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#日記
フリーライティング#22 ボヤきをやめたい
【フリーライティング#22】
2023/11/3 a.m. 10 min.
書いていないと書く能力が低下してますます書く気が失せるものである。継続は力である、というより、非継続こそが最も非力である、だと思う。
先日旧友から連絡があり「執筆してる?」と問われた。「細々と」と答えたら「良かった」と返ってきた。
そうか、僕が細々とでも執筆を続けていることは旧友にとって「良かった」ことなのか。なぜだか
フリーライティング#21 神話の質量を増やしていく
【フリーライティング#21】
2023/9/7 p.m. 15 min.
インド与党が国名を「バーラト」と改めたがっているそうだ。これは決してトンデモ話ではない。インドという国名の由来には諸説あるが、その殆どが他称であり、たとえば「インダス川の向こう側の地域」といった自国民の感情をまったく無視した意味のものもある。
イギリス植民地時代に押し付けられた名前を、独立時にも便宜的に引き継いでしまった
フリーライティング#20 花と窓
【フリーライティング#20】
2023/8/15 p.m. 15 min.
「iPhoneのストレージがいっぱいです」のメッセージが煩わしかった。脳のメモリを肩代わりしてもらってるにもかかわらず。文句を垂れている自分を恥じて不要なアプリや写真を消し始めるまで、少々の時間が要った。
そんな中で見つけた、3年前の春に撮った花の写真。通勤路に一本だけ立つ中背の樹に咲いていたものだ。
通るたびにその鮮
フリーライティング#19 取り違え
【フリーライティング#19】
2023/7/26 p.m. 10 min.
文学賞をめぐるネット議論で出てきた「作為」という言葉について考えていた。至極消極的な意味で、つまり「作者の作為が見えると興醒めする」といった場面で用いられていたものだ。作者の作為はどういう時に透けて見えてしまうか。たとえば感動ポルノとか、ビックリお化け屋敷のように、期待される感情と実際に表出される感情とにズレが生じる時
フリーライティング#18 連続と振動
【フリーライティング#18】
2023/7/14 p.m. 5 min.
首を捻ってしまう言葉のひとつに「他人と過去は変えられない、変えられるのは自分と未来だけだ」というものがある。僕はこの言葉にまったく同意ができない。口は悪くなるが、この言葉を真に受ける人が多いことにも驚くばかりである。
正直、お気楽だと思う。「自分と未来なら変えられる」という観念は、自分や現在というものが連続性をもって続い
フリーライティング#17 その感情は過ぎたもの
【フリーライティング#17】
2023/7/12 p.m. 10 min.
先日、他人に「文芸とか人文学とか器用ですね」と言われたのだが、当人としては「んなわけあるかい!」である。
1のアウトプットをするのに100のインプットを要する。これは大袈裟でも比喩でもなく、実際にこのくらいの比率な気がする。だからわずか数百字を書くのにも多大なる時間と認知資源を割いているのだ。そんな苦行に自ら向かってし
フリーライティング#16 芽を摘む
【フリーライティング#16】
2023/6/9 p.m. 10 min.
あれれれれ、これって、、、と自分の中に妙な感情が芽吹く瞬間を捉えられるようになった。普段は土の下に潜んでいるのだが、いくつかの条件が揃うと一気に成長速度を早める、その植物の名は「虚栄心」だ。おそらくは蔦系で棘のある、厄介なほどに生命力の強い種属。
若かりし頃よりも意図的に気持ちに余裕を持つようにしていて、その甲斐あって「
フリーライティング#15 韻文的アイドル
【フリーライティング#15】
2023/6/6 a.m. 10 min.
出逢ってしまったのだ。理想の偶像に。それは8年ほど前に配信が始まったゲームアプリに登場する2人組アイドルデュオ、つまり2次元アイドル(男性)というわけだ。
不惑の年に手が届こうとしているオッサンが、2次元に手を染めることは気持ち悪いだろうか? たいがいの人は「キモい」と答えるかもしれない。でも……
正直「キモい」と言われ
フリーライティング#14 スイーツは世界平和だ
【フリーライティング#14】
2023/5/30 p.m. 10 min.
人生初の本格ダイエット中、2ヶ月で9kg痩せた。その変化は周りから心配されてしまうほどで、自分でもやり過ぎたかもと反省していたところだった。
日々のストレスもあって閉塞感に苛まれていた週末。ちょいと出かけ、昼間っから酒を煽りながらスイーツを2軒ハシゴしてやった。
パンナコッタ風プディング、胡桃のチョコのバーケーキ、フル
フリーライティング#13 目に優しい
【フリーライティング#13】
2023/5/27 a.m. 10 min.
自宅前の大通りを挟んだ先に、小さな森がある。なんの変哲もない木の連なりなのだが、不思議と、一日に一回は見惚れてしまうのだ。本当に不思議だ。
緑色のグラデーションや、陽の当たり方、葉と枝のなす凹凸。微妙な色彩感覚と複雑な立体視を強要してくる森。そして一回性と永遠性とを常に備える、森。
無論、空も尊い、海や河も尊いのだが、
フリーライティング#12 文章はアルミホイルの中で硬くなる
【フリーライティング#12】
2023/5/23 a.m. 10 min.
今日は午前休みで、昼食を済ませた後にそのままの勢いで夕飯の下ごしらえを始めた。夕方に仕事から帰ってきて料理の手順が多いのがイヤなのだ。鮭のホイル焼きなら楽できるだろうと思い、野菜とキノコ類を切って並べて、その上に鮭を置いて、あとは包んで冷蔵庫に一時保管……と思いきや、ここで反射的に塩コショウを振ってしまったのだ。普段通
フリーライティング#11 雨を抱く
【フリーライティング#11】
2023/5/20 a.m. 10 min.
昨日の雨の激しさは久方ぶりだったように思う。街角で強く降られて広げたのは、数年前に東急ハンズで購入した「風に強い」傘だ。スーツ着用の男性を想定した無機質なデザインで、丈夫さ以外には愛着要素の少ない代物だった。
その傘がふと優しい音を鳴らし始め、心底から驚いた。決して穏やかでない雨粒の連打音が、わずかな丸みをもって感じら
フリーライティング#10 金切り声
【フリーライティング#10】
2023/5/13 p.m. 5 min.
ロックサウンドの中にあって、ギターと無関係な旋律で火花を散らすストリングスパートは非常に美しい。まとめよう纏まろうとせず、一心不乱に、はみ出そうはみ出そうとして金切り声を上げるヴァイオリンほど心を抉る音はない。これはクラシック界から見たら邪道と呼ばれ、破門を辞さないものなのだろうが、僕の脳裏には、羨望を悟られまいと必死に
フリーライティング#9 迷路
【フリーライティング#9】
2023/5/11 p.m. 5 min.
芸術かエンタメか、という話はやめにしようと思う。これらはよほどじゃない限りグラデーションであり、たとえその両極に位置する作品だとしても、対極の理論を完全無視することはできないのだから。大衆の評価を無視した芸術は他者性を失う。芸術性を一切追求しないエンタメがほんの刹那でも消費されるとは思えない。
創作全般において大事なこと