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Lifestyle|17歳、フィンランドからの手紙 〈11. ロヴァニエミ旅行記 vol.2〉

小さな頃から森が身近にある日々を送り、いつの日も自然とともに過ごしてきたcocoroさんは昨年の夏、憧れの地・フィンランドへひとり旅立ちました。渡航から1年が過ぎた今、18歳になった彼女は何を思い、何を感じているのでしょう。まっすぐに見つめたフィンランドを綴ります。

モイ!cocoroです。

前回に続き、ロヴァニエミでのひとり旅・後編をお伝えします。

ロヴァニエミの中心街はケミ川という大きな川で周りを囲まれていて、それをまたぐ橋は2つ。ひとつは北東へ、そして私が目指すOonasvaara(オーナスヴァ―ラ)は、南東へ向かう橋を渡った先にあります。

橋から見たケミ川

この日、私がしたかったこと。それは冬の森のハイキング。ロヴァニエミにはたくさん自然を楽しめるスポットがありますが、その中でもOonasvaara talvikävelyreitti(オーナスヴァ―ラ ウィンターハイキングコース)は中心街から近く、その展望台からはケミ川やロヴァニエミ全体を見渡せることで人気です。この日の気温は-6℃、天気は曇り時々晴れ。ひんやりした空気が漂う冬の朝、良いハイキング日和です。

橋を渡って5分ほど歩くと、ハイキングコース入口の看板を見つけました。その先に続く道を進んでいくうちに、どこもかしこも雪ですっぽり覆われた、真っ白の世界が広がってきました。

コースは少し緩めの勾配。ときどき歩みを止めて、早くなった呼吸と鼓動を整え、ひんやりした朝の空気を身体いっぱいに吸って空を見上げると、本当に気持ちが良くて!大きな冬の森に、雪化粧した木々と私ひとりだけ。そんな不思議で幻想的な空間にいるこの時間が尊くて、心から幸せでした。

ひたすら歩き進み、しばらくすると、展望台と焚火スペースのある開けた場所にたどり着きました。時刻は11時過ぎ。やぐらのような木造の展望台を登ると、ちょうど太陽が顔を出し始めていて!

地平線のずっとずっと先…
燃えるように輝く太陽、そしてその光を浴びて、雲や木々たちが暖かいオレンジ色に染められていく。森の向こうにはケミ川とロヴァニエミの街。今日の日もそこで暮らしを紡ぐ人々に、想いを馳せました。

展望台

フィンランドでは「極夜」と呼ばれる現象のため、冬になると日照時間が非常に短くなり、反対に、夏に日照時間が長くなることを「白夜」といいます。同じフィンランドでも南の地方に比べると、北のラップランドでは夏と冬との日照時間の差が激しく、冬は1日になんと2時間ほどしか太陽が昇らないことも。1月のロヴァニエミでは11時に日の出、そして13時半頃にはすでに辺りが真っ暗になります。

朝になれば太陽が昇り、夕方になれば日が沈んで夜がくる。そして次の日もまた、いつもと変わらず朝がやってくる。そんな今まで当たり前だと思っていたことや気にもしていなかったことが、フィンランドの大自然にいると、より繊細に、より深く、感じます。この惑星でたったひとつの太陽のおかげで、人やすべての生き物はこの瞬間も生命を繋いでいくことができている。自然の偉大さや尊さ。あの日見た朝日は、言葉にできないほど美しく、私の奥深くから、自然と力がみなぎってくるのを強く感じました。

展望台を降りると、広場のキャンプファイヤーで休憩している人たちが見えました。私も一緒に丸太のベンチに座って、冷えた身体を焚火で暖めながら、水筒に入れてきたベリーの紅茶を飲み、ほっと一息。

これはkuksa(ククサ)。ラップランドの先住民族であるサーミ人に古くから伝わる手工芸品のひとつで、白樺のコブをくり抜いて作られるマグカップ。フィンランド人なら1人にひとつ、自分の名前の焼き印が入ったククサを持っています。「cocoro」と印されたこのククサは、去年のクリスマスプレゼントにホストファミリーのお母さんからいただいたもの。白樺の木ならではのぬくもりを感じられるのが好きで、アウトドアやキャンプにはいつも愛用し、もちろん今回の旅にも持ってきました。

