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短距離走オカマと深夜の本気追いかけっこ【紀行編Vol.2】

遅刻。

安かったので早朝のフライトを予約したのだが、裏目に出た。
起きたらフライトの時間が過ぎてる。
初の海外旅行で寝坊かぁ。。。

仕事などの大事な日に大寝坊した事ある人ならわかってくれると思うが、人間こうなると、「急ごう」とか「やばい」というのは通り越して、まず部屋を一周してリラックスするのだ。

そして、コーヒーを飲む。
洗顔をして、歯磨き。
喫煙者ならタバコを吸うのだろう。

そして徐々に、さっき通り越したはずの「やばい」がオールスター感謝祭ミニマラソンのワイナイナの如く追い上げてくる。緊張感が突き上がってきて、走ってもないのに心臓がバクバクしてくる。

「ヤバイ、どうしよう」
これだけ文明が発達して多様なツールやサービスが世の中で生まれていますが、未だに困った時は「お母さんテレフォン」が最強です。

「もしもし‥」

「どうしたの?」

「ひ、飛行機乗り遅れちゃったんだけど、どうすればいいかな」

「‥‥」

僕も将来息子ができて、大事に育てて成人して、この電話がきたら胸にくるものがあると思う。辛い思いをさせて本当に申し訳ない。

「まず航空会社に連絡してその旨を伝えて、復路の航空券がキャンセルにならないようにしてもらいなさい。行きのチケットは空港でその日出てる1番安い航空券を買いなさい。しょうがないから、行きの航空券は払ってあげるから。」

「本当ごめん、、ありがとう‥」

お言葉に甘えて母親のスネの髄までかじらせてもらうことにした。

そんなこんなで夕方発、深夜着の飛行機を確保し、初めての出国審査等を済ませ飛行機に乗り込んだ。地球の歩き方を持っていれば海外旅行をするためのほとんどの情報が載っているので、ここもとてもスムーズだ。
座席で僕はかつてないほどの高揚感に包まれていた。

夏休みなどもそうだが、始まる前が一番楽しい。
付き合う前のデートの感じは2度と味わえない。

だが、ほどなくして飛行機が動き出し、急に不安になってきた。
本当に日本から出ちゃう。
飛行機は加速する。
初めての海外。
初めての1人旅。
ツアーなども組んでいない完全な1人。
本当に大丈夫なのか….?
初海外なのに1人で行って良いのだろうか…..?

”飛行機が地面から離れた瞬間、鳥肌がたった”
「北海道にすればよかったかも」
・・・

ドンムアン国際空港。

バンコクに到着。
なんだか独特な臭いがする。
生暖かい風に吹かれどっと汗が出てきた。

バンコク近くにある空港の1つで、タイの玄関口。
(スワンナプーム国際空港という空港もあります)
日はとっくに落ち夜になってしまって、確かもう23時とかだったと思う。
とりあえず、ホテルに行かないと。。。と言いたいところだが、僕はホテルを予約してなかった。今考えると、どうしようもないくらい馬鹿なのだが、宿は街を歩きながら探そうと決めていたのだ。そういうのも悪くないけど、初日は必ずホテルを予約した方がいい。
(入国検査の時も、宿泊先を聞かれるが僕は地球の歩き方に書いてあったホテルを書き込んだ)

変に冒険を求めてたが故の行動でした。
当ても無いままタクシーの運転手に
「ウォーキングストリートへ」
と頼んだ。ちなみに海外のタクシーにはほとんどメーターはなくて、運転手との言い値になるので事前に相場は調べておくといい。
(地球の歩き方にも書いてあると思う)

その地球の歩き方に
「バックパッカーの聖地」
と書かれていた「ウォーキングストリート」
バックパッカーの端くれとして、とりあえず赴くことにした。
道中、窓から街を眺めると暗くて中々見えない部分もあるが、基本的にネオン的な光がとても多い。紫、ピンク、蛍光色、そう言った光が所々点在している。日本に比べると道路は少しボコボコしてて、道も若干汚い、そして交通ルールの秩序があまりなくバイクが異常に多い。信号待ちの先頭には無数のバイクが群がっていて、青になるのを今か今かと待っている。

