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将棋と漫画の記事を書きます。将棋の棋力は級位者、観る将です。少年漫画が大好きです。ミス…

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将棋と漫画の記事を書きます。将棋の棋力は級位者、観る将です。少年漫画が大好きです。ミステリーの皮を被ったファンタジー小説なども少し書いています。

最近の記事

高梨くんのお喋りな罪【第一話】彼女の知らない罪

あらすじ キャラクター 第一話 「アイスキャンディー食べたいよ。ひぃー、苦行だ」  太陽が容赦なく照りつける7月下旬。高梨くんは大量の紙袋を抱えて、息も絶え絶えに登校した。  が、体力の限界を超えてクーラーの前で立ち止まる。汗を拭いながら制服をパタパタさせて、クーラーの風を体に浴びせる。  ピーピーピーピーピーピー……  蝉の大合唱の隙間から電子音が聞こえる。 「今の音は……」  高梨くんは目を閉じて耳をすませる。電子音が鳴り止むと、顎に手を当てて呟く。

    • 高梨くんのお喋りな罪【第三話】実験室の鎮魂歌

      第三話 「石川さん、顕微鏡終わったよ」  カシャンカシャン  高梨くんは筆記用具一式を手に持って立ち上がったけれど、ノートの上に置いていたシャーペンを落とす。ああ、あのときはこんな音じゃなかった。あのとき生物準備室から聞こえてきたのは、何の音だったんだろう。  私はプレパラートを顕微鏡の台に置く。高梨くんの植物細胞のスケッチは、よく見ると連なった背骨みたいだった。背骨、骨、骨格標本……また思い出した。こんなところに出る訳がないのに。  調節ネジを回して対物レンズをプ

      • 高梨くんのお喋りな罪【第二話】青じゃない

        第二話  まさか【青色アレルギー】というものが、この世にあったとは。青色の絵の具に触れると、手が腫れ上がるようになった。突然だ。   空も海も描きたい。でも、青を塗る手が腫れているせいで腕が震えた。キャンバスに筆を置くと、まるで涙のように青が流れて落ちた。  堤防に三角座りして、目の前に広がる海を眺める。目を閉じて手を胸に当てる。うん、諦めよう。筆を折ろう。 「最近、犬や猫がたくさん死んでいるのよ」  ……人が感傷に浸っているというのに、背後から不穏な話が聞こえてく

        • 山崎隆之八段が棋聖戦挑戦権を獲得!

          山崎隆之八段おめでとうございます! 佐藤天彦九段おつかれさまでした! 大熱戦! 終局後の記者がとても多くて、やっぱり注目の一局だったんだと興奮しています。 序盤から腹の探り合いと見たことない局面。AI研究全盛期なのに100%人間の戦い。そして、山崎八段の終盤の切れ味が凄かった。 今もXのつぶやきが賑わっています。千駄ヶ谷の将棋会館も大騒ぎだろうな。 私が将棋を見始めたきっかけは山崎八段です。戦型もよくわからなかった当時。リアクション、話し口調、山崎八段を見る周囲の反応

        高梨くんのお喋りな罪【第一話】彼女の知らない罪

          叡王戦第2局にて伊藤匠七段勝利【毒饅頭を投げつけられる終盤を制す】

          伊藤匠七段が藤井聡太八冠から初勝利した。 終局後、伊藤七段の耳は真っ赤で、大盤解説会場で放心状態だった。 https://times.abema.tv/articles/-/10123360 伊藤七段の先手で戦型は角換わり。しかし、後手の藤井八冠の守りは金を前に押し出す3三金型。序盤から「力戦にしましょう」という藤井八冠の心の囁きが聞こえた。 中盤、飛車を追いかけながら有利を築く伊藤七段。しかし、攻めたり受けたりしながら互角に戻す藤井八冠。 一旦互角に戻ると藤井八冠の

