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リストカットの生徒(1)

昨日の午後は学校で補講でした。
私は5月の中旬から1ヵ月ほど日本に行っていたので、その間の補講が山のようにあり、先週の土曜日から徐々に始めていたのです。

昨日は対面レッスンの補講2回目。

毎土曜日は学校で対面式(オンラインも可)、毎金曜日はオンラインレッスンと予定を組んであり、生徒が選べるようにしました。

昨日は土曜日でしたので学校で対面式レッスンだったわけですが、気温が27℃と低めで助かりました。
このところ、30度を超える日ばかりでしたからね、、。


午前中〜お昼はちょっと曇っていて、暑さも控えめでした。


さて昨日は補講を終えた後、待ち合わせをしていた生徒とアイスクリームを食べに行きました。

一週間前、ある生徒が急に「先生とアイスクリームを食べに行きたいです。」と言い出したので、「そお?じゃ、行こうか!」となったのです。


学校の近くを流れる可愛らしい小川

小川の近くのジェラート屋さんでアイスクリームをテイクアウトし、この小川のほとりに座って食べました。

この生徒は数ヶ月前からリストカットの問題を抱えていて、精神科に通ったり入院したりしている生徒。

実は私の昨日のメインは、この【小川のほとりに座って食べるアイスクリームの時間】、でした。

午前中からお昼過ぎまで結構な曇り空だったので、お天気が心配だったのですが、アイスクリームを食べに行く待ち合わせの時間にはお日様もバッチリ顔を出し、晴天になっていました。

リストカットの生徒というと、私には忘れられない思い出があります。
私は25年前に、リストカットで苦しんでいる生徒を教えたことがあるのです。

その子は音大の3年生でした。

25年前、リストカットの出血多量で生徒が救急搬送されたという知らせを受けた時には、もう目の前が真っ暗になって私がどうかなってしまいそうでした。

でもあの25年前の経験があるからこそ、今回は冷静でいられます。

25年という長い年月が過ぎても、覚えているものなんですね。
当時のいろいろなことが、一つ一つ、私の記憶の奥深くから掘り起こされ、映像が見えてきました。

さて、小川の流れを眺めながらアイスクリームを食べて、ゆっくり流れていく時間を過ごしていると、生徒がリストカットの傷痕を見せてくれました。

彼は腕だけではなく、膝から下もカットしていました。

でも、傷はみんなどれも浅い。
25年前の生徒の、深い、眼を背けたくなるような無数の傷とは対照的です。

「あ、コレは大丈夫だ。きっと彼のリストカットは早期に治るはず。」
と、直感しました。

昨日は、「独りじゃないよ、先生も君と一緒に悩むから。ピアノのレッスンも先生と生徒の共同作業だけど、この問題でも共同作業をやるんだから。君の悩みや苦しみを、先生にも分けてよ。」と言いました。

それと、「先生が君のことを愛しているということ、今日のこの小川の綺麗な流れや日差し、忘れないでね。」と。

あと、「文句とか不満とか、毎日一個は必ず口に出して言いなさいよ。文句とか不満とか、言っていいんだよ。言った後に『ん、でも、待てよ、、。』っていう第2ステップがあって、そこでもう一度考えるんだから。」とも。

彼は、とにかく優しすぎるんです。

誰に対しても、何をされても文句を言ったり怒ったりしない、、、というか出来ないんですね。

でも世の中や政治の不条理に関しては、とても感情的に鋭い批判をしますから、【怒り】という感情はちゃんとあるんです。

でも、それは個人、人に対しては表せない。

その抑えつけられている怒りが自分に向かい、自分を傷つけてしまうんではないか、、と私は思っています。

精神科医も私と同じ意見だそうで、その原因となったこと、体験、などを探す分析をしているんだそう。

でもリストカットまではいかなくても、感じた怒りを外に出せず自分に向けてしまって、何かの形で自分を傷つけてる人って結構いるよね、うん、いるよね、、、なんて思いました。

怒りを他人に向けて他人を傷つけるか、自分に向けて自分を傷つけるか、、、方向の違いってことなのかも、、なんてことも思いました。

私の25年前の生徒は入院治療で普通の生活が出来るようになり、無事音大も卒業出来、学校の先生になりました。

なので、彼も絶対大丈夫!
そう信じています。

25年前と同じく、今回も後方から支えていきます。

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