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小説

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超短編小説。短編小説。漢字一字シリーズなど。
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2023年12月の記事一覧

何でもない日。みんなの12月某日④さようなら2023

何でもない日。みんなの12月某日④さようなら2023

 僕はクミの勤務先の最寄り駅で待っている。十二月の寒い寒い夜。クミは僕の姿を見つけるなり顔が曇った。マスクをしていても、わかる。

「こんな遅くまでお仕事大変だね。お疲れさま」

「いいかげんにして。警察から注意、警告を受けたでしょ」

 クミは低い声で言い、僕を睨みつける。

「引っ越したの?あのマンションから」

 クミは答えない。

「もう一度だけ話がしたい。最後だから。お願いします。」僕は

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何でもない日。みんなの12月某日③

何でもない日。みんなの12月某日③

二年前の十二月、夫は、妻(私)と自分の母親と犬を残して突然消えた。私達は三人と犬で穏やかに幸せに暮らしていた、はず。そう思っていたのは私だけだったのだろうか…。

 私と義母は仲がいいし、犬は私達三人の癒し。ミックス犬のミロは夫と私が仕事でいない間、義母と仲良くお留守番。義母はミロがいるから淋しくないそうだ。ミロの散歩は平日は私、休日は夫と二人で。一緒にいる時間が一番少ないのに、ミロは夫に一番懐

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何でもない日。みんなの12月某日②

何でもない日。みんなの12月某日②

 あの人は、「奥さんからお小遣いを3万円しかもらえないんだよ〜」と幸せそうに言う。よくよく聞けば、申告すればいくらでももらえるそうだ。

 「ディズニーランドに家族で行って子供を長時間抱っこして歩いて筋肉痛になっちゃって」、とか笑顔で話す。そんな話は、需要がないから。

 誰かが元気がなかったり、失敗して落ち込んでいたら、話を聞いてあげたり、励ましたり。人の気持ちに敏感なのだろう。皆に気づかいをす

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何でもない日。みんなの12月某日①

何でもない日。みんなの12月某日①

 早期退職し実家に戻ってきた。これからは両親のフォローをしながらここでずっと暮らす。僕は独身で、幸いなことに両親は元気だ。老いた両親の為に実家をアップデート。欲しい位置に手すりをつけた。お風呂、トイレをリフォーム。使い勝手のいいように家具を移動したり、冷蔵庫とベッドを買い替えたり、室内の電球をLEDに取り替え、家の外の電灯も増やし、センサー付きのものにした。
 物置の中をチェックし不用品を処分した

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ぽんこつな僕は②

ぽんこつな僕は②

 僕はいっぺんにたくさんのことが出来ない。気がかりなことや大事なことがあるとそれで頭がいっぱいになってしまいそれ以外のことを忘れたり、出来なくなってしまう。

 僕は言われたことそのままを受け取る。言葉の裏に隠された意図や遠まわしの嫌味に気が付かない。

 これらは年齢を重ねるにつれ、わかってきたことだった。
 自分の出来ること、出来ないこと、苦手なこと、楽しくないが辛くもなく続けられることは何か

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