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業務をガントチャートで表現したら作業は早くなったけどメンバーが考えなくなった。

私は事業計画を担当していますので、毎年、年度計画を作成しています。
毎年、と書くと、私が数年間、毎年担当しているように聞こえてしまいますが、実際は私は昨年の秋に異動してきましたので、今回、初めての年度計画作成になります。

そして、私の所属するチームは20名ほど所属していますが、人の入れ替わりが多く、私を含め、ここ2年で7名ほど入れ替わりがあります。つまり、チームとして経験が少ないメンバーが多いということです。

一方で、計画作成に当たっては、必要な作業というのは毎年そこまで大きく変わるものではありません。
ですから、私は、年度計画作成のスケジュールが明確に決まっていると思っていました。しかし、私が「スケジュール案が欲しい」と言っても、「いや、まとまったものは特にありません」という反応が返ってきました。
では、どうやってタスク管理しているのか、と聞くと、「私の担当業務をいつやるべきかは自分でわかっています」という反応。

つまり、「個々人は自分のスケジュールを把握しているが、チームではスケジュール管理されていない」ということだったのです。

計画を作成するときにはデータの受け渡しがどうしても発生します。あるデータを作成する人がいて、それを受け取って、分析などの加工をする人がいます。
よって、必ず前後でつながる人がいるわけですが、お互い、自分のやることしかわかっていない状況ですので、他社との関りはデータを授受する”点”でしか認識できていません

そうすると、自分にデータをくれる人が、どのように、どのくらいの時間をかけてその作業をしたかわかりませんし、その人がどのようにベースデータを収集したかもわかりません。
同じように、データを作った人も、自分が渡した相手がそのあと何をするのかわかりませんし、その先に何が起こるのかもわかりません
そして、自分が作業しているときに、他のメンバーが何をしているかもわかりません

私は、この状況を見て、まずいと思い、「全員の作業を集約して見やすい一覧を作る」ことを提案しました。
具体的にはガントチャートの作成を提案しました。

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こういったものです。
横軸にカレンダーがあり、作業が帯で示されます。帯で示されることで作業開始日と終了日が明確になりますし、その前後につながっている作業も見えます
そして、全体が一覧になりますので、自分と同時期に作業している人の内容もわかります

いざ作ってみると3か月の立案機関で100を超えるタスクがありました。
今年、これを見ながら業務をしてみました。そこで見えてきたメリットデメリットが以下の通りです。

メリット①:重複作業が明確になる

今までは自分の作業だけ意識していたので、他のメンバーのことは知りませんでした。しかし、一覧にしてみると、同じ情報を同じように加工している人がいることが明確になりました。

そこで、作業を集約することができ、無駄な作業を削減できました。

メリット②:待ちが無くなってスピードが速くなる

今までは自分の作業のスケジュールだけ意識しているので、自分が作業を始めるタイミングは常に自分で決めていました。例えば「2月1週目に~~のデータの分析を実施」といった感じです。
しかし、その元データがいつどのように作られているかは知らないので、実は元データは1月の3週目には完成していても気づけません。結果的には1週間の待ちが発生していた、ということになります。
今回、全員のスケジュールを集めてみると、そういったギャップが明確になり、スケジュールを前倒しした作業ができるようになりました。

メリット③:チームの進捗管理がしやすい

今まではメンバー各自が何をやっているかが見えていないので、ミーティングをしても何をフォローアップしていいかわからなかったようです。
「皆さん順調ですか?」と投げかけて終わっていたようです。
しかし、ガントチャートによって全体が見えるし、だれが何をしているか、のステータスが明確になるので、具体的な投げかけができます。
止まっている場合、誰が何で止めたのかわかるようになるので、チーム内で知見がある人が具体的なアドバイスができたり、チームマネジメントが上手くいくようになりました。

ガントチャートを作ってよかったと思っています。メンバーも今まで知らなかったことが分かるようになりましたし、重複がなくなるなどの実益もありました。

しかし、その一方でデメリットもあることが分かりました

デメリット①:業務を「作業」としてしか見なくなる

ガントチャート上には作業が示されます。そして、年度計画作成という業務においてのデータのやり取りが示されるので、アウトプットは目に見える「データ」です。
よって、「決められたデータを作る」という作業としてしか業務を見なくなってしまいました

デメリット②:「作業すること」を是とし、必要性を疑わなくなる

一度ガントチャートでスケジュールが嚙み合ってしまうと、それを是として、自分の仕事はそのスケジュールを遂行することだと思ってしまいます。
自分の直後に位置している作業を見ると自分の作業は必要そうに見えても、1週間後、1か月後に「何が議論され、意思決定されるか」まで俯瞰して見ると、必ずしもその作業が必要なものではないこともあります。
曖昧なことの分析に時間をかけてもそのデータは使われなかったり、意思決定要素に入っていなかったりすることに気づけるかもしれません。
しかし、結果としては、ガントチャートでは前後左右しか見なくなってしまっていました

以上のデメリットですが、お判りかもしれませんが、「ガントチャートによって発生したデメリット」ではありません。ガントチャートが無くても当然存在していたことです。

しかし、それがガントチャートによって「固まってしまった」ということです。
きっと、来年はこのガントチャートのカレンダーを入れ替えて、そのまま使うでしょう。そのほうが便利ですから。
スケジュールが整理されていなかったので、それをガントチャートで整理して見えるようにしたことに意味があることは間違いありません。

しかし、「それを変えてはいけない」わけではないし、「それを変えないようにする」ことが正義でもありません
このように目に見えるようにすると、あたかもそれが正であるかのように思ってしまい、疑うことをしなくなります

決してガントチャートが悪いわけではありません。
本当はガントチャートによって「俯瞰して見て業務の必要性を問う」という新しい付加価値も期待していました。しかし、実際は、現状の業務に留まる、という逆の状態になってしまったのです。
ガントチャートを導入するだけでなく、私のようなマネージャーの立場の人間が、しっかりこのガントチャートを使って全体を俯瞰し、今の業務を「たたき台」として、その業務の必要性を議論することをリードしなければいけなかったのです。

今回はガントチャートの活用でしたが、ITツールなどを活用した業務の効率化は、それによってその業務が正しいと思い込み、本当に必要なのか、もっと改善できないのか、等を考えなくなるリスクがあることが分かりました。

問題は効率化の後です。我々マネージャーは、そこから如何にチームに考えさせる仕掛けができるか、が勝負だと感じた出来事でした。

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