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★児童・生徒指導52★生徒指導提要から考える その6(児童生徒理解)

今回も「生徒指導提要」を読んで、考察をしてみたいと思います。あくまでも、読んで感じたことや考えたことなどの、個人の一見解です。また、読み進めながら書いていくため、全体像を見通した内容になっていなかったり、解釈の仕方が変わっていったりする可能性もあります。

生徒指導の方法として、「児童生徒理解」「集団指導と個別指導」「ガイダンスとカウンセリング」「チーム支援による組織的対応」の4つが挙げられています。

今回は、「児童生徒理解」について考えをまとめていきます。

「児童生徒理解」のポイントとしては、

(1) 複雑な心理・人間関係の理解
(2) 観察力と専門的・客観的・共感的理解
(3) 児童生徒、保護者と教職員の相互理解の重要性

文部科学省「生徒指導提要」P23,24

が説明されています。

(1)(2)では、重要なこととして、子どもたちの心理面と人間関係を理解することが挙げられていて、その他にも様々な諸側面から総合的に理解をすることが大切であると述べられています。

そして、(3)では、児童生徒、保護者と教職員がお互いに理解を深めることの重要性が説明されていて、

児童生徒や保護者が、教職員に対して、信頼感を抱かず、心を閉ざした状態では、広く深い児童生徒理解はできません。児童生徒や保護者に対して、教職員が 積極的に、生徒指導の方針や意味などについて伝え、発信して、教職員や学校側の考えについての理解を図る必要があります。

文部科学省「生徒指導提要」P24

と述べられています。

児童生徒理解は、子どもたちに向き合う中で最も難しいことの1つではないでしょうか。「あの子が何を考えているのか分からない」「どうしてあのようなことをするのか」と悩むことは多くの先生が経験したことのあることだと思います。重大な問題行動でなくても、「いつもと様子がちがうな」と感じ、コミュニケーションをとってみたものの、「大丈夫」「何もない」という返事が返ってくることもあります。児童生徒理解は、生徒指導において重要なことではありますが、完全に相手を理解することなどできないとも思います。当然、どれだけ親しい間柄であるとしても、自分とは異なる人間を完全に理解するなどということはできません(そもそも「自分」という人間のことでさえ完全に理解などしていません)。まず、ここに立って、「自分はあの子のことはよく分かっているから」という思い込みをもたないようにすることが重要であると思います。

だからといって、児童生徒理解に努めなくてよいわけではありません。(1)の説明にもあるように、スマートフォンやインターネットなどのツールを活用し、教職員や保護者の目の行き届かないところで、子どもたちが他者とつながり、コミュニケーションをとっているということが多くなってきました。以前は、学校にいるときだけ、人間関係に注意していれば何とかなったことも、今はそうはいかず、親も知らないところで、事が悪い方向に進んでいたということもあります。

日々のコミュニケーションを大切にすることや、様々な手法でその子の興味関心や打ち込んでいることなどを把握することなど、児童生徒理解のために重要なことはたくさんあると思いますが、私自身が特に重要だと思うことがあります。

思考の傾向や価値観を理解することに努める


興味関心や特技、習い事、人間関係などを理解することは言うまでもなく大切なことです。それに加えて大切なことは、その子の思考の傾向や価値観を理解することだと思っています。

「ポジティブか、ネガティブか」「受容的か、排他的か」「自分中心か、他者中心か」など、同一のある物事を目の前にしたときにも、どのように感じるかという思考の傾向があります。ある子にとっては、大したことのないことであっても、ある子にとっては、非常に重要なことでることもあります。例えば、「今日は宿題がない」ということに対してどのように感じるかもその子によって違います。

特に、人間関係においては、その子が基本的に何を重要視しているのかという価値観や思考の傾向を知ることは、トラブルが起こった際の話合いの場などにおいて非常に重要になります。例えば、「納得していないのに、自分の感情を押し殺してしまう傾向があるから、本当のことを言えずにいるのかもしれない」とか「あまり物事を深く考えずに、ポジティブな思考で前に進んでいく傾向があるから、まだ相手の痛みをよく感じ取れていないかもしれない」など、価値観や思考の傾向を知っておくことで、教師がもう一歩話を踏み込むきっかけを生み出すことになります。

授業の中の発言や取組の様子、日常の会話などは、特にその子の思考の傾向や価値観が表れる部分であると思います。

ただし、思考の傾向や価値観は、「ポジティブか、ネガティブか」「受容的か、排他的か」「自分中心か、他者中心か」など、どちらか一方に分類できるものではありません。二項対立のどちらか一方に完全に分類できるようなものこそ、少ないのではないでしょうか。「この子は、ポジティブな子」などと確定しているかのようにレッテルを貼ってしまっては、それは生徒指導上の有効な視点になるどころか、間違った判断につながってしまう可能性があります。どれだけ接する機会が増えていっても、その子の思考の傾向や価値観、興味関心などにおいて、新たな発見はあるものだと感じます。先に述べたように、「自分はあの子のことはよく分かっているから」「あの子は、こういう子だから」という思い込みをしないようにすることが児童生徒理解においては、非常に重要なのではないでしょうか。

また、思考の傾向や価値観、興味関心などは、相手が開示してくれたことで、自分も話しやすくなるということもあるのではないでしょうか。教師が、押し付けるわけではなく、自分の考えを子どもたちや保護者に開示することで、相互の理解が深まると思います。


ここまでお読みいただきありがとうございました。