信号が青になった瞬間全バイクが我先にとスタートダッシュしていて
マリオカートみたいだなーと笑ってしまうくらいだった。

それらが僕にとっては魅力的に感じられ、窓の外を眺めてるうちにあっという間に目的地についた。

「ウォーキングストリート」

ざっと見た感じまだ人の量は多くて、アジア人、白人、黒人と様々な国の人がいる。歩行者天国のような感じになっていて、屋台はバーなどが絶え間なく並んでいる。これが海外か!!!めちゃくちゃ興奮しました。自分の知らない世界、景色を目の当たりにするという事に自分がここまで興奮できることを初めて知りました。結局自分のことすら知らない事が多いのです。
特に若いとそうでは無いでしょうか。

道の端っこの薄暗いところを歩いていると
「オニいさん」
カタコトの日本語で話しかけられ、振り返るとめちゃくちゃ綺麗な女の人が2人いた。

「bhfbckmwdmxuouwl?????」
急にわけわからない英語に変わった!
無論僕は、英語がからっきしなので全く理解できないが、とにかく綺麗なので聞く耳は持てた。そして俺は海外でモテるタイプの容姿なのかと一瞬で天狗になった。

歩きながら、少し会話を試みてたら屋台の明るいライトの近くに来たその時、
少しこの女喉仏出てないか?と思った。
あとガタイがちょっと、しっかりしてるし、よく見たらそんな可愛くない。

僕は心根は腐っているので、その瞬間聞く耳が持てなくなった。

よし退散しよう!

踵を返して、立ち去ろうとすると、腕を掴まれた。
「イテッ」
ようやく気づいた。
これはメンズのフィジカルだ。
犯されるんだ俺は。

タイはレディボーイといって、日本でいうところのオカマ文化がかなり発達してると、何かで見た記憶がある。
防衛本能が働いて振り解いてダッシュした。
中学でクラス対抗リレーに出場したくらいにそこそこ足が早い僕なので楽に逃げれると踏んでいたのだが、俺を追いかけてくる足が早い。
「なんで速いんだよ!」

300mくらいは走ったが後ろから、力強い足音が聞こえる。
戦慄競走。一回振り返るとオカマちゃんは1人減っていた。

・・・・

人に本気で追いかけられるなんていつぶりだろうか?鬼ごっことか、小さい頃にしかそんな経験はないんじゃないだろうか。よくよく考えると小学3年生の時、先生に本気で追いかけられた事がある。勉強が大嫌いで、宿題をやらない僕はいつも先生に怒られていたのだがいつもの通り宿題をやらず怒られるのが嫌になり、朝母親に行ってきますと言い、家を出た後、家の駐車場の裏でこっそり持ち出したDSでポケモンをして登校しなかった事がある。その後、学校から連絡があった母親が心配して街を駆けずり回った後、たまたま駐車場の裏でポケモンをしている僕を見つけたのだ。学校に連れて行かれる!!と思い、僕は猛ダッシュで立ち去り、街へ消えて行き大騒ぎ。学校の職員数人が僕を捜索する事態にまでなった。
よしよしよし。レックウザ捕まえよう。当たり前のように公園でポケモン再開したのだが、スヌーピーの絵が上手い「スヌーピー先生」というあだ名で呼ばれていた男性の先生に見つかってしまい、頑張って走って逃げたがスヌーピーに捕獲されてしまい、男泣きした記憶がある。スヌーピーの足音怖かったなぁ。

・・・・

かなり距離はあるが、まだ追いかけてきてる。

目線の先にバスみたいな乗り物があったので、即座に乗り込み「GOGOGOGO!」「GO ストレート!!」と叫んだ。

すぐに発進して町の景色が流れていく。
1人旅をすると、話し相手がいないから、目の前の景色をよく見て噛み締めたりふと考え事をしたり昔のことを思い出したりする。
そういうのが1人旅の一番の良さだと思う。
東京で生活してると、毎日何かに必死にならないと東京に咎められる空気があって余裕が全くなくなってしまう事がある。
今、僕は何に必死ならなくてもいい。自分の事を思い出したり、考えたりする時間って意外となかったりするなぁ、と海外に来て初めて感じた。

あぁ、お母さん心配させてごめんね。

今では飛行機のお金も払ってくれて。

スヌーピー先生もごめんなさい。

「あぁ、レックウザまだ捕まえてない。。。」

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