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Lifestyle|17歳、フィンランドからの手紙 〈14.道は続くよどこまでも〉

小さな頃から森が身近にある日々を送り、いつの日も自然とともに過ごしてきたcocoroさんは2021年の夏、憧れの地・フィンランドへひとり旅立ちました。渡航から1年半が過ぎ、18歳になった彼女は今、何を思い何を感じているのでしょう。まっすぐに見つめたフィンランドを綴ります。

Moi!cocoroです。

2021年、17歳の夏。高校留学のため一人フィンランドにやって来てから、もうすぐ2年。その頃からずっと続けてきたこの「17歳、フィンランドからの手紙」の連載は、今回で14回目になりました。時おり以前のコラムを読み返すと、当時の自分の気持ちや記憶が蘇ってきて、タイトルのとおり、このコラムは私自身の“今”を書き留めた「手紙」なのだと感じます。

8月からは高校2年生。学業にさらに専念するため、コラムの連載を終了させていただくことになりました。今回はこれまでの2年間を振り返りながら、フィンランドで暮らす中での想いや気づき、そして今、私が大切にしていることをお話しします。

何千もの湖と豊かな森が、いつも暮らしのそばにあるフィンランド。その美しくも厳しい自然環境は、古くから人々のライフスタイルに影響を与え、「自然と共に生きていく」という共生の思想を作り上げてきました。自然を慈しみ、自然と調和する。この地でその思想とともに生きる人々は強く、たくましく、それでいて素朴で謙虚。そんな彼らの生き方にこそ私は惹かれ、ここフィンランドで学んでいます。

私にとっても森は、いつだって初心に帰ることができる場所であり、特別な存在。森や木々は言葉を持ち合わせていないけれど、そこに静かに身をおけば、自分自身の答えを見つけることができる。森にはすべての気づきが詰まっていることを知り、この実感が、今のわたしの中に深く根付いているのです。

フィンランドには、冬の間の日照時間が極端に短くなる「極夜」と呼ばれる現象があり、北のラップランド地方では、1日にたった2時間しか太陽が昇らない時期も。朝になれば太陽が昇り、夕方になれば沈む。そんな常識でさえもフィンランドの大自然を前にすると、いとも簡単に覆され、実際の生活の中で北国の冬の厳しさを目の当たりにしてきました。

でも、だからこそ、太陽が輝いた日には思わず小躍りしたくなるほどの喜びで心がいっぱいになる。「なんて美しいんだろう」「今ここにいられるなんて、私はどんなに幸せなんだろう」そう心の底から感動している自分がいて、この自然と共にある暮らしの一瞬一瞬が、とても繊細に尊く感じられるのです。

そして、もうひとつの大きな気づき。

たとえ遠く離れていても、家族がいること。どんなことも話せる友人がいること。夢や目標があること。そして、今この瞬間を生きていること。今まで当たり前のように思っていたことがどんなに素晴らしいことか、フィンランドで深く思い知り、今あるものの尊さや日々の小さな幸せへの感謝、自分の気持ちの変化をより鮮明に感じるようになりました。

「もっと、フィンランドで学び続けたい」

本来は1年間の予定だったこの留学。でも、学べば学ぶほどフィンランドが好きになって、もっとここで学び続けたい想いが芽生え、昨年フィンランドの高校に入学。高校1年生から学び直すという大きな決断をしました。現在は留学生としてではなく正規の生徒として、フィンランドでの高校卒業、そしてフィンランドでの将来を想い描きながら勉強しています。

日本の高校や交換留学の期間も含めると、トータルで5年間の高校生活。卒業する頃には20歳。「留年」というと日本ではマイナスのイメージですが、フィンランドでは3年半や4年に期間を延ばすのはごく普通のこと。またそれは強いられてではなく、生徒自身が自らの意志で学びの形を選択し、自分のペースで学習を進めることが重要とされていて、留年は学びの質を補える期間だとポジティブに捉えられているのです。

常に個人が尊重されるフィンランドでは、世間体を気にする人は誰一人としておらず、他者と比べて良い悪いや「こうあるべき」という通例によって制限されることも、自分の限界を決められることもありません。ここフィンランドで何よりも大切されているのは、誰もが自分らしくいること。何をしたいのか、何を学びたいのか。大事なのは、自分の意志ひとつ。そしてそれに応えるように、大学院までの学費の無償制度など、すべての人が平等に伸び伸びと学べる場が用意されているのです。

「あなたの夢や目標に対する強い意志を感じます。このような提案をしてきた留学生は初めてですが、学校にとってもポジティブな挑戦になるでしょう。喜んで入学を許可します。」

1年の交換留学後もフィンランドで学び続けたい意志を初めて伝えた時の、校長先生のこの言葉。

17歳で一人やって来た日本人の私にもフィンランドの教育は平等に開かれ、その純粋な意志を言葉一つで受け入れてくれたフィンランド。可能性は無限大であること、そして自分を信じて挑戦することがいかに大事かを確信し、今、私はここフィンランドで生き生きと学び続けています。

それでも人生には誰も予想できないような逆境もあり、本当に何が起こるか分かりません。16歳の時、出発直前にパンデミックによって留学が突然中止になるなんて思ってもいなかったし、ましてや、5年間の高校生活や憧れのフィンランドで学び続けられるなんて、本当に想像すらしていなかった道。でもどんな困難があろうとも、自分が信じた道を追求していったからこそ、いろんな可能性が自然と開けて今があります。何よりも、自分らしく生きていると、胸を張って言えるのです。

フィンランド語にSISU(シス)という言葉があります。それは、厳しい状況の中でこそ、前進するために何をすべきか考え抜くこと。困難に立ち向かう勇気。諦めず挑戦し続け、自分の限界を超えていく生き方。それこそがフィンランド人の精神力「SISU」だといわれています。

困難や逆境があってこそ、人は成長できる。そう私は信じます。
そして誰しも一度きりの人生。その人生に決まったレールはありません。世界はこんなにも広く、可能性はどこまでも無限大。だからこそ失敗を恐れず、困難にもひるまず、常にチャレンジし続け、どんな時も自分らしく、強く生きていきたい。この「SISU」という言葉に込められた開拓精神や挑戦の心は、これからもずっと私の信条です。

今年の冬休み、北極圏へ一人旅
人生初めてのオーロラ

この「17歳、フィンランドからの手紙」の連載を通じて、大好きなフィンランドをたくさんお伝えできたこと、嬉しい気持ちでいっぱいです。長い間読んでくださり、本当にありがとうございました。

また会う日まで、moi moi!
フィンランドから、cocoroより

《 これまでの連載 》
1.出会いと旅立ち
2.フィンランドの高校生に聞いてみた!
3.北の国のクリスマス
4.自然と生きる。
5.サウナで感じる大自然
6.自分らしく学ぶ
7.フィンランド語
8.幸せの理由
9.冬の楽しみ方
10.ロヴァニエミ旅行記vol.1
11.ロヴァニエミ旅行記vol.2
12.北極圏の暮らし
13.春の訪れ
14.道は続くよどこまでも