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児童・生徒指導㊼「生徒指導提要」から考える その1(定義と目的)

今回は「生徒指導提要」を読んで、考察をしてみたいと思います。あくまでも、読んで感じたことや考えたことなどの、個人の一見解です。また、読み進めながら書いていくため、全体像を見通した内容になっていなかったり、解釈の仕方が変わっていったりする可能性もあります。

まず生徒指導の定義として、

生徒指導とは、児童生徒が、社会の中で自分らしく生きることができる存在へと、 自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のことである。なお、生徒指導上の課題に対応するために、必要に応じて指導や援助を行う。

文部科学省「生徒指導提要」

と説明されています。そして、生徒指導の目的として、

生徒指導は、児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長と社会的資質・ 能力の発達を支えると同時に、自己の幸福追求と社会に受け入れられる自己実現 を支えることを目的とする。

文部科学省「生徒指導提要」

と説明されています。

ここから、「生徒指導」とは、子どもが自分らしく生きていこうと自発的・主体的に行動できるようにするために支える教育活動全体を指すことが分かります。私たちは「指導」という言葉のイメージだけで、「不適切な行為を叱る」「ルールやマナー等、ピンポイントの事柄に対して指摘し、改善させる」などのように、狭い範囲で生徒指導を捉えていることがあります。生徒指導の先生と言えば「こわい先生」というようなイメージがついているのもそのためかと思いました。

目的においては、「個性の発見」「可能性の伸長」「社会的資質・能力の発達」と、「自己の幸福追求」「社会に受け入れられる自己実現」と述べられていて、前者が比較的個人内で高めていくことのできる第一段階としての目的であり、後者が社会や他者との関わりが重要になってくる第二段階(より大きめな)の目的なのかと考えました。前者については、日頃の子どもたちへの働きかけにおいて、比較的イメージしやすい指導の在り方かと感じます。後者については、常にイメージしながら指導に当たることは少ないかと思いますが、一つ一つの個別具体的な指導がよいかたちで積み重なっていった結果として表れてくるのではないかと思います。

また、目的についての説明の中に、

児童生徒が、深い自己理解に基づき、「何をしたいのか」、「何をす るべきか」、主体的に問題や課題を発見し、自己の目標を選択・設定して、この目標の達成のため、自発的、自律的、かつ、他者の主体性を尊重しながら、自らの行動を決断し、 実行する力、すなわち、「自己指導能力」を獲得することが目指されます。

文部科学省「生徒指導提要」

とも記載されています。ここでは、「自己指導能力」の大切さが述べられています。①自己理解、②問題・課題の発見、③目標の選択・設定、④行動の決断、⑤実行、という過程をたどることができる力とされています。これは、PDCAサイクル等にもあるような成長や改善を行いながら自己を高めていくために重要な過程であると思います。

そして、個人的にこの部分で重要であると思ったのは、「自発的、自律的、かつ、他者の主体性を尊重しながら」という部分です。「自己の幸福追求」と「自己実現」は確かに達成できれば自分は幸せになることができます。しかし、同じように生きている他者をないがしろにすることは、結果的に社会の幸福にはつながらず、自分の幸福を脅かすことにもつながるかもしれません。そこで、「他者の主体性を尊重しながら」ということが必要になってくるのだと思います。(「『社会に受け入れられる』自己実現」と述べられているのもそのためかもしれません)

前回「『ごめんね』『いいよ』のやりとりから考える」という記事を書きました。

この中でも述べたのですが、「謝ったんだからゆるすべきだ」とか「当然『ごめんね』と言うべきだ」のような、自分中心の考え方だけでは他者との関係はうまくいかないと感じます。相手には相手の感じ方があり、相手にも自分と同じような主体性がある。自分を押し通すことだけでは、相手の主体性は尊重されなくなってしまう。互いに歩み寄って合意形成を図ったり、折衷案を生み出したりすることが必要な場面は必ず出てきます。他者の尊重という視点を忘れることなく、自分も尊重して、自己実現・幸福追求に向かっていけるようにするために行うことが「生徒指導」であるのかと考えました。


ここまでお読みいただきありがとうございました。