サロルンカムイ 【詩】
白日の待ち合わせ
不器用に踊った黒い夜
赤い火が小さく燃えていた
ベランダの植木鉢のなかに
如雨露でふたりの湿原を作った
「守ってたつもり」
「守られてばかり」
答え合わせの叶わない日々を
神話にするなら
どうしても供犠が要ったのでしょう
断末魔はなぜか
ずっと後から薄く響いて
ひとり暮らしの生活音に
溶け込んでは すぐ顔を出す
湿原からは遠く離れて
もう恵みなんて要らないというのに
白と黒と赤の透けた世界を
愛さざるを得なくなったわたしの
片割れは今 どこを飛んでいる
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タンチョウは白・黒・赤の美しいコントラストで美しい佇まいを見せる瑞鳥で、アイヌの人々からはサロルンカムイ〈湿原の神〉と呼ばれてきました。タンチョウの番は互いを守り慈しむ夫婦円満のシンボルとして尊ばれています。神話では、獲物の熊の居場所を人々に断末魔で知らせた〈恵みの神〉として語られているそうです。もし亡くなったタンチョウの片割れだったら、という想いを恋愛詩にして詠みました。
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