神田久幸/講師

講師。人間力育成、中国古典と組織の盛衰などをテーマに、企業・飲食店などを対象に研修を行…

神田久幸/講師

講師。人間力育成、中国古典と組織の盛衰などをテーマに、企業・飲食店などを対象に研修を行う。古典を題材にした著述活動も本格的に開始。 雑誌PRESIDENTおよびdancyuの元編集長。現在はメディアと関係なく、食事を楽しむ生活。

最近の記事

大河の流れに学ぶ、強い組織の作り方、人の育て方―『論語』

孔子の言葉を巡る2つの解釈  中国古典などをもとに、企業などで人間力の研修をしていて、言葉の意味するところを、仕事や人生の実践を結びつけて考えることで、気づきを得てもらうという進め方をしています。  講師である私の解釈、理解をベースに、ビジネスに展開するやり方で研修を進めるわけですが、ときとして、受講者の方たちが日ごろの仕事を通して、独自に理解し、実践に生かしていることのほうが、真の学びなのだと、思い知らされることがあります。  その一例を、『論語』の次の言葉をもとに紹

    • お金もモノもあの世へ持っていけない。持っていけるのは、心だけ―『呻吟語』

      あの世へは一つとして物を身につけていくことはできない  いくつになっても、夢をかなえるための準備と努力にエネルギーを傾けたい。そのためには、カラダのメンテナンスは欠かせない。数年前から始めたヨガのレッスンは、これからも続けていく。「人間力」講師の仕事も、研鑽を積んで、もっと世の中に貢献していきたい。  50代の頃にはココロもカラダもかなり傷ついていました。このまま人生が萎んで、終わってしまうのではないか。  そんな心境になったこと思うと、老いの波を止めることはできないけれ

      • 風が吹けば草はなびく。徳のあるリーダーとスタッフの理想の関係―『論語』

        北風(ムチ)型がいいのか、太陽(アメ)型がいいのか  組織をマネジメントするときに、よく次のように例えられます。  厳しい「北風」(ムチ)型でマネジメントするのか。  優しい「太陽」(アメ)型でマネジメントするのか。  パワーハラスメントが問題視されていることもあり、「北風」(ムチ)型のマネジメントは敬遠される傾向にあります。しかし、非常事態や戦時、あるいは組織が危機的状況にあるときには、「北風」型のマネジメントで乗り切るしかありません。温情主義で、事業の見直し、人員の

        • 克己復礼。一日でもいい、自分の都合ではなく、他人のために生きる―『論語』

          自分の都合≧他人の都合 の生き方をしていませんか 人は自分の都合を第一に考えて生きています。 そう断定してはいけないのかな?  わが身を振り返ってみると、自分の都合を最優先にして生きていることが多いです。  数式にすると、 自分の都合≧他人の都合  それに対して、公私ともに、他人のために尽くす、自己犠牲、献身的な生き方をしている人も少なくありません。数式にすると 自分の都合≦他人の都合  そんなことを考えながら、『論語』を読んでいて、目に留まったのが、弟子の顔淵(

        大河の流れに学ぶ、強い組織の作り方、人の育て方―『論語』

          人格が主人で、才能は召使い。できる人は才能をひけらかさない―『菜根譚』

          肝に銘じたい言葉「才能をひけらかすな」 経営者の方々と『菜根譚』の読書会をしているときに、肝に銘じている言葉として挙がった言葉の1つが、「才能をひけらかすな」でした。 リーダーシップを発揮し、アグレッシブに経営をしている方に、その傾向が強かったのが印象的でした。 『菜根譚』で、は心構えについて、次のように触れています。  鷹のたたずんでいる姿は眠っているように見えるし、虎の歩いている姿はまるで病人のようである。だがそれは、人におどりかかろうとする前触れにすぎない。  