焚火では2人組の女性、そして小さな男の子2人とお母さんがmakkara(マッカラ)が焼きあがるのを待っています。このマッカラというのは、フィンランドのソーセージのことで、フィンランド人のソウルフードのひとつです。ハイキングコースやキャンプ場、湖のほとり、森の中、公共サウナなど、フィンランドには焚火スペースがたくさんあり、そこでそれぞれ持参したマッカラを焼いて食べるのが定番。去年の冬、ホストファミリーとスキーに行った際も、ゲレンデにある小屋に入ると、たくさんの人がみんなで焚火を囲み、マッカラを焼きながら和気あいあいとしていて、なんだかフィンランド人ってかわいいなぁ…と思ったものです。

だからこの日は私もフィンランド流で!前日に買っておいたマッカラをリュックから出し、さあ焼こうと思ったら…パッケージが開かない!隣に座っていた女性に「ハサミかナイフを貸してもらえますか?」と聞くと、「たくさん焼きすぎて余っちゃったから、私たちの分を食べていいよ!」と言ってくれて、親切にケチャップまでくれました。ロヴァニエミにひとり旅で来ていることやお互いのことを話して、最後は「Moi moi!(またね!)」と。こんなふうに話が弾むのも、焚火やマッカラのおかげなのかもしれません。


そして夜はまた、この日もオーロラ探しへ。

前日は深夜まで待っていたものの、残念ながら雲が多く、オーロラを見ることは叶いませんでした。「どうか今夜はオーロラに出会えますように…!」そう願い、胸を弾ませながら星が輝くラップランドの夜の世界へ出発です。

ガイドさんの運転で、ロヴァニエミの中心街から南方へ。そして約40分後、大きな湖に到着。凍った湖の上を歩いて行きオーロラを探しましたが、肉眼では何も見えず、次にカメラで北の空の写真を撮影してみましたが、やっぱりオーロラは写っていなくて…この日も雲が多いため、観察が難しいようでした。

「今日もダメか…」心の中でそう諦めかけたその時。「ほら見て、今日は雲の動きがとても早いよ。最近はオーロラの活動が活発だから、もっと南に行って雲が消えるタイミングが合えば、オーロラが見れるかもしれない!」とガイドさん。

その言葉を希望に、オーロラが現れるその瞬間を待ちながら、ひたすら南へ。その間にもガイドさんは何度も車を止めては、空や雲の状態を確認していました。時刻はもうすぐ深夜0時。これがオーロラを見る、最後のチャンス。

歩いて森を抜け、湖にたどり着き、空が一気に開けると…
なんとそこに、オーロラが!

満点の星空にゆらゆらと美しくなびく、エメラルドグリーンのカーテン。その光の強さはどんどん増していき、まるで私たちが来るのを待っていたかのように、次から次へと現れ始めたのです!

そして10分も経たないうちに、オーロラは余韻を残しながらも静かに夜空へと消えていきました。その光景はあまりに幻想的で、神秘的で、そしてあっという間で、まるで夢を見ていたかのような気持ちが残りました。きっと、こんなふうにして、ラップランドのオーロラは旅人の心を掴んで離さないのかもしれません。

そして、この日は偶然にも満月でした。月の光、星の輝き、風や雲の流れ。その一つ一つが巡り合って、重なり合って、そうしてこのオーロラに出会えた。そう思うと純粋に、感動せずにはいられませんでした。

この4日間の旅のなかには、北の冬の壮大で美しい自然がたくさん詰まっていて、私はすっかりラップランドの大自然に魅了されました。今度はさらに北へ冒険してみよう。そして、太陽が輝き続ける、白夜のラップランドにも。

2回に渡って旅行記を読んでくださった方、ありがとうございました。
また次回のコラムでお会いしましょう。

Moi moi!

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