見出し画像

ゲストハウスづくりの教科書〜ハコ編〜


はじめに


この連載は「人生の自由を得るためにゲストハウスを開業したい!」と考える全ての人のために、私が3年間で5店舗のゲストハウス開業をしてきた経験を基に体系立てて説明したゲストハウス開業のハウツーnoteです。

ゲストハウスを開業するにあたり様々な視点があるのですが、最も重要とされるハコ・カネ・コンセプトの3つのトピックについて書き起こしました。
今回はその第1弾としてのハコ編です。
(第2弾カネ編はこちら
ゲストハウス開業にあたり「何をしたら良いかわからない」「やることが整理されておらず不安だ」などといった、みなさんが抱える課題を解決する糸口を示します。

それでは、いきます。

目次 
はじめに
第1章 立地の話
第2章 建物の話
第3章 書面の話
さいごに


第1章 立地の話

ゲストハウスを開業するにあたり、「自分の故郷や大好きな地で開業したい」「観光地として注目されている都市で開業したい」「まだゲストハウスがない街でオープンしたい」などと考える人も多いと思います。
現に私も自分自身の故郷である洞爺湖町での開業をしたく物件探しをしていたし、観光客数が増加している札幌でゲストハウス運営をしているし、以前には豊浦町というゲストハウスがまだ無かった場所の開業のお手伝いもしてきました。
ゲストハウスオーナーそれぞれに想いや考えがありますので、私はその熱意を否定するつもりは一切ありません。
しかし、あなたが今開業しようとしている場所(あるいは物件)がどこでも(何でも)良いかというと、そういう訳ではありません。
なぜならば、ビジネスとして成立しなければあなたのその熱意や想いは、継続させることができないからです。
「そんなの当然だ!」と思うかもしれませんが、一見”良さそうな”物件が見つかると、「ここでなら絶対開業できる!」と盲目的になってしまうのもまた事実。
しっかりとした基準を持って物件探しに取り組みましょう。


条件①:アクセスポイントから徒歩10分圏内である


アクセスポイントとはつまり、その地で最も多く使われる公共交通機関の駅です。
それはバス停でも構いませんし、電車や地下鉄の駅でも構いません。
とにかくその地を利用する人が最も多く利用する駅から徒歩10分以内で物件を探してください。
バックパック、あるいはキャリーケースを持ちながら歩く旅行客は30分も1時間も歩くことを望みません。
想像してみてください。飛行機や新幹線で長旅、街中を観光しヘトヘトになりながら歩きたいですか?
「それも旅の醍醐味!」と思う方もいるかもしれませんが、それはオーナーとして”甘え”です。
ゲストを思うと、アクセスポイントからの立地は良いに越したことはありません。
加えて、乗り換えや乗り継ぎがあることはオススメしません
東京ほど観光客が多く、英語表示など外国人対応も(地方よりは)行き届いており使いやすければ良いのですが、地方はバスや市電の乗り換えがとてもわかりづらいです。
乗り換えが発生するとアクセスやロケーションの満足度が下がり、OTA(Online Travel Agent: 宿泊予約サイト)のレビュー評価にも響くのでオススメできません。
また、よくある質問として「レンタカーなど車で旅行する人にとってみれば立地は関係ないのではないですか?」と聞かれますが、あくまでゲストハウスは車移動を前提とした宿ではありません。
「徒歩では30分かかるけれど車だと10分前後で着くことは立地が良い」と勘違いされがちですが、あくまで基準は「徒歩」で考えてください。
徒歩で立地が良ければ、移動手段が車でも立地は良いということです。


