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グラス _ 詩

駅前の珈琲店に伸びる列
向かいの交差点の傘の海
学校鞄が弾ける夕暮れ
横断歩道の隙間の安堵
悲しいとかは全くない
寂しいとかも勿論ない
ただ被弾したこの胸を
塞ぐための手段がない
だから孤独と綴っても
何かうまく嵌まらない
だけど孤独と詠うしか
僕は僕を誤魔化せない
誰かと照らし合うためのアリア
強がり嘘つき歌い上げたなら
草原に一つ光が差して

画面の向こうに帯びる熱
電子の格子点の雨の粒
毒林檎を齧った真夜中
真っ暗闇がもたらす不安
嬉しいとかは多分ない
正しいとかも勿論ない
ただ被弾したこの胸を
見ないための手段がない
だから孤独と綴っては
何か視界に映せるように
だけど孤独と詠っても
なんの孤独も誤魔化せない
私を照らし出すためのオペラ
音も舞台も何にもないまま
硝子は無数にひび割れて

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