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ネットフリックス:2023年Q4決算と決算説明会の要旨・要約

 日本時間2024年1月24日早朝、ネットフリックス(NFLX)は2023年第4四半期(2023年10月~12月)の決算発表を行い、その後オンラインで決算説明会がブロードキャストされました。ここでは、第4四半期決算の主要なハイライトと、同時に公開された株主への手紙、および決算説明会の内容についての要点をまとめて紹介します。



1. 2023年第4四半期決算 主要指標の確認

(1)ハイライト

(2)サプライズ

サプライズに関しては、主にポジティブな面が目立ちました。

  • Q4の1株あたり利益(EPS)予想は下回りましたが、予想を上回る有料会員数の大幅増加がマーケットに好評で、その結果、アフターマーケットで株価が8%上昇し、翌日の終値は544.87ドル(前日比+10.70%)となりました。

  • 有料会員数は1,312万人増加し、全世界の有料会員数が2.6億人に到達しました。前四半期の876万人増に続き、Q4はそれを大きく上回る増加となりました。有料会員はすべての地域で増加しており、特にEMEA地域が牽引役となっています。

  • 業績の好調さの背景には、広告付きプランの導入、アカウントシェアの有償オプション、およびローカライズされた価格設定戦略が影響しているようです。広告付きプランの加入者数は前四半期に比べて約70%増加しました。

  • 会員当たり平均収益(ARM)は、前年同期比で1%増加しました。これは、2023年初めに一部の国で価格を下げた一方で、米国、イギリス、フランスでは価格を上げたものの、その影響が限定的であったためです。

  • 特に、コロナによる特需が収まった2022年第1四半期から2023年第3四半期までの7四半期にわたる一桁成長が、今四半期(Q4)で2桁成長へと回復しました。2024年第1四半期の予測も2桁成長となっており、ネットフリックスは自信と勢いを取り戻していることが伺えます。

これらの回復に対するネットフリックスの自信は、「株主への手紙」や決算発表時の「決算説明会」からも明らかです。


Q4決算:売上と利益


リージョン別の売上と会員数の推移(比較:2023年Q3とQ4)


Q3決算:EPSとPBR



2. 株主への手紙と決算説明会について

 ここでは、決算資料の一部として公表された株主への手紙(Letter to Shareholders)および決算説明会の要点をまとめ、2024年に向けた抱負や方針を紹介します。概して、内容は自信に満ちあふれており、大きなリスク要因については言及されていません。無謀な投資や事業拡大ではなく、慎重に機を見ながら節度を持って前進するという姿勢が全体のトーンを形成していると感じられます。

(1)自社ポジションの認識

  • 映画、テレビ、ゲームを柱とするネットフリックスの中核事業は、市場規模が6,000億ドル(約87兆円)を超えており、現在ネットフリックスは消費者支出の約5%、テレビ放映時間の約10%を占めるにとどまっている。これは、ネットフリックスにとって大きな成長余地を示すものである。

  • ネットフリックスは、会員にとっての価値を最優先に、より優れたコンテンツとサービスの提供に注力している。これには、多様で質の高い映画やシリーズ、ライブイベント、そしてゲームなど、幅広いエンターテインメントを包括するサービスとなっており、これらサービスの質の向上とサービスの多様化が収益増加に直結すると考えている。

(2)2024年の主要指標と計画

  • 2024年第1四半期は、為替の影響を考慮しない2桁成長の収益予想を立てている。

  • 2024年は、コンテンツ制作に対して170億ドルの支出を計画している。

  • 広告付きプランによる会員数の増加と広告事業の拡大がプラスの影響をもたらすと予想されるが、2024年における収益への寄与は限定的となる。

  • サービスの質の向上を通じて、会員数の増加、プレミアム会員の獲得、そして収益性の高い広告ビジネスの確立に努める。

  • 自社株買いプログラムは、株主還元のために残り84億ドルの枠があり、今後、時間をかけて実施していく(2023年Q4に25億ドルで55万株の自社株を実施済み)。


3. 要旨・要約:重要施策に係わる2024年計画

 ネットフリックスの主要施策に関する最新情報をお伝えします。当方の以前の記事「2023年第3四半期決算振り返り」との整合性を保ちながら、以下のカテゴリーごとに各施策の現状と見通しについて説明します。

