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Lifestyle|17歳、フィンランドからの手紙 〈06. 自分らしく学ぶ〉

小さな頃から森が身近にある日々を送り、いつの日も自然とともに過ごしてきたcocoroさん。昨年の夏、憧れの地・フィンランドへひとり旅立ったcocoroさんは今、何を思い、何を感じているのでしょう。17歳の彼女がまっすぐに見つめたフィンランドを綴ります。

Moi!(モイ!) cocoroです。

3月下旬、サマータイムに変わったフィンランドと日本との時差は6時間になりました。サマータイムとは、夏の日照時間が長い国や地域で、時計を標準より一定時間早く進めること。太陽が出ている時間を有効に使い、1日を長く楽しむための仕組みです。4月下旬現在は、私が住むタンペレでは6時に日が昇り、21時半に日が沈みます。部屋の窓からは、夜ご飯の後も外に出て楽しそうに遊ぶ子供たちの姿が見えます。

今回のコラムのテーマは、フィンランドの教育について。実際に現地の高校で学んでいる私が感じたことをお伝えしていきます。


湖の上の兄弟

私は今、4人家族のホストファミリーと一緒に暮らしています。やんちゃな2人兄弟のお兄ちゃんは11歳、弟は6歳です。

フィンランドの義務教育は基礎学校(9年)と高校(3年)の12年間。小学校の前にはプレスクールに1年間通い、その前には多くの子供が保育園に通います。子供が1歳、または3歳になった時に保育園に預け、仕事に復帰する人が多いそうで、子育てをしながら働くお母さんやお父さんをサポートする仕組みが整っています。

ホストブラザーが通っている保育園では、勉強の時間、友達と遊ぶ時間、そして森の時間、この3つが大切にされています。この“森の時間”というのは、先生とクラス全員で近くの森へ行き、自然の中で過ごす時間のこと。森でレクリエーションをして遊んだり、ご飯を食べたり、枝や葉っぱを使ってアルファベットや数字の勉強をしたりするのだそう。フィンランドらしい方法で、とても素敵ですよね。

短い時間で集中して勉強し、たくさん遊ぶ。フィンランドではそれが子供たちにとって良いとされています。放課後の部活やクラブはなく、高校も13~15時に授業が終わるため、自分の好きなことや興味のあることにたっぷりと時間を使うことができ、そんなふうにメリハリをつけることで、学校の外でも自分自身を伸ばす時間を持ちながら、勉強に対してもしっかりと取り組むことができるのです。

高校の音楽室

フィンランドの学校はアットホームな雰囲気。教室や廊下にはソファやクッション、ブランケットがあって、生徒がリラックスして勉強できる居心地の良い環境になっています。

フィンランドの高校で学ぶ中で強く感じること。それは「個性を尊重する教育」です。制服はなく、自分が着たい服を着て、学校へ行く。試験では時間制限がなく、自分の好きなだけ時間をかけて考え、答えを出すことができる。能力別にクラス分けされることもなければ、他の生徒と競ったり、成績を比べられたりすることもない。制限されたり、自分の限界を決められたりすることなく、自分の意思で伸び伸びと学べる場があります。

生涯教育の理念があるフィンランドにおいて、
生きることは学ぶこと。
図書館では今日もたくさんの人々の姿があります。
(ヘルシンキ中央図書館にて)

常に生徒ひとりひとりに寄り添い、向き合い、自主性を軸としながら生徒をサポートし、教え導く。それがフィンランドのすべての先生に共通する精神でしょう。そしてそんな先生たちがいつも傍にいるから、生徒は安心して自ら学ぶことができる環境にあるのです。教師はフィンランドで最も難しい職業のひとつと言われていますが、だからこそ憧れる子供たちや志望する高校生が多いのだそう。それはきっと、常に子供たちに真摯に向き合う、その真っ直ぐな精神が理由なのかもしれません。

学校のランチタイムにて

フィンランドの教育で大切にされているもうひとつのことは、“平等”であること。フィンランドでは、保育園から大学まで、授業料はもちろんのこと、テキストや給食、授業で使用するパソコンなどがすべての子供たちに無料で支給されています。「学びはすべての人のもの」、その考え方がフィンランドの教育の基盤を作っているのです。

現在、私は1年間の交換留学生として現地の高校で学んでいますが、フィンランドでの生活を通じて、自分らしい生き方を知り、ここでもっと学び続けたい気持ちが芽生えました。高校の校長先生にその想いを伝えたところ、「あなたの夢や目標に対する強い意志を感じます。そのような提案をしてきた留学生は初めてですが、学校にとってもポジティブな挑戦になるでしょう。喜んでサポートします。」そう言って、フィンランドの高校生と同じく卒業まで学ぶことを許可して頂けたのです。

このように、フィンランドの教育が外国人の私にも平等であることに、とても驚きました。そして何よりも、私の気持ちにじっくりと耳を傾け、教え導いてくださる先生方の言葉や姿勢から、この国がいかに生徒ひとりひとりを尊重しているかを、身に染みて感じています。「教育は常に平等であり、その教育の中心は子供である」という至ってシンプルな理念を、本当の意味で実践し、守り続けているのが、フィンランドの教育なのです。

フィンランドでは6月上旬から夏休みが始まり、8月から新学期が始まります。その2ヶ月間、小学校でも高校でも宿題は一切なし。そんな夏休みをフィンランドの子供たちはどのように過ごすのでしょうか。

フィンランドでは家族と旅行をしたり、夏の習い事(サッカーや水泳、キャンプ)に行く子供たちが多いそう。外での時間を思いっきり楽しんで、夏休みを過ごします。高校生の多くは、サマージョブ、夏の間だけのアルバイトをします。私の友人もアイスクリーム屋さんの屋台で働く予定でとても張り切っています。(ちなみにアイスクリームはフィンランド人の大好物!)

フィンランド人はみんな夏が大好き。暗く、寒さの厳しい冬を乗り越えた先には、太陽が1日中強く輝き続ける夏がやってきます。湖で泳いだり、地方のサマーコテージに泊まってサウナを楽しんだり。まるで時間の流れが違うように、それはゆったりとしていて、家族や友人とだけでなく、自分自身との時間も大切にしながら夏を過ごします。

私も夏休みには日本に一時帰国するので、家族や友人と会える日が楽しみです。しばらくコラムはお休みさせていただきますが、9月のコラムでまたお会いしましょう!

Moi moi!