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東日本大震災を経験して。Vol.6〜持続可能性〜

ビジネスはいつだってマーケットとタイミング次第。

円安、人口減少、温暖化の日本。
今後もしばらく円安は続くだろう。
地域内だけでは経済が回らなくなる。
海外から外需を獲得するために、積極的に関係人口も創出しなければならない。

まちづくり。
地域資源を活かした起業。
そしてワイン。

海外ではもう「ビオ(※)は前提」。
フランス・ボルドーでは2030年までにほとんどの畑がオーガニック栽培になると言われている。

※ビオ・ワインとは出来る限り自然のままの製法で作られたワインである。 原料となるブドウは農薬や化学肥料が制限され、認証団体による有機農法、バイオダイナミック農法の認証を得ていることが前提である。 醸造過程においても後述する様々な条件が求められる。 ブドウの栽培には様々な自然農法があるが、認証団体からの認証を得ない生産者も多い。その理由は認証にかかる費用であったり、基本的に賛同しているが認証団体の定める細かい規約には合意できない、といった独自の考えによるものなど様々。認証こそ得ていないが、より先鋭的な自然農法を実践する者もいる。

しかし日本では、台風があるためにオーガニックは難しい。
水や虫が病気を媒介し、一瞬の滝のような雨水をブドウが吸ってしまい玉割れを起こしてしまう。

さらにビオにするには低phである必要がある。
phは酸とアルカリのバランス指標。
酢をかけると殺菌作用があるのと同様、
phが低い=酸が雑菌繁殖を抑制する。
ph3.3以下でなければ亜硫酸塩無添加は難しい。
ph3.5を超えると極めて難しく、
ph4.0を上回るとワインとしての品質は損われる。

雑菌繁殖を抑えるためには亜硫酸塩等を用いる必要がある。
しかし「ビオ」であるためには残留亜硫酸塩の上限を超えてしまわないようにしなければならない。
つまり、亜硫酸塩等の使用を減らすためには低phが必要になる。

亜硫酸塩等の使用はワインのコントロールに必要で、
決して悪者ではない。

美味しい、安定したワインを楽しんでいただくためには、醸造家がワインをハンドリングする必要がある。
亜硫酸塩等は言わば「ブレーキ」だ。
ちなみに、亜硫酸塩等無添加のワインは4分の3以上が不安定でダメワインになっている、ということも権威ある界隈で言われている。

輸出するにも、日本の飲食店で扱うにも、品質が不安定なワインでは困るのだ。
特に輸出では数千本単位の大ロットで送らなければならないため、到着したら船のコンテナでワインが噴いていた、なんてことがあれば相手方にも迷惑がかかり、取り扱いの継続は難しくなる。
美味しい、科学的に食品として安定したワインを造るには、おまじない程度でもいいので40mg/l程度は最低限入れておきたい。

ちなみに参考までに、フランスでの残留亜硫酸塩の上限。
ワインの種類により、上限は異なる。
基本はCEの法に従うが、その内側で種々の基準値がある。
(Rouge sec)
赤セック CEルール:150mg/l ※
ビオ   CEルール:100mg/l
             Nature at progrès:70mg/l
                FNIVAB:100mg/l
ビオディナミ  Demeter:70mg/l
        Biodyvin:100mg/l
(Blanc at rosé sec)
赤セック CEルール:200mg/l ※
ビオ   CEルール:150mg/l
             Nature at progrès:90mg/l
                FNIVAB:120mg/l
ビオディナミ  Demeter:90mg/l
        Biodyvin:105mg/l
※この場合は<5g/l。糖の含有によってルールが細分される。

つまり、持続可能性=外需を稼ぐ=低phのブドウを用いる
ことに繋がる。

ブドウの品種や栽培方法でphは異なる。
そのため、はじめの品種選定が重要になる。

ワイナリーと都市型ワイナリーの増加

2023年、日本での登録ワイナリーは470軒ほどに上り、おそらくすぐ500軒を超えると言われている。
しかし、買い付けできるブドウも減少している、ワインの消費量は一辺倒、苗木は入手困難なのが現実。

そんな事情もあり、新規ワイナリーはよく「土地に何が合うかわからないし色々と植えてみる」「他地域から原料を買い付けて醸造だけしてワインとして他地域に売る」ことになりがちだが、いろんな品種に手をつけすぎると、マニュアル化も困難になり、ブランドも立たず、混植混醸系は文脈等が無いとなかなか消費者にはウケにくい。

ワインはビールや蒸留酒と違い、醸造が品質に占める割合は少ない。
ブドウ自体の品質がほぼワインに直結する。
つまり、ワイン=テロワール(気候風土)。

植物というのは正直。先人というのは偉大。
過去100年、テロワールの理解に時間もお金も大量の投資を先人がしてきた結果、いまそこにその農産物が根付いている。
急に果樹の歴史がないところでブドウ畑を始めたところで、結果はあらかた見えている。

また、よっぽど卓越したテロワールでない限り、大手の真似をしたところで資本勝負になり勝てるわけがない。
尖った、真似されないワイナリーの在り方で攻めなければ生き残れない(ランチェスターの法則)。
それと同時に、事業体・生産者としては「どうワインを造るか」よりも「どう生き残るか」を考えなければならない。

そして「あの地域はこの品種、仕立て方、造り方」といったものがあると、認知や援助もされやすく、経験値も集積し累乗的に技術が向上していくもの。

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