条件②:6種類の用途地域に該当している


「用途地域」という言葉を聞いたことがありますか?
不動産関係のお仕事にお勤めの方や、宅建士試験を受けたことがある人などには馴染みのある言葉かもしれません。
”都市計画法”という法律で定められる地域地区の一つなのですが、細かいことは後回しでOKです。※1
重要なポイントは「建物を建てる際、その地域に定められた用途以外の建物を建ててはいけません」という制限が用途地域によって定められているということです。
この制限は新築の建物だけに限らず、中古の建物にも該当します。
みなさんが考えているゲストハウスも、以前はゲストハウスではなかった”住宅”を、不特定多数の旅行客を宿泊させるための”宿”に生まれ変わらせます。
「旅館業営業許可」を取得し、「ホテル・旅館」として営業することになります。
つまり、この用途地域の制限を受けることになるのです。
では、どの用途地域であればゲストハウスを開業できるのかを以下に示します。
①第一種住居専用地域※
②第二種住居専用地域
③準住居地域
④近隣商業地域
⑤商業地域
⑥準工業地域

※ただし面積条件等制限あり

条件①で「アクセスがいい!ここに決めた!」と思っても、建物が存在する用途地域によってはそもそも宿を運営できない、ということになりかねません
しっかりと確認した上で、物件を見定めましょう。
不動産会社で情報を得た場合は、その不動産会社が該当物件の用途地域を調べているので担当者に確認すればいいのですが、誰かの紹介で知り得た物件だったりした場合は、管轄の自治体の建築課で確認できます。
自治体によって細かい名称が異なるので、詳細は該当自治体で「物件の用途地域を確認したいのですが、どの課に行けば確認できますか?」と聞いてみてください、優しく教えてくれますよ。


第2章 建物の話

第1章で「アクセスの良さ」と「用途地域」を確認したならば、次は該当する物件自体を調査します。
なかなか素人では判断が難しいので、私もこの段階では付き合いのある設計士や業者の方に力を借りていますが、自分で確認できることもありますので、知識として覚えておいてください。

条件③:2階建以下の建物である


「2階建以下の物件を選ぶ」というのは少々強引な言い回しですが、これには3つ理由があります。
1つ目は、耐火構造を気にしなくて良いからです。
というのも、3階建以上の物件でゲストハウスをやろうとする場合、耐火構造である必要があります。
準耐火構造である建物を耐火構造にする工事は可能ではありますがそれなりに資金がかかります。
その資金を投下するぐらいであれば、別の物件でおしゃれな内装に使ったりゲストのためのベッドをグレードアップさせたり、集客に資金を使った方が賢いと僕は思います。
2つ目はゲストの満足度が落ちやすくなるからです。3階建以上(5階建未満くらい)でエレベーターの無い物件はよくあります。
一見ベッド数も多く入れられるし良さそうに見えるのですが、条件①と同様に旅疲れしているゲストが階段を昇り降りすることを想定すると、オススメはできません。
結果「エレベーターが無くて階段の昇り降りが大変だった」とマイナスレビューをされる可能性は高くなります。
3つ目は、ゲストハウス開業初心者が大きなゲストハウスを運営することはオススメできないからです。
建物が大きくなればその分だけ対応するゲスト数が増えます。
清掃箇所も増えますし、その分人件費がかかります。
フリアコ(住み込みスタッフ)を継続的に見つけられる仕組みを作れますか?
上層階でゲスト対応をしている時にチェックインが来たら対応できますか?電話が来たら?業者が来たら?
などなど、案外ゲストハウスは暇そうで、忙しいです。
資金や人材が豊富ならばどんどんチャレンジすべきですが、このnoteを読んでいるあなたはきっと、そうではないはず
以上3つの理由から、まずは小規模から始めることを僕はオススメします。


条件④:退去後1年以内の物件である


これは絶対条件というわけではないのですが、なるべくなら満たしたい条件です。
空き家になってからどのくらいの期間が経過しているのかを確認することの最大の理由は、水道やガス管などの設備の傷みを確認するためです。
一般的に、空き家になってから1年で設備は傷むと言われています。
ゲストハウスを開業する上で設備の傷みは痛恨の一撃です。
なぜならば、設備工事が最もお金のかかる部分だからです。
業者に現地調査してもらった時は問題ないと思われた部分でも、いざ工事が始まってみるとあれも傷んでるこれも傷んでるなど、開けてびっくりパターンというのはそう珍しくありません。
予算オーバーして開業が遅れる、というオーナーさんを何人も目にしてきました。
それは本当に悲しいことだし、できれば避けたい道。
それを避ける一つの基準は、”前の入居者が退去してから1年以内の物件であること”だと僕は考えます。


第3章 書面の話


立地条件と建物条件をクリアしたら、次はより実務的な”書面”条件です。
どんなにアクセスが良くても、どんなに魅力的な物件でも、書面がないことには前に進めません
さぁここまで来ればあと一歩。
夢のゲストハウス開業のスタートラインに立てますよ!


