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Libya Updates #29: October 2020 Week 4


こんにちは🕊
今週もリビアに関する動きを整理しました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいるものの、現地での戦闘が続いてきた。

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1. 国内の動き

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ステファニー・ウィリアムズ国連リビア特別ミッション暫定大使は21日、リビアで対立しているGNAとハフタル勢力が紛争を解決するための合意に達したことを発表した。
両勢力はスイスのジュネーブで行われた会談で、同国東部と南部の間の封鎖されている道路の開通のほか、空の移動も再開することを決定。衝突の激化を防ぐため、両国は停戦を維持することにも同意している。


GNAとハフタル勢力を支援するHoRが統一した国家予算の策定へ向けて動き出している。ロイター通信のGNA政府関係者への取材で分かった。

GNAは2021年度の国家予算を3,8000〜4,000万米ドルと見積もっているという。これには保険医療や教育への投資も含まれているという。


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ただ、交渉が進む間にも前線での衝突は続いている。
GNA軍は15日、ハフタル勢力がリビア北中部のシルトでミサイル4発を撃ったことを発表した。


メディア関係者が不当に逮捕される事件も起きている。
逮捕されたのはモハメド・オマール・バアイオ氏で、リビア・メディア・コーポレーションのトップを務める人物。20日に2人の息子とTV局「リビア ・アルワタニーヤ」の幹部とともに拘束された。バアイオ氏以外の3名は21日までに解放されている。

この件についてUNSMILは22日、バアイオ氏の解放を求める声明を出している。


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一方、石油の生産は回復傾向にある。
一時は日量10万バレルにまで落ち込んだ生産量は現在、日量50万バレルにまで戻った。GNA政府は年末には現在の2倍になることを期待しいているという。

ただ、長期間の封鎖により設備の管理などが十分にできていないなど、課題の解決も必要だ。

ハフタル勢力は今年1月から9月までの8ヶ月間、油田につながる港を封鎖。石油・天然ガスの輸出国であったリビアではディーゼル燃料などを輸入する状態が続いていた。
リビアでは燃料不足などが原因で停電が頻発し、最大で1日に16時間停電していた地域もある。8月末から9月には、北西部や北東部で市民の抗議運動を引き起こした。


2. 国際社会の動き

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ロシアの民間軍事会社ワグナー・グループの傭兵と見られる勢力のリビアでの実態が明らかとなってきた。
Middle East Eyeは傭兵らに拘束されたという28歳のモハメド・アブアジラ・エンビス氏を取材している。

エンビス氏は2019年9月に戦闘の激化によりトリポリから避難。首都から50kmほど離れた町で傭兵らと遭遇し、父と兄弟、義理の兄弟の3名とともに拘束されたという。
「最初は食事や飲み物を与えてくれ、すぐに解放されると思った」

だが事態は数時間後に一転した。エンビス氏らは近くの農場へ連れて行かれ、並んで跪くよう言われた。「傭兵らは私たちを銃弾で撃ってきた。私は倒れ、死んだふりをしていた」
エンビス氏と兄弟1人は一命を取り留めたが、父親と義理の兄弟は死亡したという。

ロシアはワグナー・グループを通してハフタル勢力に対して傭兵や軍用運送機などを提供してきた。同国政府は否定しているものの、国連のレポートなども複数回に渡り関与が認められることを指摘している。


3. 新型コロナウイルス 

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リビアでは22日 (現地時間) 時点で、累計51,625人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は5,804人。1日に平均約820人以上の新規感染者が確認されている計算。累計死者数は765名で、1週間で96名の増加


感染者数は5月まで数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、新規感染者数は増加の一途を辿っている。

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リビアの人口は689万人ほど。

国際連合人道問題調整事務所 (OCHA) によると、感染者数の最も多い地域は首都トリポリ。続いて第3の都市ミスラタ、トリポリ西部のズリテン、第2の都市ベンガジで多くの感染が確認されている。


情勢不安の続いてきた同国では、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけて、医療施設への攻撃も多発。6月から7月頃には市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いでいた。


4. 移民・難民

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GNAは15日、「ビジャ」の名で知られており、移民・難民らの密入国を斡旋してきたアブド・アッラフマン・アルミラド氏を逮捕したことを発表した。アルミラド氏は移民・難民らに対する暴行などを首謀してきたとされており、国連安保理が2年前から制裁を課していた。

カダフィ体制の崩壊後の混乱で、サブサハラアフリカ諸国よりリビアを経由し、欧州を目指す移民・難民が急増。密輸業者の台頭も確認されている。
EUなどとの協力のもと、同国は移民・難民が地中海を渡るのを阻止しようとしてきた。

だがリビアに留め置かれた移民・難民らの一部はGNA政府や武装勢力により収容施設へと送られることもある。収容施設では生きるために必要なものへのアクセスも絶たれ、外へ助けを求めることもできない。難民・移民から金銭を巻き上げるために脅しをしているほか、リビア人が暴行や性暴力を行なっていることも分かっている。

EUなどがこうした現状を知りながらリビア当局との協力を続けているとして、国際NGOなどが批判を続けてきた。


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