やモノがなくても、人に喜びを与えることができる―禅「無財の七施」

      「無財の七施(むざいのななせ)」 法要のときにお寺さんに包む志、「お布施(ふせ)」と書かれた封筒に入れて、お渡しします。 「布施」。 ふだんはあまり使うことのない言葉ですが、「分け隔てなく施す」という意味で使われる仏教用語で、大きく分けて次の3つがある、とされています。 財施(ざいせ)……お金や衣食などの物資を必要とする人に与えること 法施(ほうせ)……相手の心に安らぎを与えること、精神面で尽くすこと 無畏施(むいせ)……恐怖や不安などを取り除いて、安心させること つい

      • 人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。賢人の知恵から考える3―荀子の「性悪説」

        第3回 『荀子』の「性悪説」について  なぜ人は不正をしてしまうのか。  それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。  企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。    古代中国の人間観、思想をおさらいすることで、組織において立場の弱い人が不正に加担してしまう理由を探るシリーズ。第3回。 「性善説」「性悪説」以前の考え方―孔子は理想の徳として「仁」を掲げたhttps:

        • 人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。賢人の知恵から考える2ー孟子の「性善説」

          なぜ人は不正をしてしまうのか。 それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。 企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。   古代中国の人間観、思想をおさらいすることで、組織において立場の弱い人が不正に加担してしまう理由を探るシリーズ。 「性善説」「性悪説」以前の考え方―孔子は理想の徳として「仁」を掲げた https://note.com/lively_murre111/

        「切磋琢磨」。スキルや知識だけなく、「心を磨く」ことに真意あり―『論語』

        • お金やモノがなくても、人に喜びを与えることができる―禅「無財の七施」

        • 人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。賢人の知恵から考える3―荀子の「性悪説」

        • 人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。賢人の知恵から考える2ー孟子の「性善説」

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。賢人の知恵から考える1ー孔子の「仁」

          なぜ人は良心に反して不正をしてしまうか なぜ人は不正をしてしまうのか。 それは、もって生まれた性質と、どう関係しているのか。 企業において、弱い立場にある社員が、組織的な圧力に屈して、自らの良心に反して、不正に加担してしまう。それを防ぐには、どうすればいいのか。 人は過ちやミスをするし、判断も間違えます。無意識にルールを破ってしまうこともあります。 一方で、ミスや誤りを修正し、間違いを犯さない方策を考えることができます。ルールを守るべく自己コントロールする能力も備えてい

          人はなぜ不正をするのか。止めることはできないのか。賢人の知恵から考える1ー孔子の「仁」

          息子、最愛の弟子の逝去。孔子を襲った晩年の悲劇と「従心」の境地―『論語』

          心の欲する所に従いて、矩を踰えず  自分の人生をどう振り返るのか。  20代、30代の道なかばだとしたら。  人生の勝負がついたかどうかというくらい、第3コーナーにさしかったところだとしたら。  第一線から身を退いき、次のステップへ移ったところだとしたら。  74歳で亡くなった孔子が、70歳の心境について語ったことばを、人生をどう振り返るのかの参考にしてみたい。  70歳になったときの境地はどうかって?   自分の思うままに行動しても、社会の規範から外れることがなくなっ

          息子、最愛の弟子の逝去。孔子を襲った晩年の悲劇と「従心」の境地―『論語』

          自分をどう磨けば、人間的に成長できるのか―禅「瓦を磨いて鏡となす」

          禅問答「瓦を磨いて鏡となす」。「南岳磨甎」とは  古典や人生哲学を読んで、人の生き方をアタマで理解しているときは、立派な人間になったように錯覚してしまうのですが、いざ自分を磨くとなると難しいです。 そんなことをある経営者の方と話をしていたら、そういうときには、自己修練とはどうあるべきなのか、ある禅問答を思い浮かべて、自分なりに答えが出るのを待つようにしている、とのことでした。 教えてもらったのが、瓦を磨いて鏡となす。「南岳磨甎(なんがくません)」として知られている

          自分をどう磨けば、人間的に成長できるのか―禅「瓦を磨いて鏡となす」

          他人のせいにしても、何も解決しない。自分の内なる声に素直に従う―『呻吟語』

          書が下手なのは、筆のせいでも、紙のせいでもない  失敗したときやモノゴトがうまくいかないとき、ついつい他人のせいにしてしまいます。政治や世の中がよくないからだ、と不満をぶちまけて、やり過ごすこともあります。  そこに一面の真理はあるにしても、正義をふりかざしたからといって、ましてや世の中のことをいくら憤っていても、問題は解決しません。  かえって、あの人はいつも正義漢ぶっているけど、不満をぶつけているだけで、やっていることは「自己中」だよねと、周りの目には写ってしまい、

          他人のせいにしても、何も解決しない。自分の内なる声に素直に従う―『呻吟語』

          「可もなく不可もなし」。不条理な世の中を生き抜く孔子のヒント―『論語』

          「可もなく不可もなく」の元々の意味 「特によくもないけど、悪くもないね」。 「普通だね、平凡だね」。  そういうニュアンスのときに、何気なくこういう言い方をしています。 「可もなく不可もなし」。  元々の意味は、現代のそれとはちょっと違っていました。  ルーツは『論語』です。  古代中国において、自分の意志を貫いて生きた人の生き方について、孔子が語った言葉から来ています。  世の中のもろもろのことが不条理なのは、いまも昔もかわりません。  古代の中国でも、現世に見切りを