          人格が主人で、才能は召使い。できる人は才能をひけらかさない―『菜根譚』

          投げやりになったらお終い。挽回のチャンスはやってくる―『春秋左氏伝』

          人生がうまくいかないときに、どうすればいいのか 昇進、昇格の選抜から外れた。希望の部署に配属されなかった。トラブルに巻き込まれた……うまくいかないときや不遇のときに、成功している人、輝いている人が羨ましい。恨めしく思えて仕方がない。 自分なりに努力をしてきたのに、能力も実績もひけをとらないのに……自分だけがどうして不運な目にあうのだ。そういう思いが込み上げてくればくるほど、ふて腐れたり、なげやりになりがちです。 世の中や周りのことを恨んでみても、なにも解決しないのはわか

          投げやりになったらお終い。挽回のチャンスはやってくる―『春秋左氏伝』

          家族を守るのか、法に従うのか。正直に生きるとは?―『論語』

          バカ正直に生きることがベストの選択なのか 正直者とはどういう人のことを言うのでしょうか。 その基準は、時代背景や社会のあり方、宗教観などによっても、かわってきます。  朝ドラ「虎に翼」では、第2次大戦後の食糧難のときに、闇米には一切手を出さず、栄養失調となり、ついには肺浸潤で33歳の若さで亡くなった判事の逸話をモデルにしたエピソードが、最近放映されていました。  闇米等を所持していて食糧管理法違反で検挙、起訴された被告人の事案を担当していた判事は、職務に忠実に法を順守し

          家族を守るのか、法に従うのか。正直に生きるとは?―『論語』

          六言六蔽。優れた人徳が備わっているのに、結果がついてこないのはなぜか―『論語』

          人の役に立ちたい。 困っている人を助けたい。 世の中に貢献したい。 強きをくじき、弱きを助けたい。 どんなに正義漢が強く、どんなに人徳に厚くても、それをうまくいかせないことがあります。 それは、自分の能力を自在にコントロールする知恵や術が備わっていないから、ということが多いのではないでしょうか。 あるいは、経験が足りないのに、頭でっかちで意識だけ先走ってしまう。結果、パフォーマンスを存分に発揮できずに不完全燃焼で終わってしまう。 そうなると、本人の意欲は高いのに、それに反

          六言六蔽。優れた人徳が備わっているのに、結果がついてこないのはなぜか―『論語』

          「恕」。自分を愛せない人は、他人も愛せない、優しくできない―『論語』

          己の欲せざる所は、人に施すなかれ 見知らぬ人が交通事故に遭いそうになったら、あるいは、水難事故でおぼれかけていたら、自分の命を投げだしてでも助けようとする。自己犠牲をもいとわない、人をいたわる気持ちが、人間には生まれながらにして備わっているのです。 そういう心情を日々磨いて、実践に移していくことが、人として踏み行うべき道です。 中小企業再生の名経営者と言われた方が、相手を思いやる「恕(じょ)」とはどういうことか、このように解説してくだったことがありまし。 相手を思いやる

          「恕」。自分を愛せない人は、他人も愛せない、優しくできない―『論語』

          生涯をかけて追求したいことを見つけよう。あきらめてはいけない―『論語』

          朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり 仕事でもいい、ライフワークでもいい。 生涯をかけて追求したいことがはっきりしたら、どうしますか?  その達成に向けて精力を傾ける。  あるいは、実現のための環境づくりをする。  いずれにしても、前向きのアクションを取りますよね。  そういう励ましの言葉として受け止めたいのが、『論語』で孔子が述べているこの言葉です。ただ、古来、受け止め方は人によって違うので、そのことも含めて、みていきましょう。  よく知られている『論語』の名言

          生涯をかけて追求したいことを見つけよう。あきらめてはいけない―『論語』

          秀才型の新人リーダーに孔子が授けたマネジメントの極意とは―『論語』

          新人マネジャーの心得とは  誰でも初めて責任ある職位に就いたときには、どう人をマネジメントするか、どう組織やチームを率いるか、経験がないだけに、戸惑うものです。  もちろん、マネジャー向けのテキストなどが刊行されていますし、企業においては新人管理職研修なども行われているので、予備知識を仕入れて、それなりに心構えもできるかもしれません。  ただ、いざ実践となると、座学で得た知識のようにはいきません。人の心を掴むこと、チームを成長へと導いていくやり方は、一様ではないからです。

