満天の星の下で 第1話【小説】

あらすじ

 私の気持ちは2人の女性の間で揺れていた。どちらも魅力的な女性である。2人を通じて愛とは何か、恋とは何かを知っていく私。その果てに一つの答えを見出すこととなる。

2015年11月17日

 大学もあと少しで卒業である。必要な単位はすでに取り終え、就職先も決まっている。好きな講義を受けて、卒業論文の作成をする。気楽なものである。週一回のゼミは必ず行くが、それ以外は気まぐれである。
 今日も昼頃キャンパスに行き、1コマ講義に出た後は図書館に籠もって論文作成に取り組んできた。
暗くなった道を家に向かって歩いていると後ろから名前を呼ばれ、振り返った。小学生の頃からの友達の和成だった。隣りにもう一人いる。暗くてよく見えないが女性だ。彼女だろうか。
「久しぶりだね。いつ以来?それとどちら様?」
聞いてみた。和成の顔が驚いた顔になり、すぐ吹き出した。
「誰って、なんだよ。優希子だよ。ほら、小中学校一緒だった。」
 ぼやけた輪郭が街灯に照らされてはっきりしてくる。思い出すのに少し時間がかかったが、知った顔だった。
「偶然同じ電車に乗っていたみたいでね。駅で会ったから一緒に歩いてきたんだよ。」
優希子も同じ小学校と中学校に通っていたが、そんなに話した記憶は無い。2回ぐらいクラスが一緒だったと思うが、それだけだ。ただ、愛嬌のある顔立ちをした子だなと思っていた。
「久しぶりって言えばいいのかな。あまり絡みなかったよね。」
どこまでフランクに話しかけていいのか戸惑いつつ、声をかけた。
「あー!思い出した!ごめんごめん、誰かわからなかったわ。」
彼女も私と同じだったようだ。小さい頃はおとなしい印象だったからか、快活な明るい反応に驚いた。いやそもそも彼女のことをそんなに知らないから元々こういう性格なのかもしれない。
「和成と優希子は高校も同じだっけ。時々会ったりしてるの?」
素直に疑問をぶつけてみた。
「いいや、全然。ただ、帰り道に結構会うことがあるのよ。」
少し間があり、笑いながら彼女は答えた。
 家の方に再び歩き出し、3人で歩く。お互いの大学の話やよく会う地元の友達の話をしていると分かれる交差点に着いた。
「じゃあ、俺はこっちだから。」
そう言って私は別方向に進もうとしたとき、和成が
「優希子は最近野球見るのにハマってるんでしょ。もうシーズン終わったけど来年にでも地元の友達何人かで見に行かない。」
と言ってきた。
「昔は興味なかったんだけど見ていると面白くてね。そういえば、野球部だったよね。」
よく覚えていたなあと思いながら、
「そうだよ。俺も年数回だけど見に行くからいいかもね。」
と言い、優希子とラインを交換した。
「じゃあまた。」
と言い、今度こそ分かれた。和成と優希子はもう少し同じ道を歩いた先で分かれるから、振り返って2人の背中を見た。
「お似合いに見えるけど、付き合ってないのか。兄妹にも見えるな。」
などと思いながら私も家路を急いだ。 
 家に着いた私は本棚から卒業アルバムを取り出し、久しぶりに開いてみた。私と優希子は度々ラインで連絡を取り合うようになった。

第1話:現在地
第2話:https://note.com/light_cobra3799/n/n3f50839382ca
第3話:https://note.com/light_cobra3799/n/n7f017105f79c
第4話:https://note.com/light_cobra3799/n/n9496262580d0
第5話:https://note.com/light_cobra3799/n/n2df3248b6a3f
第6話:https://note.com/light_cobra3799/n/nbee7ecba7d4a
第7話:https://note.com/light_cobra3799/n/n845430e9ef1d
第8話:https://note.com/light_cobra3799/n/nb3b5937754d2
第9話:https://note.com/light_cobra3799/n/nd82c0efc8a25
第10話:https://note.com/light_cobra3799/n/n085176c49803
第11話:https://note.com/light_cobra3799/n/na4cd46a10e51
最終話:https://note.com/light_cobra3799/n/n268a2ef79919

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