月兎紬
君の嘘を破ったら 白い鳩と虹が飛び出した 夜の闇を詩ったら 海が嫉妬で荒れていた 夏の雲を齧ったら 時の流れがわからなくなった 胸の傷を開いても 僕は一人のままだった 蛍たちが輝く前に 蜃気楼が揺らめいて 記憶の中の君が消えそうで 慌てて顔を両手で覆った 了
どうしてこんなに言葉を紡ぐ どうして同じ夢ばかり見る 愛を例えて何になる 画面を埋めて何を生む 雨が鴉が酒が太陽が 夏がハートが迷いが闇が 君を救えぬこの僕が 無力に沈むこの声が 通りであの日のままだった どうして同じ事ばかり詩う 君を失くして何を得る 詭弁に埋もれて何を詠む 愛を果実を砂漠を旅を 凪を蜂蜜を魔法を安らぎを 誰も救えぬこの僕を 無傷で怯えるこの胸を 誰が許してくれようか 罰として生きてみせようか 星が降るなら両の目に 閉じ込めるなら望遠鏡に 償いきれない程の生
包み紙は夜の空 天の川のリボン解いて 澄んだ空気に小指重ねて 閉じかけたドアに左手添えて 間に合うように秋の夢 絶やさぬように隙間埋め 病んだ湿った小指重ねて 1、2の3で柵を飛び越えて 本当は飛べると知ってるわ きっともう一度会えるよね イヤホン外して確かめる 月もそこにちゃんとある 了
赤い糸 その小指ごと 切り落とし 染めあげたなら 火の鳥のよう 了
わざわざこんな砂浜の近くまで来て、何してんのかなぁ。月見るだけなら、別にどこでもいいんだよなぁ。 最近よくないな。なんか、こう、電気が走ることもないし。ま、そもそもそんな出来事もないもんな。当たり前か。昼間は海水浴とかで人が多くて嫌になる。まだ七月になったばっかなのに、早すぎないか?夜はいいねやっぱり。一人占めだな。 こうしてると、夜の空に浮かんでるみたいだなぁ。嫌なことも忘れちゃうね確かに。少し先で魚が跳ねてる。気持ちいいだろな。自分にはできないけど。 なんでも透き
両手いっぱいの花束も きっと枯らせてしまうから せめて僕の涙でよければ どれだけでも注ぎましょう コップいっぱいのサヨナラも そっと飲み干してしまえたら やがて僕の涙となって またあなたに注ぐのに 精一杯の魔法でもって やっと少しだけ笑顔にできる 涙と笑顔の交換じゃ 喜んではくれないか だから僕の涙を固めて あなたの耳に飾ってくれたら 両目いっぱいの水溜り もっと降らせてアメフラシ せめて君の花が枯れるまで あわよくば月が沈むまで リップ一回塗ったくらいで てんで潤ったりし
さて、幕間です。 生きていれば、色々ありますよね。自分がわからない、自分が許せない、自分を愛せない、他者がわからない、他者を許せない、他者を愛せない、愛してもらえない。だいそれたことは言えませんが、そんな時は心に栄養をあげるといいかなと思ってます。美味しいものだったり、スポーツだったり、映画だったり、お散歩だったり、音楽だったり。数学が苦手な人は(紬さんは苦手w)、定数をいじろうともがくらしいですよ。でも定数なんていじれないのです。(定数なんでw)変数をなんとかしようとする
スマートフォンの夜の孤独を ネオンの街の矛盾の闇を LEDの豪雨に弱虫の影を デジタルに進む黒い有限を 偽物ばかり明るくて 私の光に気づいてないの お風呂上がりの両手で耳を バスソルトの香りで鼻孔を 蜂蜜のようなキスで唇を 勿論両目は瞑っていてね ほら真っ暗なのに暖かい 私の光に気づいたでしょ だって私は生きている だって君も生きている 了
