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浦河町とインド人:くらし編


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浦河町役場が外国人居住者を全面的に支援

2021年に外国人支援調査事業を委託にて浦河町で実施し、2023年現在は地域おこし協力隊の方が引き継いで支援を進めておられます。ここでは、地域おこし協力隊の方に、支援を通して感じたことをお話しいただきました。

超えろ!言葉の壁

言葉の問題は、終始登場する。インド人居住者から、地域おこし協力隊員への相談件数は月100~300件にも及ぶ。通訳依頼などの問い合わせは、主に携帯アプリのWhattsAppで要請が入る。その相談の半数以上は行政に関する問い合わせ。つづいて生活に関する問い合わせ(銀行口座開設など)が1割、医療健康が1割。子どもの教育、書類の説明などとなっている。

浦河町役場の方が「行政は、町内すべての方に等しく情報を与える責任がある」と、語気を強めて語っていたのが、非常に印象的だった。

その浦河町の手厚い支援を受けて、現在では行政からの重要な情報などはヒンディー語で配信され、居住しているインド人にも日本語教室を開催するなど、日本語を学ぶ機会を提供している。

浦河町のヒンディー語の発信力には本当に驚くばかりだ。下記はすべてヒンディー語の翻訳・通訳がついて、インド人居住者が理解しやすいよう配慮されている。

  • 浦河町広報誌

  • 税金、年金、確定申告等の社会保険制度、交通ルール、ゴミ出しルール等のセミナー

  • 母子手帳(2021年から累計18冊交付済。他市町村にも提供)

北海道 浦河町地域おこし協力隊 facebookより抜粋
HTB北海道ニュースより抜粋

しかし、浦河町役場の方は、これでもまだ十分ではないという。
今後は、下記のような施策を検討中とのことで、ますますインド人のみならず外国人にとって住みやすい浦河町へと発展を遂げる計画だ。

  • セミナーの充実(事業者向けの在留資格制度や外国人雇用までの制度説明)

  • ワークショップの充実(多文化共生、日本語教室の開催、交流イベント)

  • 役場庁舎内の看板をユニバーサルデザイン化(役場の案内板や各課の看板をヒンディー語を含めて多言語化)

また、定期的にヒンディー語と日本語を解する方向けのワーキングホリデーを実施しているので、興味のある方は是非参加してほしい。

ベジタリアンでも元気に過ごしてほしい - インド人女性を取り巻く環境

浦河町に住むインド人女性の70%がジョドプール近郊出身。車の運転経験もないため、どうしても家に閉じこもりがちになってしまうとのこと。そこで、地域おこし協力隊員が、ヒンディー語の広報誌を通じて町内イベントを案内したり、地元の方と一緒にインド調理教室を開催するなどして地域の方との交流を深める手助けをしている。

一方、非常に深刻な問題になっているのが健康面だ。浦河町に住むインド人居住者の多くがベジタリアンであり、インドで慣れ親しんだ野菜が日本では手に入らないため、栄養不足が散見されるという。インド人女性は貧血気味。インド人の子どもたちも、ビタミンD、カルシウム不足、貧血の傾向がみられる。

そこで、インド野菜を育てる試みをしたところ、ユウガオ、ホーリーバジルは育ったが、それでも十分といえる量・種類ではないため、インドで食していた野菜を沖縄から野菜を共同購入している状況だという。今後は、できるだけ浦河町で野菜を育て、それを使っての料理を浦河町の特産品として広めることも視野に入れて取り組んでいるとのことだった。

浦河町のベジタリアン研究会にも出来上がったお料理を味見してもらうなど、交流を深めているとのことだった。

子どものお誕生会にて
北海道 浦河町地域おこし協力隊 facebookより抜粋

子どもたちと教育

2023年現在、5名のインド人のこどもが地元の幼稚園に。1名のインド人のこどもが地元の小学校に通っている。他、待機児童や未就学児童は、解放されている保育園や公園で遊び、学んでいるとのことだった。その際、母親も孤独な子育てにならないよう、外に出て交流できるよう配慮されている。

ただ、インド人の両親からはインドに帰国した際のことも考えて、英語やインドの文化も知ってもらいたいという要望もあり、今後は英語教室などを開講することも検討しているという。

子どものお誕生会にて
北海道 浦河町地域おこし協力隊 facebookより抜粋

まとめ

日本のリトルインディアとして有名な場所は、最も歴史が深い横浜にはじまり、神戸、そして、西葛西だろうが、今はそこに浦河町が加わりつつある。
しかも、リトルインディア浦河町は、これまでのリトルインディアとは全く状況が異なっていることがお分かりになったであろう。

  • 町の総人口の約3%がインド人(人数は少ないが、出会う確率は多い)

  • 馬の調教師・厩務員という特殊な職業に従事している

  • ヒンディー語・マールワーリー語しか理解できないインド人が多い

  • 彼らはインドのラージプート軍馬を世話していた末裔!?

浦河町のインド人調教師・厩務員は需要も高く、現在は全国各地の牧場や馬事公苑で従事している。身近な競馬場で走る馬も、インド人が一生懸命育てた馬かもしれない。

地方競馬情報サイトから、近くの競馬場に浦河町産の競走馬がいるかも検索できます!



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