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東日本大震災を経験して。Vol.3 〜ワイン生産者&ワイン商社〜

Vol.2の続き。

22歳。震災から5年目。
新卒で入社した会社は東京。
陸前高田に帰るのは半年毎。
次々に新しい建物、道路が作られる。
瓦礫もいよいよ片付け終わり、一気にまちづくりが加速し始め、半年も居ないと浦島太郎状態。

なぜこの会社なのか?
なぜ将来ワインを造りたいのか?

もはや一つの問いに対して一問一答で返せるレベルではなくなっていた。

これまでの背景を説明するのに、一言では表せない。

求められればこれまでの自分の話はするが、
ストーリーが長く、如何せん震災の話が絡むので食事の場にもあまり相応しくなく、
なかなか周りに話す機会がなかった。

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入社後、たまたま配属された配属先は社内でもかなり自由な気風。
いずれ生産者になるために辞めることは上司に伝えていたものの、
ありとあらゆるワインに関する業務に挑戦させてもらうことができ、成長できた。

そして、関わった方々全てではあるが、何より、お客さんに自分は育てられた。


特にも、ホスピタリティの面で。

ワインのスキルもそうだが、人間として大きく成長できた3年間だった。
辛いことも本当に多かったが、得るものも本当に多かった。
まさに”修行”だった。

ペーペーだった自分を暖かく見守っていただいた方々には、感謝しきれない。

特にも、初期の頃にお世話になった方々というのは一生忘れることはない。
そして一生恩返ししていかないといけない。

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22歳、人生初めての海外。
社会人になってやっと人生初めての海外。

学生の時は苦学生だった。
バイトを掛け持ちで、そしてお金に余裕がなかった。
生活費、学費を稼ぐために忙しく、満足に旅行に行けなかった。

あらゆるお金を、自分で稼いできた。
ある意味、それが奏功してファイナンスの知識がとても身についた。


それまでの抑うつされた何かを発散するかのように長期休暇を利用しては海外に行った。

しかも目的は全てワイン関係。
ワインやまちづくりに関係しない旅行は行かない。

いろんなツテを伝って、特別なワイナリーの経験を積むことができたので、
ここでは話せないことが多いが、
スイス、イタリア、アメリカ、に行っていた。
これもまた話が長くなるので割愛。

全てにおいて学びがあったが、特にもスイスは得るものが多かった。

テロワールへのアプローチ、ブランディング、マーケティング、
テロワールを単純な数値で測ることの危険性。

そして、レマン湖による「3つの太陽」はまさに陸前高田とよく似ていた。
太陽、水面からの反射、輻射熱。

さらに世界遺産たる整然とした壮観で急峻な葡萄畑を実際に見て、自分の目標だと思った。

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社会人3年目。
JSAソムリエとSAKE diplomaを独学で同年一発合格。
かなり珍しい事例と思う。

ソムリエはその年にどうしても取りたかったので、熱心に勉強した。
SAKE Diplomaは、学生のときに日本酒も少し学んでいて既に基礎知識があったのと、テイスティングの構築の仕方も身についていたので、なんとか合格できた。

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いろんな哲学を聞くことは好きだし、全く否定もしない。
各々やりたいようにやれば良い。

ただ、要は売れなければ持続可能性がない。

生産者、消費者、評論家の目線は全く別。

いいワインだとしても、それが売れるとは限らない。

趣味でやっているのであれば全く別の話だが、事業としてのワイナリー。
持続可能性を考えなければいけない。キャッシュを作らないといけない。


ほとんどのワイナリーは、趣味ではなくビジネスでワイナリーをやっているはず。
どの目線も考えられていて、クリアできていることに越したことはない。

何度も言うが、自分にとってのワイナリーは男のロマンでもなければ趣味でもない。

とてつもないところからの「逆算」と「設計図」。

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どんなワインにも役割はある。
評価があって、芸術性があって、嗜好品で。

皆が皆、高級ワインを求めているわけではないし、毎日安いワインでも飲めればいいと言う人もいる。
何を求めているかは人による。


海外でワインを学ぶことだってそう。

私にとって、ワインの銘醸地と言えど私の目的以外の産地は優先順位は低かった。
私が世界中行きたいワイン産地は数え切れないほどあるが、優先順位はやはりある。
常に最短距離。


そして退社後、フランスのアルザスに行くことにした。

なぜなら、岩手に戻ることを前提とした選択。


”「フランス」で「ワイン」という誰にもわかりやすいワードも魅力的だったし、
いずれにせよ、岩手でワインをやるのであればまずは白ブドウが合うと思っていた。

黒品種は、一言で言うと、「ロマンでありギャンブル」
産業としてはまた違うのかな、と。
スキルの高い人がその地域に充分いたり、あらゆるインフラが整っていれば別だが、そうではない。

いや、ヤマブドウがあるじゃないか、という意見も共感はできる。
確かに岩手は全国一のヤマブドウの産地(県北の産物)であり、可能性はとても感じるが、今のところかなり難易度高め。

陰干しで造るヤマブドウワインはとても有望性を感じるが、それにしても期間が要るし、経営を考えるとキャッシュ優先になってしまう。
キャッシュ優先のために、酸っぱい若すぎるワインでリリースすると、それはそれで良くないイメージが付いてしまうというジレンマ。

なんだかんだ言ってもやはり白ブドウはその点、コストや技術を黒ブドウよりかは必要としない。
キャッシュが回る。持続可能性のある産業に成る。

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いずれ陸前高田でやることは決まっていたのだが、将来的には結局「チーム岩手」としての導線作りをしないといけなくなる。
というのも、陸前高田は「岩手」に所属している地域。
岩手県は本州で最も広い。四国よりも大きい。甲府と横浜のテロワールを一纏めに考えようというのと同じになってしまう。それは無理。
最低でも沿岸と内陸、北と南の4つにテロワールを分けないと話にならないのだが、県外の人から見れば「岩手」は「岩手」なことに変わりはない。

観光とまちづくりがベースであって、その上のワインづくりが私のテーマ。
地質や品種アプローチもそうだが、特にフランスで最も美しい街と評されるアルザスで、得るものは多いはずと思った。

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そして26歳。目標の10年まで、あと2年。

そしていざVol4、アルザスへ。

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