          叡王戦第2局にて伊藤匠七段勝利【毒饅頭を投げつけられる終盤を制す】

          【短編小説】青じゃない

           私は青を愛しているのに、どうして青は私を拒絶するのだろう。  青色の絵の具に触れると、手が腫れ上がるようになった。突然だ。  まさか【青色アレルギー】というものが、この世にあったとは。空も海も描きたい。でも、青を塗る手が腫れているせいで腕が震えた。キャンバスに筆を置くと、まるで涙のように青が流れて落ちた。  堤防に三角座りして、目の前に広がる海を眺める。目を閉じて手を胸に当てる。うん、諦めよう。筆を折ろう。 「最近、犬や猫がたくさん死んでいるのよ」  ……人が感傷

          【短編小説】青じゃない

          【短編小説】冬眠

          「すみません。兄貴は寝入っていて、起こしても起きないんですけど、また後でもいいですか?」  玄関先に出てきたのは、パーカーを着た癖っ毛の少年。  ……癖っ毛か寝癖かわからないのだが……頭を掻きながら目をこすっている。彼も眠そうだ。昼の2時を過ぎているというのに、兄弟揃って何故そんな眠そうなのだ。  しかし、こちらに反論の余地はない。 「いえ、担当変更のご挨拶に伺っただけですので。桜井先生によろしくお伝えください」 「はあ……秋月さんどうしたの?」  少年の半開きの瞼の

          【短編小説】冬眠

          詰将棋解答選手権にて古賀悠聖六段が優勝

          1位:古賀悠聖六段  73点 2位:斎藤慎太郎八段 63.5点 詰将棋解答選手権の満点は100点。 優勝者でも正答率7割ちょっとというのは初めて見た。速報ブログでは選手たちの嘆きの声が届けられていた。 詰将棋解答選手権は2019年まで藤井聡太八冠が5連覇した後、コロナで中止されていた。5年ぶりの再開。詰将棋作家の5年分の想いと大作が出題されて、めちゃくちゃ難化した模様。上記の嘆きとなった。 残念ながら藤井聡太八冠は不出場。名人戦などのタイトル戦との兼ね合いもあり仕方ない

          詰将棋解答選手権にて古賀悠聖六段が優勝

          忘却バッテリーOPにMrs. GREEN APPLE

          4月9日スタートのアニメ、忘却バッテリーの主題歌はMrs. GREEN APPLEのライラック。現在サビだけ公開されている。 良い。 忘却バッテリーは、野球の記憶をなくしたキャッチャーが主人公。華やかな絵柄とギャグで明るい皮をまとっているが、記憶をなくした根底にあるのはシリアスな事情である。 でも、その事情は苦いとは違う。忘却バッテリーの登場人物に悪人は殆どいないし、悪意も存在しない。けれど、何でこんな辛いことになるのかなあと思ってしまうストーリー。いや、軽快な雰囲気の

          忘却バッテリーOPにMrs. GREEN APPLE

          永瀬九段が朝日杯将棋オープン戦優勝

          第17回朝日杯将棋オープン戦決勝にて、永瀬九段が藤井八冠に勝利し初優勝した。 藤井八冠は今期勝率0.857。タイトル戦の番勝負を含めてこの勝率なので、藤井八冠が無敵の人と言われるのも不思議ではない。 永瀬九段は昨年王座戦にて藤井八冠と対戦した。当時、永瀬九段は完璧な研究をもとに終盤に大優勢を築いたのに、藤井八冠の巧みな誘導で悪手を指して負けてしまい、頭を掻きむしって悔しがっていた。そして、それ以降は調子を崩していた。復調したのは最近のこと。 優勝インタビューで、永瀬九段

