【映画鑑賞】『恋するプリテンダー』観ました。
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夏が近づくとロマコメ映画が観たくなる、黒木りりあです。
先日、ご縁がありましてFilmarks様の『恋するプリテンダー』試写会に当選しまして、一足お先に鑑賞させていただきました!
以前の投稿でも少し触れておりますが、本作はアメリカではすでに公開されている人気作のため、日本上陸をいまかいまかと待ちわびていたので、ようやく観ることができてとても嬉しいです。これからの季節にぴったりな、スクリーンで観たくなるロマコメ映画でした!
ソニーピクチャーズ様の試写室で鑑賞したのですが、この試写室がまた素敵空間すぎて、至福のひと時を過ごすことができました。ありがとうございます。
ということで、今回は『恋するプリテンダー』について、語っていきたいと思います。
『恋するプリテンダー』とは?
『恋するプリテンダー』("Anyone But You")は、2023年12月にアメリカで公開された映画作品です。
R指定という年齢制限ありのロマコメ映画ながら、全世界興行収入が300億円を超える大ヒットを記録しており、令和で最もヒットしたロマコメ作品とされています。公開前からSNS上では度々話題となっていた本作は、インターネットを中心として人気に火がつきました。
『小悪魔はなぜモテる?!』("Easy A"、2010年)や『ピーターラビット』("Peter Rabbit"、2018年)で監督などを務めたウィル・グラックが、本作では監督・製作・脚本の3役を務めています。
ドラマシリーズ『ユーフォリア/EUPHORIA』("Euphoria"、2019年-)や『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾート』("The White Lotus"、2021年-)での演技でエミー賞助演女優賞にノミネートしたシドニー・スウィーニー(Sydney Sweeney)と、日本でも大ヒットを記録した映画『トップガン マーヴェリック』("Top Gun: Maverick"、2022年)にグースの息子役で出演し一躍スターダムを上り詰めたグレン・パウエル(Glen Powell)という、今まさに旬な2人の俳優が主演を務めています。
『恋するプリテンダー』あらすじ
ヒロインのビーは、ボストン大学のロースクールに通い、弁護士を目指している。ある日ビーは、トイレを借りようとした街角のカフェで、エリート金融マンのベンと偶然出会う。初対面でお互いに惹かれるものを感じた二人は、そのまま最高の時間を過ごし、ベンのアパートで一夜を共に過ごす。翌朝、ベンに黙って彼のアパートを後にしたビーは、自分の過ちに気づいてすぐに彼のアパートへと引き返した。ビーが黙って立ち去ってしまったことにショックを受けたベンは、強がって友人に彼女の悪口を話してしまう。こっそりそれを立ち聞きしてしまったビーは、大きなショックを受けた。この行き違いで二人のロマンスはあっけなく終わりを告げた。
時が流れ、ベンは幼馴染のクローディアから恋人のハルを紹介される。その場で、彼はまさかのビーと再会。なんとビーはハルの妹だというのだ。険悪な空気の二人を、クローディアたちは遠巻きに眺めるのだった。
クローディアとハルの交際は順調に進展し、ついに二人はシドニーで結婚式を挙げることに。式に招待されたビーとベンは、周囲も気を遣うほど険悪な雰囲気だった。このままでは二人に結婚式をめちゃくちゃにされる、と懸念したクローディアたちは、いっそのことビーとベンをくっつけてしまおう、と企む。ビーはすぐにその企みに気づき、あきれる。
そんな中、ビーは両親が結婚式に彼女の元婚約者であるジョナサンを招待していることを知る。両親は彼とビーが復縁することを望んでいた。一方、ベンは同じく結婚式に招待されていた元恋人のマーガレットのことが気になっていた。それを見抜いたビーは、ジョナサンを振り切り、ベンがマーガレットの気を引けるように、と「恋人のふりをしないか」とベンに提案する。
こうして始まった二人の「偽交際」だったのだが……?