条件⑤:「検査済証」の有無を確認する


「検査済証」は聞き慣れない方も多いかと思いますが、建物を新築・増築・改築・移転する場合に発行される証明書です。
細かいことは別に解説しているサイト※2 があるのでそちらに譲りますが、この書類があるか無いかでゲストハウス開業までのフローが変わってきます
条件②内でも軽く触れておりますが、ゲストハウスは旅館業営業許可を取得して営業する必要があることから、建物の用途変更が必要になる場合がほとんどです。
その場合にはこの検査済証が必要になります。
必ず確認するようにしてください。
ただし、この証明書が無くても用途変更が可能になるパターンもあります。
いずれにせよ、検査済証の有無は必ず確認してください


条件⑥:平面図をもらう


これまでの条件を確認したら、この後は実際のプランニングに入ります。
しかし、物件の平面図がないことにはベッドの数もトイレやシャワーの数もリビングに何を置けるかも何も決めることができません
もし決めていたとしても、それはプランニングではなくただの”妄想”です。
ありがたいことに私の元にも「ゲストハウスをやりたいんです!ここでやりたくて、どう思いますか?」と質問してくる方がいらっしゃいます。
しかし、良いか悪いかを判断するための材料が少ないので曖昧な回答になる場合がほとんどです。
平面図を持ってきてもらえるのならば、「ベッドは○台くらい置けそうですね〜」「トイレの数は増やす必要がありますね!」「このスペースを〇〇で活用したら面白いのではないですか?」など、具体的なアドバイスができるのですが、平面図すらないままに助言を求められてもそれっぽい回答しかすることができません。
お互いにとって時間の無駄ですし、せっかく忙しい中時間を捻出してまで来てくださるのであれば、有意義な時間にしてもらいたいものです。
これは私だけではなく、業者さんや設計士の方、その他アドバイスを求めるすべての人に共通する最低限用意しなければならない書面です。
不動産屋さん、または物件オーナーさんに確認して用意してもらいましょう。
当たり前ですが改めて、平面図をもらうことを強くオススメします。


さいごに


私の主観が強く反映されている部分もありますが、これまで5店舗の立ち上げに関わった経験から得た知見ですので、多くの方に活用してもらえると嬉しいです。
とは言え、これら条件に適応することはゲストハウス開業におけるスタートラインに立ったばかり。
いや、まだスタートラインにすら立ててすらいないかもしれません

「資金はどうするんだっけ?」
「コンセプトはどうやって深掘りしていくの?」
「オペレーションって何?」

などなど開業前にやることは山ほどあります。
開業後にしなければいけないことも同様です。

第2弾のトピックは「カネ」です。
ゲストハウスの開業資金は一体いくらかかるの?
ハードとソフトの視点からお話したいと思います。
長々とお付き合いありがとうございました。

参考:
※1: 東京都都市整備局 「用途地域による建築物の用途制限の概要」http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kanko/area_ree/youto_seigen.pdf
※2: iQra-channel 「確認済証・検査済証・建築確認・完了検査とはなにかわかりやすくまとめた」https://iqra-channel.com/kakuninsumisyo-kensazumisyo


----------✂️----------
※ご質問やお仕事のご依頼は or Twitter DMにてお問い合わせください。
 Gmail: k.shinomura78@gmail.com
※ゲストハウスのみならず民泊向けの物件など不動産情報なども提供できます。

サポートありがとうございます!実は占いが大好きです。