Trip|私のフィンランド探訪記 〈02.フリーマーケットで宝さがし〉
フィンランドの美しい自然とデザイン、そこに暮らす人々に魅了され、その魅力を発信する活動を行うイラストレーター・フォトグラファーの入海ヒロさんがお届けする、“読む”フィンランド旅。例年、多くの屋外イベントが開催される8月のフィンランド。今回は、ヒロさんが訪れた現地のおすすめフリーマーケットを教えてくれました。
フリーマーケット巡りは、フィンランドでしてみたいことのひとつ、という人も多いのではないでしょうか。ヴィンテージの器や洋服、雑貨など、お目当てのものが見つかるかもしれないし、ときめく出会いがあるかもしれない。まるで宝探しのように楽しいものです。
8月のフィンランドでは、街全体がフリーマーケットになるSiivousPäivä(クリーニングデイ)をはじめ、実に多くの魅力的なフリーマーケットが開催されます。そこで今回は、現地を巡ったその様子とヘルシンキで人気のセカンドハウスショップをご紹介します。
SiivousPäivä(クリーニングデイ)
毎年春と夏。ヘルシンキを中心にフィンランドのあちこちで開催されるSiivousPäivä(クリーニングデイ)は、「アップサイクル・マーケット」がコンセプト。古い不要なものを生まれ変わらせ、新しい価値(ストーリー)をつけることを目指した、リサイクル・カルチャーイベントです。
フィンランド人は中古品好き。この日は家で使われなくなったものを、誰もが自宅の前や公園などに集まって販売することができ、どこもお祭りのような賑わいです。一般の人たちが出店するので日用品が多めなのですが、私たち日本人にとってはお宝のようなものもたくさん!中にはハンドメイドのスイーツやアクセサリーを出している人もいます。
フィンランドの友人から「クリーニングデイに行くならKarhuPuisto(クマ公園)がオススメ!」と教えてもらいました。クマ公園は若者やアーティストが多く住んでいるカッリオ地区にあります。ヘルシンキ中心部の会場と比べて、地域の人や学生たちが出店しているため、ローカルな雰囲気が味わえるそうです。
クマ公園はトラムの線路沿いにある三角形の公園で、大きなクマの像が目印です。公園内の木陰や道路沿いに、ざっと50店舗以上はあったでしょうか、たくさんの出店者が思い思いの品を並べています。
私は会場を何度も回って、ハンドメイドのお菓子を買ったり、コーヒーをもらったり。出店者さんとのおしゃべりもフリーマーケットの醍醐味です。時にはディスカウント交渉も。
日本でフリーマーケットといえば、テントを組み立たりテーブルの上にこだわってディスプレイしますが、ここでは看板もなく、芝生や道に平置きしたり、木に吊るしたりと結構ラフ。これが無造作なのに計算されたかのようなフォトジェニックな配置で、ついつい惹き込まれてしまう。
そこにある自然をそのままに取り込む素朴さに、夏のフィンランドでよく見かける、岩場や芝生の上でピクニックしている光景を思い出しました。フィンランドの人たちは、大地との距離が近いような気がします。
こちらは、わたしが購入したmarimekkoの子ども服。脇に付いたタグには、油性ペンで「TYYNE」と名前が書かれていました。「TYYNEちゃん、これを着て保育園に通っていたのかな。今は何歳になっているんだろう。」と、想像を巡らせます。
50年ほど前のmarimekkoのファブリックも購入しましたよ。テーブルクロスとして使われていたようで、両端が縫ってありました。破れも汚れもなく、大切に保管されていたことが分かります。手作りのカゴは、店主さんに素材を尋ねるも「う〜ん」と首をひねり。おじいちゃんのものだったそうで、「Tosi vanha!(とっても古い)」と笑いながら教えてくれました。こちらで購入した品々は時を超えて今も、私の家で大活躍しています。
Hietalahti Market(ヒエタラハティの屋外フリーマーケット)
次にご紹介するのは、Hietalahti(ヒエタラハティ)の屋外フリーマーケット。場所は、ヘルシンキ中心部からのアクセスが分かりやすく、ガイドブックにも頻繁に掲載されていてご存知の方も多いHietalahti Market Hall(ヒエタラハティマーケットホール)。カフェやレストランなどが入るマーケットホール前の屋外広場で、例年夏季には毎日開催されています。
ここは、ARABIAやmarimekkoなど日本でも人気のヴィンテージ品が多く、フィンランドデザインが好きな方必見のスポット。目当てのものが見つかりやすい品揃えです。私の他にも何人もの日本人がショッピングを楽しんでいました。店主さんたちは外国人観光客への対応にも慣れている人が多く、初めてのフリーマーケットでも安心して買い物を楽しめると思います。
出店数が多い夏、そして品数が多い午前中が特にオススメ。早起きして行った会場で、朝陽を浴びてキラキラと輝くヴィンテージのガラスにうっとり。こちらは、その時の早朝の澄んだ空気とワクワク感を思い出す、とっておきの写真です。
こちらで購入したもののひとつが、TEEMA(iittala)シリーズの前身であるKILTA(ARABIA)のカップ&ソーサー。店主さんに話を聞くと「優しい黄色がきれいでしょ。今はもう作られていない昔のシリーズだよ」と教えてくれました。このカップを見ると、途中で割れたりしないように一旦ホテルに置きに帰った、その時のほくほくした気持ちを今も思い出します。
Fida(フィンランド最大のセカンドハンドショップ)
最後に、セカンドハンドショップをご紹介します。「私たちは良いものを長く使う。壊れても修理して使うよ」。現地で出会ったフィンランド人たちからこの言葉をよく耳にしたものです。一方で「セカンドハンド=次の使い手に譲る」という習慣があり、使わなくなったものを売り買いできるお店、セカンドハンドショップは街のあちこちにあります。
ホームステイをしていた頃、ホストマザーが連れて行ってくれたのは、フィンランド最大のセカンドハンドショップのチェーン「Fida」。オレンジ色の外装が目印です。リーズナブルな価格帯のものがずらり。たくさんの日用品に紛れ込んでいる宝物を発掘する面白さが味わえます。
ホストマザーが以前Fidaで買ったというKERMANSAVI(ケルマンサヴィ)のカップとプレートのセット。KERMANSAVIの食器は2011年に生産終了となりましたが、今も一般家庭やカフェ、レストランで広く親しまれています。
私はKILTAのダークグリーンを発見しました。数ユーロで購入。
Fidaはその売り上げを海外での開発プログラムへ寄付する取り組みを行っています。そういうお店で買い物をするというのも、個人ができる社会貢献のひとつかもしれません。会計の時、レジの女性がひとつひとつ、商品の説明と価格をゆっくりと、私が聴き取りやすいように発音してくれたことも、企業のピースフルなマインドに触れたようでとても思い出に残っています。
フリーマーケットやセカンドハンドショップは、人と人との繋がりや温もりを、ものを介して感じることができる場所。趣きのあるヴィンテージを手に取ると「確かにこれを使って暮らしていた人がいたんだな」と、時間や文化を越えてフィンランドの人と思い出が共有できるような気がして、心が躍りますよね。
現在は開催内容や規模が縮小されているところもあるかもしれませんが、実際に訪れる機会がきたら、ぜひ宝探しのワクワクを味わってみてください。
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