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RIPPLE〔詩〕

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#神話

サロルンカムイ 【詩】

サロルンカムイ 【詩】

 白日の待ち合わせ

 不器用に踊った黒い夜

 赤い火が小さく燃えていた

  ベランダの植木鉢のなかに

   如雨露でふたりの湿原を作った

 「守ってたつもり」

 「守られてばかり」

 答え合わせの叶わない日々を

  神話にするなら

   どうしても供犠が要ったのでしょう

 断末魔はなぜか

  ずっと後から薄く響いて

   ひとり暮らしの生活音に

    溶け込んでは すぐ

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神話詩「暁」

神話詩「暁」

 「暁」

 藍色の空を塗り替える罪

 夜の女神に恨まれぬよう

 平穏な無の去り際を

 誰も惜しむことのないように

 わたしはわたしを祓うため 飾り立て

 世界の始まりに沐浴をする

 まず目を覚ましたのは深海のクジラ

 風が騒いで 遠く白波が沸き立つ

 くすぐられ はだけていく 白い衣

 繰り返される羞恥の染みに

 雪雲のパフを撫でつけられて

 逆上せた 息吹が漏れて広がり

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神話詩「ヒュアキントス讃歌」

神話詩「ヒュアキントス讃歌」

表題のヒュアキントスはギリシャ神話に登場する少年の名。太陽神アポローンに愛されたが、2人で円盤投げの遊びに興じているさなか不運な死を遂げる。少年から流れ出た血が花を象り、これがヒヤシンスの起源と伝えられている。

「ヒュアキントス讃歌」

 あのとき喘いでおけばよかった
 風はひとふき
 微笑みを交わすように
 あらゆるものを奪い去る

 白日にさらされた情火は
 承認の嵐だった
 そこから始まる

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白鳥座の神話詩「キュクノス讃歌」

白鳥座の神話詩「キュクノス讃歌」

表題のキュクノスとはギリシャ神話に登場する少年の名。墜落死した親友の帰りを老齢になるまで待ち続け、その想いに心打たれた神々によって白鳥座に変えられたと伝えられている。



「キュクノス讃歌」

 (竪琴の音)

 ここに
 広く知られた言い伝えがある
 ベガとアルタイルの逢瀬を賑やかにする
 任を預かった鳥の群れ そのなかで
 ひときわ大きな一羽の白鳥

 肌は夏の雪で埋めつくされ
 その背に

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龍神〔書き初めの讃歌〕

龍神〔書き初めの讃歌〕

🎍明けましておめでとうございます🎍
🙇‍♂️今年もどうぞよろしくお願いいたします🙇‍♂️

2019年末に奥日光を周遊してきたのですが、半ば吹雪いておりました。。。
白銀の世界を貫く滝は猛々しく厳かで、寒さに耐えた甲斐あって「龍にまつわる詩」がすぐ生まれました。
子年ではありますが、皆さまの勇ましい門出を願って、今年の書き初めにします。





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