岡崎体育と私【音楽コラム】
2017年。
私は奈良で、独りぼっちで暮らしていた。
仕事から帰ってきては、You Tubeを見ながら一人で酒を飲み、酔っぱらって深夜に眠るだけの生活。
そんな中で、「彼」の音楽と出会った。
久しぶりに実家帰るかな
奈良線のホームは何処だっけ
無意識にまたPSPを
起動しレベルを上げてしまうぜ
(上げたら上げたで寂しくなんぜ)
「鴨川等間隔」
出かけるんなら大久保のファミマでエクレア買ってきて
財布は電話の横に置いてあるし
今でも誰かに憧れてる
敷布団の上真似してる
想像上のステージと 想像上のオーディエンス
やれるとこまでやろう
「エクレア」
You Tubeの画面の中の「彼」は、仏頂面で近鉄奈良線へ乗り込み、
奈良市のライブハウス「NEVERLAND」へ向かっていた。
道中、一言もしゃべらない。
私と彼は、同じ電車に乗っていた。
そして同じように孤独で、仏頂面だった。
が、小さなライブハウスのステージの上にいる「彼」は違っていた。
「Okazaki Physical Education」なる曲を一人で歌い、踊る。
「こんなに面白い人間、見たことない」と、
私は寄生獣に脳みそを乗っ取られた人みたいに思った。
「彼」とは、京都府宇治市生まれの、
岡亮聡(おかあきとし)くんのことだ。
ああ、本名で呼ぶ鬱陶しいファンだが?
彼は意外とラップがうまい。
冷蔵庫に貼ってあるおかんのメモを英語風に読むみたいなショート動画がバズッてたけど、アクセントがEMINEMまんまだよね。
そういうとこもいい。
2019年。
私は結婚し、新婚旅行で東京へ行った。
東京スカイツリーのふもとのホテルに宿を取った。
何日めかに、そこから埼玉県まで足を伸ばした。
大宮まで。
さいたまスーパーアリーナまで。
6月9日。
岡崎体育の、さいたまスーパーアリーナ公演があった。
ただのライブではない。
彼が夢として公言し、初期の代表曲「explain」で、
「いつかはさいたまスーパーアリーナで
口パクやってやるんだ絶対」と歌っていた、
あのさいたまスーパーアリーナだ。
私は「岡くんおめでとー」と声をかけた。
その前をトロッコに乗って、
「てゆうか 誰一人聞いたことのない曲で
トロッコ周んな~」と歌いながら、
彼は通り過ぎていった。
私と彼の孤独は、こうして終わった。
今の「彼」は、どちらかと言えば役者になっている。
マクドのCMでキムタクと共演したら、そらもう役者だ。
大河ドラマで鳥居強右衛門役をやったら(略)
あとは、アニメの曲を提供するくらいになっている。
そりゃ、前からポケモンとかおはスタはやってたよ。
たまアリにもお父さんに連れられた子どもがいて、
「えーポケモン少ないー」とかごねてたよ。
でもね、「彼」の本質はそこじゃないと思ってるんだ。
ちなみに「MUSIC VIDEO」や「感情のピクセル」が全てでもないと
思ってるよ。
フラワーカンパニーズの「深夜高速」をカバーしていたけれど、
裏を返せば、もう自分では、ああいう切実な曲は作れない、
ってことなんだろうと思った。
作る必要もないよ。
孤独じゃないからね。
2017年。
寂しかったけど、今思えば楽しかったな。
岡くんの音楽を聴いて、一人で酔っ払って、泣くことができたからね。
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