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あっちに行こうか

 朝から、新しい鞄で出かける週末のことを考えている。
 久々に新調した普段使いのカバン。GWの予定もなかなか決まらないけど、とりあえず直近の休日を楽しむことに注力したい。配達予定日のお知らせが昨日届き、アイテムを手に入れたぞという実感に浸っている今は、RPGゲームの宝箱から装備アイテムが出たときのような気持ちだ。
 今日は休日出勤になってしまい一日楽しみが減ったが、車の助手席にその新しい鞄を乗せて出かけるだけでも、少し高揚感があるはずだ。
 
 新しい鞄に、新しいノートと読みかけの小説をいれて出かける。もちろん音楽も聴きながら。聞きなれたマイリストの曲が、一段と素敵に聞こえる予感がする。そんなときは、通ったことのない道を使って出かけたい気分になる。目的地は安心できる知っている場所がいいけど、道の駅にでも寄りながら時間を余分に使う。
 折角なら、縁起がいいところがいい。全然信心深い人間ではないのだけど、最初の思い出が良くなる可能性があるならミーハーにもなれる。そんな簡単にフラフラできるヤジロベーみたいな自分が嫌いじゃない。

 新潟の3月中旬の空は、まだまだ薄い青紫色の紫陽花みたいな雲が覆っている。そんな色をした雲だから雨がよく似合うんだなと、通勤途中の車のフロントガラスを見ながら思った。そのふっくらした雲の割れ目から日光がもれ、目一杯に伸ばした光の帯で山の輪郭に触ろうとしている。五光が指すとはこんな感じなのだろう。そう思うと、さらに神秘的に見えた。
 でも、車内のラジオがホワイトデーの話題をはじめると次第に雲がマシュマロに見えてくるから不思議だ。こんな風に一週間の疲れを想像力でやりくりするのは楽しいが、たまには足を伸ばして温泉に入りたい。そして唐突に、「鱒の寿し」が食べたくなった。

 港町で育ったわたしは、普通の寿司でもちらし寿司や手巻き寿司でもなくて、鱒の寿しが1番珍しいお寿司に感じる。多分、地元のスーパーでお弁当フェアみたいなのをやると親が買ってきた記憶が強いからだろう。
 ピンクの魚がビッシリのっていて笹にくるまっているのを見て、新潟にも名物として笹団子があるから、昔の人は笹で包むのが好きなんだなぁと子供ながらに思っていた。それから、食べるときには小さなプラスティックののこぎりでギコギコして食べる食べ物なんて他には知らないから、鱒の寿しはやっぱり特別な寿司だった。
 こんな感じで週末にやりたいことが決まりそうだ。鱒の寿しは富山の名物。新潟と富山は隣で近いと思うかもしれないが、とんでもない。わたしの地域からだと、車でも片道四時間かかる。
 久しぶりに、仕事終わりにそのまま夜出かけようかな、どうしよう。
 仕事の休憩時間に、朝風呂に入れるところを探してみようと思う。

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