頭にコツリと何か落ちてきた 地面をみると惑星が転がって 暫く眺めて煙草をふかす フィルターまではまだ十分 こんな小さな灯りでも こんな夜をか弱く照らして 手を伸ばして惑星を拾った 殻を破いて中身を出した 暫く眺めて長く息を吐く フィルターまではあと少し こんな燦く種だとは こんな僕の全部を染めて 気づかないふりは終わりだな 最初っからわかっていたよな 君を上手に愛せるかでなく こんな僕をどう愛するかだ 割れた惑星の殻を集めて 君の住む街の夜空に浮かべた 了
ノートの隅に落書いた 惑星をこの空に浮かべたら 少し未来が明るい気がした 温い温度ではしゃぐ風に カーテンは揺れて踊るのに 私の心はすんと黙って ルージュをひいて大人ぶった ヒールを履いて空に近づいた 少しなんでもできる気がした 帰り道はひどく静かで 車を降りても耳が痛くて 私の心も少し痛くて 早く大人になりたいなんて 文字にしたって子どものままで 頭上の惑星に名前をつけて バレないように君に放った 了
駅前の珈琲店に伸びる列 向かいの交差点の傘の海 学校鞄が弾ける夕暮れ 横断歩道の隙間の安堵 悲しいとかは全くない 寂しいとかも勿論ない ただ被弾したこの胸を 塞ぐための手段がない だから孤独と綴っても 何かうまく嵌まらない だけど孤独と詠うしか 僕は僕を誤魔化せない 誰かと照らし合うためのアリア 強がり嘘つき歌い上げたなら 草原に一つ光が差して 画面の向こうに帯びる熱 電子の格子点の雨の粒 毒林檎を齧った真夜中 真っ暗闇がもたらす不安 嬉しいとかは多分ない 正しいとかも勿論
海の月だと言い張って 君が放った電気に痺れ 夢芝居だと言い聞かせ 紅を重ねた心は浮かれ 星の屑だと言うくせに 君が放った光に見惚れ 額紫陽花と夜が重なり 藍を隠した私は千切れ 空の器へと言葉を注ぎ 泣き始めた心を宥めて 愛だったと漸く気づき 白く散った花弁を喰む 了
花の色が貴方に移り また私は記憶に追加 悪戯だって繰り返したなら 眺めも変えてしまうよな 川の流れに言葉を映し ビリビリに破く五秒前 巻き戻しのないこの世界だから やっぱりまた逢いたくなるよな 再び菖蒲が咲く頃に 雨を押しのけて此処に来たいな 何種類も咲いていたって 今日の香りに気付いてみせるわ 了
終わり紅の頬を伝う 思い出すだけで今でも痛む 切り傷さえも残しておこう さよならなんて認めない みんな諦めて生きている 夜明けを寝ぼけて見つめてる 借り物の夢が剥がれても 生きたいなんて思わない ならなぜそこに涙は流れ やれ恋だ嘘だと謳うのさ 群青色に立て篭もる僕は さよならなんて認めない 了解
さて、お久しぶりです。 幕間です。 一つやってしまいました、わたし。 先程、noteの詩を整理していたら、気づきました。「歪」という名の作品が二つ存在していました。つまり、しりとり失敗です。。。以前、「ハート」という作品で同じ失敗をしそうになり、ギリギリで気づき「ハートの2」と名付けて失敗を回避したのですが、「歪」はノーマークでした。とはいえ、まぁ、自分の中のregulationなので、このまましりとりを続けます。あ、紬さんの作品は題名がずっとしりとりになっています。(ミス
怖くて羽根も開けない 飛ぶ空があるかもわからない 錆びた釘が抜けないように 鯨の群れに隠れるように 愛が何かと叫んだら 誰が答えてくれるのか 帯電しては知らないふりで なかったことにしてきたな 画面に残る言葉の雨を 記憶に積もる想いの山を 心に居座る貴方の影を なかったことにできたとて 了