【絵本動画】アオイテンシ

この話はもう20年位前に書いた話です。当時苦しんでいたことや感じていたことを閉じ込めた作品になりました。
沢山の人にみてほしいです。気に入ってくれればうれしいです。 

世の中の事なんて何もわからないまま、あがいていた頃の気持ちが詰まっています。

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青い空をみるとかなしい気持ちになる。
雲一つない青い空をみると悲しくないのに涙がこぼれる。
ずっと、そう思っていた。               

ある日、アオイテンシとすれ違った。          
振り返ったらあいつもこっちを見ていた。           

その日から僕の少し離れた場所に必ずあいつがいた。
街を歩くと通りの向こうに。
洗濯をすると向かいの屋根の上に。
コンビニに入ると立ち読みしてた。

ある嵐の翌朝、おきると古いイスの上であいつが眠っていた。  
アオイテンシとの暮らしが始まった。

テンシは誰かと一緒に生まれてくる。
そう言って黙り込む。

昔のアルバムを開いたらあいつがいた。
写真の隅っこに楽しそうに写っていた。
どの写真も僕は笑っていない。             
その分あいつが笑ってた。
そういえば最後にいつ笑ったっけ。          
笑うってどうするんだっけ。              
そういえば鏡も見てない。               
俺ってどんな顔してたっ け。

昔は僕だって白かったよ。
そう言ってまた黙り込む。
確かに写真のあいつは今より白かった。

どんな生活にも必ず変化は訪れる。
ある日、あの娘とすれ違った。
振りかえったらあの娘もこっちを見ていた。      
あの娘は少しあいつに似てた。

最近さ、わたしがんばってるし、誕生日近いし、それにさ・・・
イヤリングのおねだりのいいわけ。
いつまでも続くそのいいわけが、僕の何かに触れた。   

その日から、あの娘は僕のお手本になった。      
嬉しいとき、悲しいとき、おこったとき。       
素直な表情が毎日新鮮で・・・
あ、笑うってこうするんだ。

雨の夜、ずぶ濡れのあの娘を抱きしめた。       
抱きしめた肩越しにあいつが見えた。
あいつはただじっとこっちを見ていた。      

その日から古いイスの上にあいつはいなくなった・・・  

夢を見た。あいつが言った。
そろそろ空に帰るよ。
テンシは誰かの笑顔で白くなる。
アオイテンシが空に帰ると飲み込まれて空の青になる。
空の青さは笑顔をなくした大人のテンシの色。      

待てよ。まだ・・・                
言葉がでてこない。
どうして・・・何か伝えたいのに・・・      

起きたらあの子が古いイスの上で眠っていた。  
あの子に気づかれないように、そっと泣いた。   

自分の言葉で話せない僕は誰なんだろう。
僕は僕と何処ではぐれたんだろう。

晴れた日、屋根に白いあいつを見つけた。      
あいつは立ち上がり大きな羽を広げた。      
青い空に白くなったあいつが吸い込まれてく。   
青い空に白い羽がいつまでもいつまでも残っていた。

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