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今日の「旅立ちの日に」

おうち時間が増えた最近、ピアノをたまに弾くようになった。小学校卒業と同時に習い事のピアノを辞めたが、15年以上経っても指が覚えている曲をひたすら弾く。そして必ず、「旅立ちの日に」は私リストの中に入っていて、飽きずに毎回弾いている。この曲を聴いて「卒業」を思い出すのは、きっと私だけではないはず。

今年も卒業式に行ってきた。私は今年28歳になるが、結婚もしていないし子供もいないしもちろん子育てもしたことがない。親戚にもまだ子供がいないので、叔母にもなっていない。なんで卒業式に行ったのかというと、私は去年の3月まで小学校の教員をしていて、その時の教え子を見送りたかったからだ。教員を辞めて何か職に就いたわけでもなく、こんな自分が行ったところで保護者や同僚にも合わせる顔がないな…という気持ちがあったのは正直なところ。しかし、子どもに会いたいという気持ちの圧勝で、一時間半かけて懐かしの職場に向かった。正確に言うと、今年はこういう状況なので、卒業生と保護者のみの式となり、私は式後の花道からお邪魔した。

今年卒業した教え子を担任したのは、彼らが3年生の時だった。花道で私の前を歩いていく一人一人の顔を見ていると、当時の思い出が一気に蘇った。あんなに小さかったあの子たちが、いつしか声変わりして私の背を抜かして。よく飛びついてきていた甘えん坊のあの子も、もう私に抱きつくことはなく、なかなか目も合わせてくれないし、なんだか照れ臭そうに話すだけ。あぁ、大きくなったなあ、私は親でも親戚でもないけれど、嬉しいような少し寂しいような気持ち。
毎日一緒に勉強したね。毎日休み時間になると友達と喧嘩してたね、それでも一緒に遊んでたよね。たくさんの先生の前で授業を見てもらったこともあったね、みんなの頑張りに助けられたよ。みんなで劇も頑張ったね。最後のお楽しみ会、喧嘩しながら進めたね、サプライズでプレゼントもくれたよね。今も私の宝物箱の中に大事に全部しまってあるよ。

数年間教員生活をした中で、当時の一年は正直体力的にも精神的にも一番しんどかった一年だったかもしれない。今考えても本当にしんどかったし、毎日仕事に行って生き延びた私、えらい!ってその時の自分を褒めてあげたいくらい。当時は辛くて未来に希望が全く見えない毎日を送っていたけれど、今となってはその一年もかけがえのない思い出に変わり、あぁそんな時もあったなぁ、なんて思えるくらいになったし、私の人生に欠くことのできない大事な一年になった。

旅行に行ったり仲の良い友達と会ったりすることを楽しみに生きていた私にとって、こういう状況になった今、それらができなくなってしまった上に、自分の人生計画がどんどん変わっていってしまっていて、戸惑いや不満、不安の気持ちを抱いたのは本音。でも、一年後、数年後の自分にとって、不安になりながらも自分なりに模索しながら生きている「今」は、私の人生に必要不可欠な時間になり、かけがえのない思い出になるのかなぁ、なんて思ったりする。いや、そうなると信じてる。

今月中学校に入学した私の可愛い教え子たちは、慣れない環境の中彼らなりに頑張っているのかな。保護者の方々も、そんな彼らを支えるために毎日家事にお仕事にお忙しい毎日を過ごされているのだろう。私は今無職だが、自分の人生をもっと充実させるためにも、私なりに「今できること」に全力を注ぐ、それが例え周りからしたらとてもちっぽけなことだとしても、未来の自分を信じて取り組んでいくしかないな、と思っている。未来の自分にとっての「今」は自分の人生に欠くことのできない、かけがえのない思い出になるはずだから。大好きな教え子たちも頑張っているし、私も頑張らなきゃな。退職後久しぶりに再会した時の「先生頑張ってね!応援してるよ!」という言葉は、その時の子どもたちの声や表情と一緒にずっと私の中に残っていて、挫けそうになった自分を奮い立たせる大きな原動力にもなっている。よし、今日も一日全力で生きてみよう。あの子たちも頑張ってるし、応援してくれているんだから。また再会できる日を楽しみに、自分の人生を生きていこう。大好きな教え子のことを考えていたら、こんなに前向きな気持ちになることができた。彼らにまた会いたい。次会えるのはいつかなぁ。まあ、会うや否やいつも通り「先生、彼氏できた!?✨」って目をキラキラさせながら聞いてくるんだろうけど…(できてないよ)

素敵な出逢いを、かけがえのない思い出を、本当にありがとう。先生は先生じゃなくなったけど、いつまでもみんなの先生だよ。いつまでも応援しています。

なんだかまたピアノが弾きたくなってきた。今日の「旅立ちの日に」は、先月卒業したあの子たち、あの子たちとの思い出を思い浮かべながら弾こう。


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