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ピアニストになるために必要なこと(3)

このハンガリー人の生徒を数回教えていくうちに、だんだん明らかになってきたことが、、。

それはまず、【彼女がハンガリーの英才教育システムで何を教わってこなかったか】ということ。

彼女が習って来なかったものとは、ズバリ【音楽は人が人のために作った】ということでした。

彼女はハンガリーの学校でピアノを扱うことを習い、そのテクニックを使って数々のピアノ曲を弾いてきたのです。

でも、曲を書いたのは、作曲家という職業の【人間】。
生身の人間なんです!!!
バッハもモーツァルトもベートーヴェンもショパンもリストもみんな人として、決して楽ではない人生を生きていたんです。

作曲家によって性格も性質も違うし、生きていた時代も環境も生い立ちも違う、、。もちろん、抱えていた悩みも違います。

なので同じ音楽用語、記号を使って譜面を書いても、作曲家によってニュアンスの違う使い方、書き方をしているのです。

楽譜を読めば、記号や用語の使い方で作曲家の性質も読み取れるんですが、彼女はそういうことを習ってきていないので、判で押したように表現のニュアンスが同じ。

音楽用語も記号も、【時代によって違う使われ方】だけを考慮して弾き分ければいいだけじゃなくて、作曲家によって微妙に用い方が違う、ということを教わっていないのです。

そして、更に、、、。

その作曲家たちの書いた新曲の発表を、当時の聴衆たちはどんな風に心待ちにし、どんな風にエキサイトして聴いたのか、、、とか、、。
つまり受け取る側の人間たち、、、その人たちにとってはどうだったのか。
彼らはどんな時代にどんな暮らしをしていたのか。

などなど、、、そういった【鼓動】や【呼吸】【人生】【生命】こそが【音楽の中身】です。

つまり、ハーモニー、メロディ、リズム、構成など、作曲するのに用いられている全ての要素、技法が、それぞれの作曲家によって【音楽の中身】を表現しているのです。

それが演奏家としてのベースとして当たり前にあって、楽譜を読み解き、理解しなければピアノは弾けません。

、、、、けれども、、、コレは今から、今の彼女のレベルから教えられるのか、、?
タイミングが遅過ぎるんじゃないのか?
そして、私にそれを、彼女に今から教える力量があるのか?

わからない、、、。

正直、これはほぼ【賭け】だ、、、と思いました。
でもそれがわからなければ、彼女はハンガリー時代のトラウマから抜けられない、とも思いましたし、私のコンサートを聴いて彼女が私に習いたいと直感的に思ったという理由が、そこにあったのかもしれないとも思いました。


彼女が聴いたと思われる私のコンサート

まず、、、このことをどうやって切り出そう、、、?

彼女が私の言葉に傷つくことなく、「確かに、、、本当にそうだ、、。」と感じられ、自然にスッと腑に落ちてくれるといい、、、。

彼女が何か曲を弾いた後で説明すると、「多分、自分の演奏の出来不出来の方が気になってしまうだろうな。」と予測し、私がいろいろな作曲家のピアノ曲を弾いて、譜面を見せながら説明するのがいいだろうな、と思いました。

ということは、、、、まず説明に使う曲選びと楽譜の用意か!

さっきまでの悩んでいた私は消え、「うっしゃ!頑張るぞ!」という気持ちになってきました。

私は、頑張らなきゃいけない時には、必ず【ロッキーのテーマ】(古くてすみません、、、爆)が脳内自動再生されることになっているのですが、この時も【ロッキーのテーマ】はしっかり脳内再生されていました。




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