          永瀬九段が朝日杯将棋オープン戦優勝

          黒田尭之五段が西軍7位にランクイン

          久しぶりに将棋のことを書きます。 SUNTORY 将棋オールスター東西対抗戦2023ファン投票の結果が出たからです。 黒田尭之五段が西軍7位。 ネット歓喜。でも、 との声もあり。私も驚きました。 黒田五段は愛媛県出身の26歳。居飛車と振り飛車を指しこなすオールラウンダーですが、彼の得体のしれない雰囲気のせいか、某プロ棋士から『怪しい党』と言われています。得意戦法は横歩取り。研究勝負の横歩取りですが、黒田五段は途中からよく研究を外れて力戦している気がします。 有名なリア

          黒田尭之五段が西軍7位にランクイン

          【短編小説】彼女の知らない罪

           夏休みを迎えたというのに7月下旬の学校は賑やかだ。グラウンドでは野球部のノックの音が聞こえる。水泳部の声がプールの匂いに混じっている。夏期講習の休み時間に教室で喋っている生徒もいる。私、石川希は秋に行われる文化祭準備のために登校した。  廊下を歩いていると、同じく準備のために来ている生徒がたくさんいるのがわかる。ジャージ姿で衣装を作っている女子は部活の合間に来たのだろうか。看板や大道具が廊下まで迫り出してきて、クーラーの風がペンキの匂いを運んでくる。まだ朝の10時半だとい

          【短編小説】彼女の知らない罪

          【短編小説】吊り橋効果

          「皆さん、もうすぐ吊り橋に着きますよ」  私はレンタカーの運転席からバックミラー越しに、後部座席のふたりに声をかけた。  真夏の太陽が照りつける8月上旬、私たちはサークル旅行でT県までやって来た。  T県は自然豊かで、かつ個性的な観光スポットが多い。曲がりくねった川でのラフティング、本物さながらの複製画で彩られた美術館、そして、恐怖の吊り橋。  旅行幹事の私は、激流で酔った人を介抱し、名画を前に騒いだ人に注意をし、バスの集合時間に遅れた人を探し回った。大変だった。涼を

          【短編小説】吊り橋効果

          【短編小説】学園祭の準備

           銀杏が色づき始めた10月下旬。K大学学園祭まで、あと1ヶ月。実行委員の広瀬佳純は1枚の『出店申請書』を見つめている。 「佳純さんどうしたんですか?」  1回生の神崎陽菜から声をかけられ、佳純はハッと顔を上げた。明日は学園祭の屋内企画の部屋抽選会だ。  学園祭で屋内企画というと地味なイメージだけど、美術部の展示や天文部のプラネタリウム、クイズ研究会のイベントなど人気企画も多い。そして、外の模擬店やバンドステージより学術的な企画が多い。だから、私は屋内企画が好きだ。  

          【短編小説】学園祭の準備

          みんな大好き幽霊塔

          幽霊塔は時計塔にまつわるミステリー。宮崎駿監督が少年時代にハマり、カリオストロの城に影響を及ぼした作品。ジブリ美術館で2015年に『幽霊塔へようこそ展』をしたり、幽霊塔の絵コンテまで作ったらしい。 幽霊塔はアリス・マリエル・ウィリアムソンの小説『灰色の女』を黒岩涙香が翻案したもの。涙香のファンであった江戸川乱歩が涙香の翻案小説を同題名のままリライト。さらに他にも翻案、リライト作品が多く生まれている。 その中で私が見たのが下記の漫画。かなりオリジナル要素が強い。 舞台は1

          みんな大好き幽霊塔

          チーム千田@Abemaトーナメント

          「お笑い好きは常に若く新しい人を求めている」 あちこちオードリーで上記の話があったが、それはお笑いに限らず将棋界も同じ。 将棋界では珍しい団体戦のAbemaトーナメント。チーム千田のメンバーは、初参戦リーダー千田翔太七段、職人肌の振り飛車党の西田拓也五段、17歳高校生棋士の藤本渚四段である。昨日放送された予選Eリーグにて、チーム千田はチーム渡辺に5勝4敗で勝利した。 千田七段はドラフト会議から一貫してエンタメ重視である。エンタメといっても遊びではなく、将棋の実力あっての魅

          チーム千田@Abemaトーナメント