詩 「告白の月夜」
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜
その夜___
静寂の街並みの燈は
いつになく朧げに見えた
一羽の鵲が告げる
運命の人との出逢う水先案内と云ふ
内なる心は七夕の川に沿って
意識は遠のいてゆく__
白くぼんやりとした世界に目を凝らすと
乳のような脂油の球の一つひとつが
仄かな光を照らしていた
その不思議な光芒の世界では
母なる細胞が分裂を始める
そして産道を抜ける記憶に遡る
幼ない子供の姿が見える
水に滲んだシルエットとなって
淡い記憶の海を揺蕩う
思春期の頃は
はじめて知る大人の階段に
ただただ畏怖し傷いていた
そして年齢を重ねて
世間の常識と云ふ
鋭敏過ぎない世界の中で
透明であったはずのものを
失いつゝある自分を眺めている
それは生きてきた所業の
走馬灯を見ているに過ぎない
いつの頃からこんなになったのだろう?
怠惰な自分の殻を破るには
人の出逢いによって刺激されて
変わりゆく世界があるものだろうか
満月の夜には
街外れの丘に立ち尽くし
心の奥を照らすように
鵲の告白を待っている
〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜
画像引用:Pinterest
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?