          「可もなく不可もなし」。不条理な世の中を生き抜く孔子のヒント―『論語』

          もしイソップが「アリとキリギリス」風に『論語』のことばを読んだら

          「松柏の凋むに後るるを知る」の教訓 前回投稿した孔子のことば、「松柏の凋むに後るるを知る」の話の続きです。  春夏の季節には、樹木はすべて葉を茂らせているので、落葉樹と常緑樹も青々として、区別することはできない。寒くなると、落葉樹の中にまじっていた常緑樹である松柏の存在が、はっきりとわかる。 (それを同じように人間も、危険困難な情況になって、はじめて、その本性がはっきりするものである)。 イソップ寓話「アリとキリギリス」流に読み替えると  孔子のことばが肚落ちしにくい

          もしイソップが「アリとキリギリス」風に『論語』のことばを読んだら

          落葉樹タイプと常緑樹タイプ。人財をどう見極めて、育てるか―『論語』

          その人の本性がはっきりするとき 想定外のことが起こったとき、非常事態になったときに、どう行動するか。 それによって、人の真価がわかる、と言います。 想定外のことでなくとも、ゴールや目標の数値や期限が決まっている場合には、ふだんからの積み重ね、精進の度合いが、成果に反映されます。  たとえば――。  ビジネスにおいては、企画書の提出、コンペ、語学や資格試験の勉強など。 プライベートだと、ダイエットや体調管理、お金の管理・運用、ライフプランなど。 さて。 2500

          落葉樹タイプと常緑樹タイプ。人財をどう見極めて、育てるか―『論語』

          尊敬される人の条件。「知識」+「思いやり」+「品格」そして?―『論語』

          いいポジションで仕事を続けるには  自分は能力もあるし、仕事も人並み以上にこなしている。  まわりのことも考えて一生懸命にやっている。  それなのに、あまり尊敬されない。なぜか人望がない。  人の評価というものは、自己評価よりもえてして低くなる傾向がありますので、周囲の評価をあまり気にしない方がいいのかもしれません。  それでも、やはり人格者、信頼される人でありたい。  そう思い当たることがあったときに、人の上に立つ人、リーダーの条件を、孔子が三段論法で語っている一文を

          尊敬される人の条件。「知識」+「思いやり」+「品格」そして?―『論語』

          プラスになる人脈。ロスが多い人脈。賢い人は「つきあい上手」―『論語』

          語り合うに足りない人物と語り合うのは、言葉の浪費 「タイムパフォーマンス」重視。 会議や打ち合わせを効率的にやろう。こうして、タイムパフォーマンスを追求することが、日本の長年の課題であったサービスや知的作業の生産性を向上させるのでしょうか。  それならいいのですが、「タイムパフォーマンス」を言い訳に、割に合わない仕事や効率の悪い仕事は引き受けたくない。一見、個人の仕事の効率は上がったようにみえるけれど、自分の「タイムパフォーマンス」だけを追求する「タイムパフォーマー」集団

          プラスになる人脈。ロスが多い人脈。賢い人は「つきあい上手」―『論語』

          「受けた恩」と「施した恩」の収支決算。どうけじめをつけるか―『菜根譚』

          人にかけた迷惑は忘れてはならない 人に施した恩は忘れてしまったほうがよい。 だが、人にかけた迷惑は忘れてはならない。 人から受けた恩は忘れてはならない。 だが、人から受けた怨みは忘れてしまったほうがよい。  ついついの目先こと、自分の都合ばかり考えて、日々を過ごしがちです。 いろいろなことで、助けてもらったり、お願いごとをしたりしているのに、お世話になったことへの感謝の気持ちや御礼をついつい忘れがち。  中国古典の『菜根譚』に、人づきあいにおいて、忘れてよいことと、忘

          「受けた恩」と「施した恩」の収支決算。どうけじめをつけるか―『菜根譚』

          助け合う組織か、成果重視の組織か。人間関係で大事なこととは―『論語』

          「周(あまね)うして、比(ひ)せず」  数年に及ぶコロナ禍を体験して、人づきあいのありようが、かなり変容してしまいました。  仕事における望ましい人間関係とは、どういうものをいうのでしょうか。  相手先(クライアント)、仕事の発注先の場合は?  チーム内や社内の他部署との場合は?   リアルとオンライン(ネット)で関係性の違いは?  2500年以上前に、孔子が人間関係の本質について語っているので、それを参考に人づきあいついて考えてみるのも、いいのかもしれません。

          助け合う組織か、成果重視の組織か。人間関係で大事なこととは―『論語』

          相手の機嫌を損ねないコミュニケーションルール3つ―『論語』

          「忖度」「空気を読む」社会で失敗しないために 「忖度(そんたく)」という言葉が、一時流行りました。 「空気を読む」を裏返した「空気が読めない」KYも、コミュニケーションスキル、意思決定の問題として、しばらくフィーチャーされたことがありました。  日本のビジネス社会で、うまくやっていくには、いまでもアタマにいれておいたほうがいいテーマです。   目上の人や権力者の胸の内を推し量るのは、なかなかに難しいものです。まして初対面となると、推し量るときに、自分のフィルターや思惑が入

          相手の機嫌を損ねないコミュニケーションルール3つ―『論語』