          秀才型の新人リーダーに孔子が授けたマネジメントの極意とは―『論語』

          孔子の時代の女性差別が、「虎に翼」の時代にまで及んだ黒歴史をたどる。 

          『大戴礼記』にみる女性に課された礼の定め   孔子の「女子と小人とは養い難し」の話の続きです。 「女性蔑視は世界的なものですよね。なぜ男性は女性蔑視をしたのでしょうね」。 というコメントをいただき、多少やりとりをしましたが、それに対する適切な答えは、いまだにみつかっていません。  ここでは、孔子が生きた2500年以上前の古代中国、春秋時代において、女性の社会的地位はどうだったのか。 当時のことを知る術はありませんが、孔子が生きた時代よりも後、漢代の儒者・戴徳(たいとく)

          孔子の時代の女性差別が、「虎に翼」の時代にまで及んだ黒歴史をたどる。 

          知らないことは、知りませんといえる。そういう人こそ信頼される―『論語』

          受け売りではなく、自分の言葉で話そう  知ったかぶりはしないほうがいい。  けれど、 立場上、あるいはビジネスを進めるときに、「そのことは知りません」といえないときもあります。  年下や部下からそんなことも知らないんだ、と見下されたくない、という心理が働くときもそうかもしれません。  ネットで検索すれば、おおよその情報や知識は瞬時に手に入る時代。一方で、日々流れていく情報をおいかけてもおいかけきれません。その大半はすぐに消えてしまう。  なので、私のように、ビジネスの第一

          知らないことは、知りませんといえる。そういう人こそ信頼される―『論語』

          過ぎてしまったことは、とがめても仕方がない。最善の解決策を探る―『論語』

          成事(せいじ)は説かず、遂事(すいじ)は諫めず  スタッフが、アドバイスしたことに耳を傾けずに、自分の考えでやってしまい、結果うまくいかなかった。  あるいは、事前に相談もなく、独断でやってしまい、相手先とトラブルを起こしてしまった。  あなたにとっても無傷ではありません、損害や信用にかかわる状況となったときに、当事者にどう対応しますか?  そうした「困ったちゃん」に、孔子がアタマを悩ませていた話が『論語』に出てきます。その口ぶりは、孔子の嘆きとも受け取れるほどです。

          過ぎてしまったことは、とがめても仕方がない。最善の解決策を探る―『論語』

          「自分が正しい」にこだわりすぎる。それの何がいけないのか―『呻吟語』

          人の一生の大なる罪過は、「自是自私」の四字に在り  これまでの人生、いろいろと失敗や間違いをし、それなりに反省をしてきた。そのつもりでいました。  しかし、まだまだ思慮も経験も浅い。そう思わされたのが、中国・明代の呂 坤(呂 新吾)『呻吟語(しんぎんご)』の言葉に触れたときです。 「自是自私」(じぜじし)。  耳慣れない言葉ということと、常にこの過ちを犯す可能性があるということで、とても身につまされる思いをしました。 「人の一生の大なる罪過は、只だ「自是自私」の四字に在り

          「自分が正しい」にこだわりすぎる。それの何がいけないのか―『呻吟語』

          答えをすべて教えない。自ら考えることで人は育つ。孔子の人材育成法―『論語』

          「挙一反三」の教えとは 「啓発」という言葉の由来になった、孔子の人材育成に関する話の続きです。 と述べた孔子の学ぶ姿勢への激烈な思いは、さらに続きます。 その意味は、 一つの隅を示しただけで、他の三つの隅にも鋭く類推を働かせるようでなかったら、それ以上の指導は差し控える(教えない)。 ということです。  一隅を挙げて三隅を以って反すは、次の四字熟語で知られています。  「挙一反三(きょいちはんさん)」 または 「一挙三反(いっきょさんはん)」  また、「挙隅(きょぐ

          答えをすべて教えない。自ら考えることで人は育つ。孔子の人材育成法―『論語』