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Lifestyle|17歳、フィンランドからの手紙 〈01.出会いと旅立ち〉

小さな頃から森が身近にある日々を送り、いつの日も自然とともに過ごしてきたcocoroさん。今年の夏、憧れの地・フィンランドへひとり旅立ったcocoroさんは今、何を思い、何を感じているのでしょう。17歳の彼女がまっすぐに見つめたフィンランドを綴ります。

Moi(モイ)!はじめまして、cocoroです。

わたしは今年の夏からフィンランドの高校に留学しています。このコラムでは、現地の人々との暮らしの中で感じたことや体験したことを、高校生ならではの視点と等身大の気持ちとともに、お伝えしていきたいと思っています。はじめての今回は、フィンランドに興味を持ったきっかけや高校留学を決意した理由、そして今の暮らしについてお話しします。


フィンランドとの出会い

わたしは幼い頃から自然に触れることが多く、森で遊ぶことが大好きでした。家族3人で切り開いた小さな森がわたしの1番のお気に入りの場所。父が作ってくれたブランコやハンモックで遊んだり、珍しい葉っぱや木の実を集めたり、森の手入れを手伝ったり…。そんなふうに、自然との関わり合いを何よりも大切に育ちました。

画像12森の中のハンモックはお昼寝に最高の場所

画像12父が作った小屋の上で

わたしにとって森は、いつだって初心に帰ることができる場所であり、特別な存在。森や木々は言葉を持ち合わせていないけれど、そこに静かに身をおくことで、自分自身の答えを見つけることができる。幼い頃から自然が身近にあったことで、森にはすべての気付きが詰まっていることを自然と教わり、それが今のわたしの中にも深く根付いています。

画像14白樺の笛のピーッという澄んだ音が森に響きます

そしてフィンランドを知ったもうひとつのきっかけは、わたしの母。フィンランドの伝統工芸でもある白樺の木の皮でかごを編む職人で、幼い頃から母がかごを編む姿を見てきたことの影響も大きかったと思います。

画像14母が編んだ白樺かご

幼い頃からの森との強い繋がりや母の編む白樺かごをきっかけに、フィンランドという国に興味を持ちはじめ、いつかフィンランドに行きたいと、小学生の頃から強く憧れを抱くようになりました。そして中学生になり、13歳の春休み。ついにフィンランドへ2週間のホームステイの旅に出ます。


はじめてのフィンランド

日本では桜も咲き始める頃の3月下旬。雪が降り積もり、何もかもが真っ白の森と湖の国で最初に訪れたのは、北極圏にあるイナリという町でした。

画像14湖のそばに建つサマーコテージ
雪の白と木造の外壁の赤のコントラストが美しい

到着した翌朝のこと。凍った大きな湖の上をひたすら歩いていき、ひとり、その真ん中で立ち止まりました。大きく息を吸って、吐いて、また吸うと、冷たく澄んだ空気がわたしの身体にゆっくりと行き渡っていくのが分かりました。

画像14大きな凍った湖の上を歩いて

「なんて自分はちっぽけなんだろう」

ふと空を見上げた時、そう心の中で感じました。でもそれと同時に、世界は自分が思っている以上にはるかに大きくて、この空の向こうには無限大の可能性が広がっているんだと、自分の奥底にある大きな力がわたしの中に湧いてきました。あの時に感じた感情はとても不思議だったけれど、それは今でも、わたしの原動力になっています。

画像14はじめて歩く凍った湖、実はちょっと怖かった

イナリを発ち、ロヴァニエミへ。森の小さな小屋で、自分で火を起こし、レットゥを焼きました。「レットゥ」はパンケーキというよりも、クレープをもっとモチモチさせたようなもの。焼きたての熱々の上に砂糖をかけ、ベリーのジャムを塗っていただきます。

画像8ジューと焼ける音とパチパチと火が燃える音
森小屋の静けさを感じながら...

画像14ロヴァニエミ駅にて

その後は列車でタンペレに向かい、ホームステイ先の家へ。森の近くに暮らすフィンランド人家族と一緒に、イースターを過ごしました。家のそばには大きな湖があり、オーブンに料理を入れた後、雪の降る中みんなで湖へ散歩に。凍った湖の上で子どもたちと走り回ったことは、今でも心に残っている楽しい思い出です。

画像10追いかけっこ中

ホストファミリーと過ごす日々のなかで、厳しい自然環境を受け入れ、自然と共に生きていこうという共生の思想がフィンランドの人々の日常の生活に根付いていることを知りました。冬になるとたちまち国中が雪に覆われて、厳しい寒さがやってくる。それでもそこで生きる人々は、強く、たくましく、自然とうまく共存しながら生きてゆく。わたしもそんな生き方を、そして、フィンランドやそこで暮らす人々のことを、もっと知りたい。そう強く感じました。

こうしてこの13歳の旅が、わたしをもう一度フィンランドに呼び戻すきっかけになったのです。


逆境と勇気

それから2年後、高校1年生。憧れの国に想いを馳せながら、ひたむきに努力を重ねて掴んだ、フィンランドで学ぶための切符、フィンランドへの高校留学。待ち望んだ2020年7月の出発。

ところが世界的な状況の変化により、突然すべてが白紙になり、留学が中止になるという逆境に。怒りも悔しさも、悲しみさえも消えて、なにもかもが真っ暗に思えた時、わたしは森へ行きました。そしてそのとき思い出したのが、2年前のフィンランドの湖でのあの感情。

「まだできることがあるはず。絶対に諦めない。わたしのフィンランドへの想いはそんな簡単に消えたりしない。」そう確信しました。

画像14夕暮れのタンペレ

フィンランド語に「SISU(シス)」という言葉があります。それは、フィンランド人の精神力を表す言葉で、厳しい状況の中でこそ前進するために自分は何をすべきか考え抜くこと。前に向かって意志を働かせ続けること。勇気を持って挑戦し、自分の限界を超えていく生き方。それが SISUだといわれ、フィンランドの人々も大切にしている言葉、気持ち。この「SISU」という言葉にも、わたしは大きな勇気をもらいました。

そして1年後の今年2021年8月、フィンランドへ。

このSISUがあるから、いま、わたしはフィンランドで学ぶことができています。でも、決してわたしだけの力で成し遂げられたことではありません。ずっとそばで支えてくれた家族やどんな時も応援し味方でいてくれた友達、そしてこのような状況下にもかかわらず、わたしを受け入れて下さったホストファミリーやホストスクールの方々のおかげだと、本当に心から感謝しています。

だからこそわたしは、フィンランドでの1日1日を大切に過ごしていきたい。そして多くのことを学び、いつかこの恩返しをしたい。そう心に決めています。


今の暮らし

画像14太陽の光を浴びてきらきらと輝く湖

わたしは今、6歳と10歳の男の子、そしてお父さんとお母さんの4人家族のホストファミリーと一緒に暮らしています。ムーミン美術館のあるタンペレも近く、湖や森もすぐそばにあり、のどかで美しい町です。

画像12ホストブラザーと一緒に森さんぽ

フィンランドに来て2か月が経ち、友達もたくさんできました。毎日が本当に楽しく、あたたかい心のフィンランドの人々と大自然と共に、日々、新しい学びの連続。そしてそれが自分の中に、どんどん吸収されていることを実感しています。

次回のコラムのテーマは、「フィンランドと日本」。わたしがフィンランドで見つけた“日本”やフィンランド人の国民性、日本人との共通点などについてお話ししたいと思っています。どうぞお楽しみに!

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