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その2 本当にそれは「発達障害」なのか?

神経発達症(発達障害)に関する、現時点での自分の捉え方をまとめてみました。私の頭の中を整理するためのものであり、仮の視点を置いたものです。間違った情報があったらすみません。


いくつかの書籍を読んで、「神経発達症(発達障害)」という脳の機能障害と、環境因子との関係性をどう捉えればいいのかが難しいなぁと思いました。

医師の診断は厳密に行われるとして、その症状(特性)の、何割が遺伝的な要因で、何割が環境的な要因で起こっているのかは、一般的な視点からは、皆目わからなくなると思います。

例えば、
「こどものトラウマがよくわかる本」 白川美也子 講談社 2020年 p28,29には、トラウマの影響による症状と発達障害の特性による症状において、重複する症状として、

「集中困難や学習困難、気が散りやすい、聞いていないかのように見える、混乱、多動、落ち着きがない、睡眠の問題」
などがあると記載されています。

私の経験則では納得感があり、「発達障害の特性」と「トラウマの影響」が折り重なって症状が起きているのではないかと思うことがよくあります。
神経発達症(発達障害)の特性による育てにくさや、教育のしづらさによって、叱責や注意、あるいは虐待(兄弟と比較、ネグレクト、存在否定等々)が起こり、元々の特性+トラウマが重なって、各種の症状(特性)や問題行動と言われるものがより顕著な形で起こっている印象を私は受けます。


また、『「発達障害」と間違われる子どもたち』成田奈緒子著 青春出版 2023年 P59には、自閉スペクトラム症の特性である感覚過敏に関して、

「緊張やストレスが多いと、一時的に子どもの頭の中で音が増幅するこがあります。」「内耳に入ってきた音は、ストレスが高いと増幅し、過剰に脳の中に響きます。」「つまり、ストレスや不安が強ければ、前頭葉で音を認知するときに、その音を実際に聞こえている音よりも大きな音として認知することがあるのです。」

と書かれています。

つまり、自閉スペクトラム症でなくとも、ストレスによって音に対する感覚過敏は起こりますし、元々音への感覚過敏のある自閉スペクトラム症の方がストレスを抱えた場合、さらに音が大きく聞こえてしまい、耐えられない状況が生まれてしまうのではないかと思いました。


また、『自閉症革命』マーサ・ハーバード、カレン・ワインとローブ 訳白木孝二 星和書店 2019年のP16~17には、

要約すると、コミュニケーション、社会的交流、行動の柔軟性などは、すべて、多くの脳領域の調整活動が不可欠だが、自閉スペクトラム症では、脳の大きな領域同士の接続性が弱くなっていており、ストレスによるノイズとカオスはその接続のための信号を、さらにかき消してしまうというようなことが書かれていると思います。 

環境要因によって、自閉スペクトラム症の人が、さらにコミュニケーション、社会的交流、行動の柔軟性が難しくなるということが書かれていると私は理解しました。


そして『発達障害からニューロダイバシティへ~ポリヴェーガル理論で解き明かす子どもの心と行動』 モナ・デラフーク著/花丘ちぐさ訳 春秋社2022年のP286には、

「ニューロダイバシティを持つ人々の行動には、不適応だというレッテルを張られた人が行う「複雑な調整と適応」が含まれます。これは、人が自分の状況を楽にするために行う調整や適応のことです。」

と書かれています。これの意味するところは、健常者の基準に適応させようとすることによって起こるストレスに適応するために、「じっと窓の外を眺めたり」「指を鳴らし続ける行動が増える」など、一見自閉スペクトラムに特有の行動が起こったり、増えたりするとのことです。

定型発達の人の基準に合わせようと本人に働きかけた際に、ストレスが発生し、それに適応するために、自閉症の特性となる行動が現れたり、それが増加することもあると私は理解しました。


ということで、「神経発達症」の特性や症状を考える時に、環境がもたらすストレス要因が密接に関わっていると思います。

上記の書籍の中には、環境要因をうまく取り除いたことによって、ほとんど症状(特性)が解消された事例も色々と記載されていました。

もしかすると、その症状(特性)の現れ方は、遺伝特性による影響が1割くらいで、環境の影響が9割くらいの場合もあるし、逆に環境の影響が1割で、遺伝特性による影響が9割だったり、それぞれが5割くらいで重なり合っている場合もあるし、とにかく色々な場合が考えられると思いました。

ですので、ある特性や症状がある場合、まず環境的な要因をアセスメントして、改善の余地がないか検討し、それと同時に、遺伝特性の可能性も踏まえた支援が必要になると思いました。

環境的なアセスメントをする場合のポイントもたくさんあると思います。書籍によってウエイトの置き方が違っていますが、およそこんな感じでしょうか?

『こどものトラウマがよくわかる本』…トラウマ(広い意味での心のキズも含めて)

『「発達障害」と間違われる子どもたち』…睡眠等の生活習慣、親の関わり方など

『自閉症革命』…食事(砂糖、グルテン等々)、有害物質(化学物質、アレルギー物質等)、微生物(細菌、ウィルス、腸内環境等)、ストレスなど

『「発達障害からニューロダイバシティへ』…周りの人(養育者や支援者)の関わり方、トラウマ、有害なストレス(虐待、小児期逆境体験等)など

ということで、環境要因も踏まえると、アセスメントする領域が多岐に渡るため、難しいのですが、私なりに整理すると、

・過去の成育歴(病気、トラウマ体験、虐待、小児期の逆境体験等)
・今現在や過去の生活習慣(睡眠、食事、健康状態、運動習慣、その他環境等)
・今現在の人間関係のストレス状況(家庭内の人間関係、学校や会社での人間関係、その他環境等)

などを考慮できるといいのかなと思いました。間違いや不足があったらすみません。

ただ、何がどう影響しているか(因果関係や相関関係)を、科学的に検証するのは、私の立場では難しく、医療機関による支援にて行われるといいのではないかと思います。といいつつ、そういったことをしてくれる医療機関はあるのだろうか…。



それから最後に「社会構築主義」的な観点も加えたいと思います。
起こっている事象(特性や問題行動)を、「発達障害」という視点から解釈したり、言説化していくことで、社会が「発達障害」を作り出しているという捉え方です。

「発達障害」という視点で解釈すると、自分の特性が腑に落ちたり、元々の特性だから自分の育て方が原因でそうなったのではないと養育者が安心できたり、特性を理解することでお互いのトラブルが減ったり、などいい点も多々あると思います。

一方で、なんでもかんでも「発達障害」で解釈してしまうという状況も生まれ易くなると思います。起こりうることとしては、多くの症状が、他の疾患や障害、あるいは環境的なストレスではなく、「発達障害」として解釈されがちになってしまう状況が生まれると思います。
これは、自分にも起こっており、「発達障害」への関心が高いと、この特性(症状)は「発達障害」ではないかという解釈や言説が起こりやすいと思っています。

こちらの考えは、北澤毅さんの『「発達障害」とは何か「学校がつくる発達障害児」という視点から』の講演会を参考にしています。

次に、そもそも、「神経発達症(発達障害)」の特性には具体的に何があるのかを整理してみ見たいと思います。

その1 どう呼べばいいのか
その2 本当にそれは「神経発達症(発達障害)」に起因する症状なのか
その3 「神経発達症(発達障害)」の特性には具体的に何があるのか。注意欠如多動症(ADHD)について整理してみる。


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