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共感力のある職場を作りたい#4〜「昔は良かった」前提で考えるマネージャー

このシリーズで、私の受け持っている課の「共感力」を上げるべく会話を始めたことをご紹介しています。

前回記事です。


毎週1時間ほど時間をとって進めているのですが、そんな折、上司から呼ばれ、ある資料を見せられました。

「うちのチームでもこういうのを作れないかな?」

といって見せられた資料は「計画業務振り返り」というタイトルで、作成者は「職制メンバー」とありました。

私の所属する組織には大きく二つの業務があります。マクロで事業全体を見るチーム、ミクロな個別ビジネスを見るチームです。私は全社に所属しているのですが、この資料は後者のチームで作られたものです。

職制メンバーとは課長以上のマネージャークラスのことを言っています。つまり、マネージャーが業務の振り返りをした資料です。

コンテンツは、大きく3つに分かれていました。
・今起こっていること
・振り返り、分析
・今後の打ち手
です。

こういったことをしたきっかけを聞いてみると、他部署(我々は製造業なので技術開発部門や工場)から、業務に関して様々な苦情を受けており、それに回答する必要があったからだそうです。

苦情というのは、「数字の精度が悪い」とか、「言っていることが変わる」とか、「納期を守らない」とか、「責任感がない」といったもの。

これらの苦情について、マネージャークラスが要因を分析して、今後の打ち手を宣言しているのです。

そして、私の上司は、それを我々のチームでも作れないか?と言っているわけです。

気乗りしないながらも、やるかやらないか返事しなければいけないので、とりあえずその資料を見てみました。
そうしたら、「これではいけない」と思える資料だったのです。

全て「昔はできていた」前提で分析している

この資料は先ほど述べたとおり、他部署からの苦情でスタートしています。そして、そのあとに分析が来るのですが、それが全て

「過去はこうだったが、今はこうなっている」

という書かれ方になっているのです。

そして、そのあとの打ち手は、「過去のようにするには」という論調です。

この分析に何の説得力があるのでしょうか?
今と昔は違います。私も20年近く働いていますが、私のキャリアの範囲で考えても、今と昔は違います。
仕事の量も、見なければいけない範囲も、市場環境も、情報量も全く違います。
でも、昔出来ていた、という「思い出だけ」切り取っています

もちろん、昔出来ていて、今できていないことで、参考になることはあるはずです。しかし、今回はそんな取捨選択をされたわけではなく、とにかく、「昔=自分たちが若いときにはできていた」ということだけです。

それが今の時代に有効か、の分析はありません。とにかく、昔はできていた。今のマネージャークラスが若いときには。

今の若手を「昔のようにできていない」と思って見てしまう

そして、何よりこの発想が危険なのは、今、苦戦している若手に対し、「昔のようにできていない=自分の若いころに比べて劣っている」と見てしまうことです。

そんな比較は何の意味もないのに。

このような発想をしていると、過去やっていたことが正解として扱われてしまうので、指示も決めつけになります

「俺の言う通りにしろ!」という指示になります。

しかし、若手にしてみれば、「なぜそれでいいのか?」という疑問が沸くわけですが、「昔、自分は上手くいったのだから同じようにやればよい」という理由しか持ち合わせていないので、若手の共感を得るのは不可能です。

なぜなら、この発想には「いま、そこにいる関係者」のことを考えていないからです。若手の担当者は、「いま、そこにいる関係者」と仕事をしているわけで、その人たちとどうやって成果を出すか考えようとしているのに、頭ごなしに決めつけの指示が落ちてくる。これでは失望します。

いま、何をすべきか考え続けること

このような発想ですので、先ほどの資料も、結論は決められています。
「過去のようにやること、やるように指導すること」だけです。

私はこんな資料は作りたくありませんから、上司には以下のように伝えました。

「課題の分析と打ち手を整理するのはやります。でも、あるべき姿はマネージャーだけでなく、皆で考えることにさせてください」

いま仕事をしている全員でどうありたいか、を考えること。そしてそれを失言するために考えること。これであればやる価値はあります。

私の上司は理解してくれました。
資料の体裁は私が整えることにして、私のチームのメンバーと議論をしていくことにしました。

明日、その打ち合わせを設定しています。全員ZOOMの顔出しで話します。
どんな意見が出るか、楽しみです。


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