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★児童・生徒指導53★生徒指導提要から考える その7(集団指導と個別指導)

今回も「生徒指導提要」を読んで、考察をしてみたいと思います。あくまでも、読んで感じたことや考えたことなどの、個人の一見解です。また、読み進めながら書いていくため、全体像を見通した内容になっていなかったり、解釈の仕方が変わっていったりする可能性もあります。

前回に引き続き、生徒指導の方法について見ていきます。生徒指導の方法として、「児童生徒理解」「集団指導と個別指導」「ガイダンスとカウンセリング」「チーム支援による組織的対応」の4つが挙げられています。

今回は、「集団指導と個別指導」について考えをまとめていきます。

「集団指導」について

「集団指導」では、

社会の一員としての自覚と責任、他者との協調性、集団の目標達成に貢献する態度の育成を図ります。

文部科学省「生徒指導提要」P25

と説明されています。そして、望ましい集団作りのポイントとして、

① 安心して生活できる
② 個性を発揮できる
③ 自己決定の機会を持てる
④ 集団に貢献できる役割を持てる
⑤ 達成感・成就感を持つことができる
⑥ 集団での存在感を実感できる
⑦ 他の児童生徒と好ましい人間関係を築ける
⑧ 自己肯定感・自己有用感を培うことができる
⑨ 自己実現の喜びを味わうことができる

文部科学省「生徒指導提要」P25

が挙げられています。

これらの9つのポイントを見ると、「生徒指導の実践上の視点」で述べられていた部分と重なるところが多くあります。実践上の視点は、「自己存在感」「共感的な人間関係」「自己決定」「安全安心な風土」の4点でした。

私自身の考えとしては、この9つの中にも構築されていく順番があり、抽象度のレベル差もあると思っています。

集団に流れる雰囲気・風土として構築されていなければならないのは、①の「安心」というところだと思います。そして、「生徒指導の実践上の視点」の記事でも述べたように、他者との共感的なやりとりを行っていくことで、③の自己決定をしようという意欲につながる。自分自身で自己決定できることが、⑥の自己存在感を得ることにつながり、①の安心できる学級の風土が構築されていくのではないか、という考えでした。

この流れの中で、②の個性の発揮、④集団に貢献できる役割、⑤達成感・成就感、⑦他の児童生徒との望ましい人間関係、⑧自己肯定感・自己有用感、⑨自己実現というポイントも達成されていくのではないかと感じます。

レベル差という意味では、①の「安心」と⑨の「自己実現」は、他のものよりも少し抽象度の高いものであり、他の要素が満たされていることで最終的に成り立つものであるかと考えます。

さて、「集団」で学ぶ意義が薄れてきたり、「集団」に同調することや順応することへの是非が議論されたりするなど、伝統的な学校の在り方が問われる時代になっていると感じます。

集団での学び・生活・意識の形成などについては、もちろんデメリットもあると思います。(しかし、私自身が勉強不足なため、まだ意見を発信するに至れません)それらの点を踏まえた上で、それでもまだ集団で学び・生活し・その中で様々な意識が形成されていくという環境が続くのであれば、子どもたちにとってメリットのある場をつくっていく必要があるのだと思います。

「個別指導」について

「個別指導」では、

個別指導には、集団から離れて行う指導と、集団指導の場面においても個に配慮することの二つの概念があります。 授業など集団で一斉に活動をしている場合において、個別の児童生徒の状況に応じて配慮することも個別指導と捉えられます。また、集団に適応できない場合など、課題への対応を求める場合には、集団から離れて行う個別指導の方がより効果的に児童生徒の力を伸ばす場合も少なくありません。

文部科学省「生徒指導提要」P25

と説明されています。

私自身の感覚ですが、「個別指導」と聞くと、個別に取り出された子どもに対して、一対一(または、一対少数)で行うというイメージをもつ方は多いのではないでしょうか。この「集団から離れて行う個別指導」の重要性は言うまでもありません。

経験上でも「集団から離れて行う個別指導」を行わずに、よい学級の風土を構築できたことはないと感じますし、やはりひとりひとりとの対話の時間には大きな力があると思います。

そして、「集団指導の場面においても個に配慮する」という個別指導の在り方は、これからの学びにおいて欠かせない教師の技能になると思います。「個別最適な学び」等でも述べられているように、集団の中でひとりひとりとの子どもたちがどんな学びをしているのか把握し、適切な働きかけを行うことは欠かせない教師の役割になっていきます。

また、学習中以外にも、様々な場面で、集団の中にいるひとりひとりの子どもの心情がどのような状態にあるかを把握することに努め、必要に応じて適切な働きかけを行うことは学級経営上重要だと考えています。

集団の中では、個人が埋もれてしまったり、集団に合わせて自分の思いを隠そうとする意識が働いたりするのではないかと思っています。

前者は、森を見て木を見ず(実在しない言葉ですが、「木を見て森を見ず」の逆の意味として用いています)のような状態になってしまい、全体ばかりに目が行ってしまい、ひとりひとりの子どもを見る視点が欠けてしまうということです。

後者は、集団の中では少なからず、多数の意見や雰囲気が生まれ、そこに同調する必要性を感じ(無意識下で行っていることもあると思います)、自分の気持ちを表現したり、意見を述べたりすることをしない選択をする子が出てくるということです。つまり、嫌な気持ちを抱えたまま、それを表に出さない子どももいるため、その違和感に気付こうとする意識が必要になるということです。


「集団指導」と「個別指導」は互いに関連し合っていくものだと思います。適切な集団指導が、よりよい個を育て、適切な個別指導が、よりよい集団を形成していく。その積み重ねではないでしょうか。
ここまでお読みいただきありがとうございました。