(0)全体方針

 ネットフリックスは現在、2億6,000万世帯以上の会員を擁し、多種多様な文化や嗜好に応えるべく、幅広い映画や番組への投資を行っているが、いまだ契約を結んでいない数億の世帯による巨大な潜在市場が存在しており、これら世帯と彼らの視聴時間を獲得することが極めて重要である。そのため、映画、シリーズ、ゲーム、ライブイベントを通じて、会員の好みに合った高品質なコンテンツをさらに多く提供してファンとの関係を強化し、プランの料金設定の最適化と広告ビジネスの拡大によって、新たな大きな収益機会を創出していく。

(1)サブスクリプション料金の値上げ

 2023年Q4に米国、イギリス、フランスで実施したサブスクリプション料金の値上げは、ネットフリックスの予想を上回る成功を収めた。今後も他の国々の市場を評価し、会員にさらに高品質な映画、シリーズ、ゲームへの投資を続けることができるよう取り組んでいく。

(2)有料アカウントの共有禁止

 アカウント共有オプションに関して、価格設定を含む取り組みが進行している。これらのオプションにより、同一アカウントの共有世帯数は減少しているが、独立したアカウントの増加によりエンゲージメントが正常化し、これが成長に寄与すると考えている。2023年Q4には新たな顧客層に対する取り組みを実施し、この施策は2024年にも引き続き展開される計画を立てている。ただし、特定の顧客層をターゲットにするのではなく、サービス利用者の行動変容を促すために、最も効果的な方法を見つけ、適切なタイミングで適切なアクションを呼びかけ、支援することが重要だと考えている。

(3)広告付きベーシックプラン

 広告付きベーシックプランは、2023年Q4の有料会員数の増加に大きく寄与した。月間アクティブユーザー数は前四半期比で70%増加し、現在も成長傾向が続いている。

(4)広告収益

 広告ビジネスの成長潜在性に関しては、地域ごとに異なるが、広告市場全体の規模とコネクテッドTVでの広告支出の可能性を考慮すると、複数のプレーヤーが参入する余地があると見ている。ネットフリックスが展開している国々は、世界の広告支出の約80%を占めており、これは大きなビジネスチャンスを意味している。
  この市場はブランド企業にとって非常に重要であり、ネットフリックスは、熱心な視聴者層、映画やシリーズ、ライブイベントを通じて他社との差別化を図り、市場での優位性を確立しようとしている。しかしながら、この事業が成熟するまでには時間と努力が必要であり、業績に顕著な影響を与えるまでには時間がかかると予想される。その道のりには、広告プランの改善、パートナーやチャンネルとの連携強化、ターゲティングと精度改善など、取り組むべき多くの課題があると考えている。

(5)コンテンツ制作

 オリジナルコンテンツの制作から他社制作コンテンツのライセンスモデルへの戦略シフトについての見方があるものの、視聴者は主に楽しめる映画を求めており、予算や放映枠にそれほど敏感ではない。この点において、他社のコンテンツをライセンスすることには引き続き積極的である。但し、タイトルのライセンスは制作費に対しポジティブとなるが、オリジナル・シリーズには独特の価値と興奮、差別化がある。
 
 ネットフリックスのオリジナル映画は世界中で多くの観客をひき付けており、ライセンス映画よりも優れ、競合他社とは一線を画している。ネットフリックスは人気シリーズや映画を多数保有し、知的財産の開発と維持に成功している。また、ネットフリックスのコンテンツ投資は健全であり、視聴者のエンゲージメント、契約維持率、契約者数の増加に寄与している。
 