ベースはシェイクスピアの『空騒ぎ』
以前に他のnote記事でもご紹介していますが、『恋するプリテンダー』はシェイクスピアの『空騒ぎ』('Much Ado About Nothing')をベースとしています。シェイクスピアをはじめ、古典文学作品の名作をベースとしたロマコメ映画はたくさん制作されています。本作の監督であるグラック監督の『小悪魔はなぜモテる?!』では、原題からも分かる通り、ナサニエル・ホーソーンの『緋文字』("The Scarlet Letter")が緩くベースとなっています。
映画を観る前は、『恋するプリテンダー』は『空騒ぎ』をベースにしているとはいうものの、あまりシェイクスピア感はないのではないかな、と思っていたのですが、実際に見てみると思っていた以上のシェイクスピア感に驚きました。作中にシェイクスピア作品からの引用文が登場するのも面白かったですが、一番シェイクスピア感を感じたのは、ビーとベンをくっつけようとする周囲の猿芝居でした。特に、ベンの親友とその父親の棒読みかつ下手くそなセリフ回しは、シェイクスピア劇のユーモラスなシーンを彷彿とさせて、思わず笑いが漏れてしまいました。
「宿敵から恋人に」というモチーフは恋愛作品に非常に多いプロットではありますが、本作はそのモチーフの源ともいえるであろうシェイクスピア劇の要素をゆるく持ち出すことで、うまいアクセントをつけたな、という印象です。
『空騒ぎ』との大きな違いとして挙げられるのは、本作にはドン・ジョンが登場しないことでしょう。『空騒ぎ』は悪役でもあり道化でもあるドン・ジョンが物語のカギを握っており、彼の悪だくみが物語を動かす重大なポイントとなっていると思います。ドン・ジョンのおかげで作品が面白くなっていくのです。けれども、本作ではそれにあたる人物が見当たりません。名前的にはビーの元婚約者であるジョナサンが、ドン・ジョンを想定しているのかもしれませんが、キャラクターは全く異なります。私はジョナサンがドン・ジョン的に悪いうそをついて物語をかき乱すのかな、としばらく身構えてみてしまっていたのですが、ジョナサンは全然悪い人じゃありませんでした。疑ってごめんなさい、とエンドロールで思いました……。
ちなみに、ジョナサンを演じる俳優のグレン・バーネットは日本人の祖母を持つ、日系のアメリカ人俳優です。日本にルーツのある役者さんの活躍を見ることができるのは、嬉しかったです。
悪役不在のハッピーになれるロマコメ映画
『恋するプリテンダー』では、ドン・ジョンに限らず悪役が存在しません。これもまた、本作が人気な理由の一つだと思います。分かりやすい悪役はいませんが、きちんとドラマは巻き起こるし、笑いも起こります。キャラクターの深堀りが足りない、という側面は否めませんが、とにかくネガティブな要素がありません。何も考えずに見て、とにかくハッピーになれる作品なのが、本作の一番の魅力です。
ストーリーラインはある種ド定番のロマコメ路線を辿るため、ロマコメ好きとしては堪りません。王道のロマコメでありながら、きちんと現代の感覚にアップグレードされた作品です。
そして、ロマコメ映画で最も大切な主演俳優同士のケミストリーもまた、本作ではばっちりです。何せ、お互いに恋人がいる主演俳優二人の間にロマンスが芽生え、W浮気をしているのではないか、と疑惑がかけられたほどです。(この件については、本人たちが何度も強く否定しています。)
さらに、映画の景色も素晴らしいです。映画のほとんどがオーストラリアのシドニーで撮影されていますが、名物のオペラハウスだけでなく、オーストラリアの広大なビーチや大自然を存分に堪能することができます。季節が夏であるのも良い点で、とにかく画面の雰囲気が全体的に明るく、目にも非常に楽しい作品になっています。映画館の大スクリーンで見ると、この自然の美しさに何度も目を奪われてしまうこと間違いなしだと思います。
また、音楽も良い本作。予告編ではオリヴィア・ロドリゴが最高なバイブを出していましたが、本編ではナターシャ・ベティングフィールドのヒットナンバーが存在感を放っていました。そして、エンドロールまで楽しい作品になっています。
GWの連休明けの鬱々とした気分を晴らしたいときや、梅雨のじめじめとした空気を吹き飛ばすには、もってこいの明るくて笑えてハッピーになれる作品だと思います。
『恋するプリテンダー』は2024年5月10日(金)より日本全国ロードショーです。スカッとした気分を味わいに、是非劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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