 高品質な番組を制作することは常に競争が激しい分野であり、この競争は今後も続くと予想される。しかし、他の競合他社がコンテンツへの支出を削減する中、ネットフリックスはコンテンツへの投資を継続し、2024年には大規模で大胆なタイトルを多数リリースする予定である。新作ドラマ、台本なしのシリーズ、映画など、多岐にわたるコンテンツの展開を計画しており、2024年には170億ドルをコンテンツ制作に支出する計画である。

以下は、ネットフリックスのコンテンツについての最新のヘッドライン情報となります。 

(a)WWE独占放映権の10年に渡る長期契約
 ワールド・レスリング・エンターテイメント(WWE)の人気プロレス番組「Raw」を含む番組の独占放映権を10年間の契約で50億ドル(約7400億円)で獲得した。現行のWWEとコムキャストとの契約が終了する後、2025年1月から、アメリカ、カナダ、中南米などで週に3時間のプロレス中継を開始する予定となっている。さらに、アメリカ国外では、WWEの他のプロレス番組やペイ・パー・ビューイベントに関してもネットフリックスが独占放映権を獲得している。

(b)2024年アカデミー賞へのノミネート
 2024年のアカデミー賞のノミネート作品が発表され、ネットフリックスからは9作品が合計17部門にわたってノミネートされている。オスカーの授賞式は、2024年3月10日に行われる予定。

(6)ゲーム市場への参入

 ネットフリックスの現在のゲーム戦略は、主要なストリーミングプランに追加料金なしでゲームタイトルをバンドルするというもので、映画やシリーズプログラムに比べて規模は小さいものの、2023年にはゲームポートフォリオが大幅に拡大した。特に「Grand Theft Auto」シリーズのようなゲームプログラムが成功を収め、数週間にわたってモバイルゲームのダウンロード数でトップランクになるなど、エンゲージメントの増加が見られた。これにより、1,400億ドル規模の消費者支出市場において足場を築くことに成功したと考えている。
  また、他社がライセンスを持つゲームの配信もネットフリックスの戦略の重要な一環であり、特に認知度が高く独占権を持つゲームが主な対象となる。ゲーム開発への投資は、全体のコンテンツ制作予算の一部として位置付けられており、効果が証明されるまでは投資額を大幅に増やさない慎重な方針としている。

(7)グローバル展開

(特に言及なし)

(8)ストリーミングプラットフォーマー

 ネットフリックスは他社制作のコンテンツをライセンスし、会員に配信するビジネスに積極的である。また、自社のプラットフォームの配信能力とレコメンデーションシステムが、他社スタジオに大きな価値を提供すると確信している。ライセンス作品は制作費を抑制する効果があるが、自社制作のオリジナルシリーズには独自の価値、魅力、そして差別化がある。そのため、ネットフリックスはオリジナルシリーズへの投資を続ける予定である。現時点では、オリジナル作品とライセンス作品のバランスを取りながら展開することで、適切なマージンを確保できると考えている。

(9)映画館・劇場への回帰

(特に言及なし) 

(10)ストリーミングサービスでのポジション

 視聴者数の減少に直面している従来型の大手テレビネットワーク間での統合が進むと予想される中、ネットフリックスはそのような従来型資産の買収には興味がない。エンターテインメント業界のフランチャイズの強さ、番組制作の専門知識、大手テック企業からの継続的な大規模な投資、ゲームやソーシャルメディアを含むコンテンツチャネルの競争が激化していることを踏まえると、業界は引き続き競争が激しい状態が続くと考えている。この状況の中で、多くの競合他社がコンテンツへの支出を削減する傾向にある一方で、ネットフリックスはコンテンツへの投資を継続し、その競争力を保つことに注力していく。


[参考]2024年アカデミー賞にノミネート

 2024年アカデミーションにノミネートされたネットフリックスの作品と部門は以下の通りです。



御礼

今回は以上です。
最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 

だうじょん


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